第66話 再会
コウノスケさんから貰ったお礼はなんと3億だった・・・
「さすがにコレは貰い過ぎです」
「イエ、これは最初にお約束したことですし何より私自身こんなにお金があっても困りますので・・・」
いかん、オレの方こそ目がイェンになりそうだ。この世界で一生遊んで暮らせるだけのお金を手に入れてしまったんだからな。
「あのう、これから私はどうすればいいのでしょうか・・・」
コウノスケさんが不安そうに尋ねる。実を言うと次の事も考えてはいる。だが、今のところそれを実行するには準備が足りないのだ。しかしコウノスケさんは今までオレのアドバイスに素直に従ってくれ尚且つ、予想以上の成果を出してくれている。これを無視するわけにはいくまいな。
「コウノスケさん、今まで通りにやってください。実は次の事は考えています。ですが、まだまだお金が足りないのですよ。その為にも、もっともっと頑張ってくださいね」
「わかりました。シュウさんがそう言ってくれてホッとしました。もっともっと頑張りますね」
オレがそう言うと、コウノスケさんは安心しきった顔をする。オレの事を完全に信頼してくれているようだ。こうなると、次の事も早く行動に移さないとな。だが、そのために何をすればいいのか実は全然分かってないのだ。
『こんにちはシュウさん、今お話しの方よろしいでしょうか?』
『え?トキさんですか?お久しぶりです。少しなら大丈夫ですよ』
なんとトキさんから念話が来た。一体何の用事だろうか?
『実は少しお話したい事がありまして、誠に申し訳ないのですが私の店までご足労頂きたいのですよ』
『あ、そういうことなら今からでも行きましょうか?丁度、暇ですし』
トキさんとは一度しか会っていないが、非常に魅力的な人物だったな。どうせ暇だし今から行ってみるか。
『ありがとうございます。それでは、今からそちらまで迎えの者を寄越しますのでよろしくお願いします』
『え?いいですよ、わざわざ。場所も分かりますから』
『いえいえ、ご足労頂くのに迎えも寄越さないのでは商人として私の信用にも関わりますし、何よりもう、そちらまで迎えが伺っておりますのでどうか御気になさらずに』
『はあ・・・』
「あの、シュウ様はこちらでしょうか?」
「はあ?」
すると松田屋の店員さんがやってくる。
「トキ様の使者とおっしゃる方がお見えですけど」
え?もう?
オレは、慌ててコウノスケさんに別れの挨拶を済ませ外に出た。すると往来に立派な駕籠が止まっていた。黒光りするような総漆塗りで、見ただけで高級なものだということが分かる。駕籠の前後には屈強な男が2人片膝をついて控えている。そして脇には「THE セバスチャン」といった身なりの初老の男の人が直立不動で佇んでいた。
オレと目が合うと、深々とお辞儀をした後「シュウ様でございますか?私、越後屋に仕えておりますセバスと申します」と挨拶をする。
身のこなし、言葉遣い、口調、雰囲気、どれ一つをとってもこの目の前の老人が一流の者だということが分かる。まあ、今までの生活でこんな人に接するのは初めての経験なので偉そうなことは言えないが…
「は、はい」
緊張しながら返事をすると恭しく駕籠の引き戸を開き中へと誘われる。ところがオレが入ろうとすると「ぴょんっ」とコタロウ、コジロウが先に中へ入っていく。
「こ、こらお前たち、行儀よくしないとダメだぞ」
慌てるオレにセバスさんは全く動じることなく微笑む。
「大丈夫ですよ。コタロウ様とコジロウ様も大事なお客様ですから、もちろんガル様、ギル様、ゴル様も同様です」
え?なぜみんなの名前を?
ぎょっとして振り返る。セバスさんは、慈愛に満ちた目でオレに微笑んでいる。その雰囲気はどことなくトキさんと似通っているところがある。
うん。この人は信用していいだろう。
理由は分からないが、オレはあまり深く考えないようにした。まあ、いざとなったらオレには最強の仲間たちがいるから武力では負けない自信もあったからなんだけど。
コタロウ、コジロウは遠慮なく入っていき駕籠の中をくんくんと嗅いで回る。続いてガル達も入っていき辺りを物珍しげに物色する。そんなみんなの態度に恐縮しながらオレも入ってみる。
「うわあ・・・」
中は駕籠の中とは思えない程広い。ちょっとした茶室のようだ。中央には、綺麗な細工を施された黒檀のテーブルが置いてありこれまた高そうな座布団が4つ並べてある。
セバスさんに勧められるまま、座布団の一つに腰を下ろすとフカフカ過ぎて体が沈む。
そんなオレの様子を気に留める様子も見せず慣れた所作でお茶を淹れてくれた。
以前、トキさんから淹れて貰ったお茶と同じくとても美味い。あっと言う間に飲み干してしまった。
「お代わりはいかがですか?」
「あ、お願いします」
すると今度はお茶と一緒になにやらお菓子を勧められる。とても高級そうなお菓子で何やら高貴な香りが漂ってくる。見た目は小さなケーキの様だが、外側はカリっとしていて噛むとジュワっとブランデーのような洋酒の香りがする大人のお菓子だ。
そう言えば昔、行列の出来るケーキ屋さんで売っていたフランスのお菓子に似たようなものがあったな。
それにしてもトキさんは一体どうやってこんな品物を手に入れられるのだろう?オレのいた現世では可能かもしれないが、この世界でこんなお菓子を入手できるのはほんの一握りの人ではないのか?
そんなオレの思惑をみんなが忖度してくれるハズもなく、コタロウ、コジロウ、ガル、ギル、ゴルは夢中でお菓子にしゃぶりついている。
「気は遣わないでくださいね」
完全に庶民な行動を取るオレ達を相手に全く気を遣わせることなく、世話を焼いてくれるセバスさんの気配りに感心しながらも心地よい時間が過ぎていく。
あれ?そう言えばこの駕籠って人力で動いているんだよね?さっきから全く動いている気配感じないんだけど・・・
「お待たせいたしました、シュウ様。越後屋へ到着しました」
え?もう?
駕籠を降りると見覚えのある立派な店構えの入り口にトキさんが待っていた。
「お久しぶりでございます。シュウ様」




