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第65話 宴のあと

目が覚めると辺りはすっかり明るくなっていた。カクさん達は帰ってしまったのかすでにいない。ムリな姿勢で寝ていたので体中が痛かったオレは自分にヒールウォーターを掛ける。



「あ、アニキー目が覚めたんですね?」



ばっちり体力を回復させるとタクヤ達がやってきた。そう言えばこいつら昨日は見かけなかったがどこにいたんだろう?



「いやー昨日は、オレ達あっという間に寝ちゃってアニキと話せなかったんで」

「そうそう」

「オレ達、全然酒飲めないのに調子に乗っちゃって」



なんと、こいつら見かけによらず下戸なのか。意外にかわいいところもあるんだな。

オレが昇格した時にも喜んでくれたし昨日からこいつらの印象が随分と変わった。



「それで今からマツギュウに行きませんか?」

「え?マツギュウ?」



するとタクヤが得意気に説明を始める。



「松田屋のことを今、常連の間ではマツギュウって言うんですよ。“松田屋の牛丼”これを略してマツギュウです」



ドヤ顔のタクヤに多少イラッとしたが、久しぶりにコウノスケさんにも会いたいし一緒に行って見る事にする。



「コタロウ、コジロウ、ガル、ギル、ゴルいくぞー」


「にゃ」

「にゃあ」

『おう』

『うん』

『はい』




傍で寝ていたコタロウ達に声を掛けるとすぐに起きてきた。そのまま出ていくのに抵抗があったのでアヤ姉の姿を探したが見当たらない。オレは少々後ろ髪を引かれながらギルドを後にした。







久しぶりにEDOの街を歩いてみる。するとすぐに「松田屋」ののぼりが目に付いた。良く見ると至る所にのぼりが立っている。コウノスケさんまたまた店舗増やしているようだな。よしよし、経営は順調なようだ。



松田屋本店に着くと、さすがに大行列とはいかなかったがソコソコの人が並んでいる。ところが店員の誘導が完璧なためにそんなに待たずに店内に入ることが出来た。



「いらっしゃいませ。本日はいかがいたしましょうか?」

「「「オレ達は特盛と卵に味噌汁で」」」



それぞれが、ヤス「オレはしるだくで」ヒデ「オレはなぎだく」、タクヤが最後に「オレはしるだくとなぎだく両方で」


するとタクヤがまたまた得意気に説明を始めた。


「シュウさん、しるだくは牛丼のつゆを沢山、なぎだくはクロヤナギを沢山の略なんですよ。今、松田屋では常連向けの裏メニューでこんなサービスをやってくれるんです。つゆだくは5回以上、なぎだくは10回以上、そして両方は20回以上来店しなくちゃ注文を受け付けてくれないんですが、シュウさんは常連中の常連のオレのツレなんで特別に頼んであげますよ」



ドヤ顔のタクヤにイラッとするが、オレがコウノスケさんに授けた戦略がばっちり浸透しているようなので良しとしよう。


つゆだくやねぎだくは、現世の牛丼屋でも普通にやっているサービスだ。常連向けではなく、全てのお客に提供される。もちろん、この「松田屋」でもその点は同じだ。

そもそも誰が何回来店したかなんていちいち覚えておけるわけないのである。


だが、オレは「常連には特別なサービスがある」という噂を流すようにアドバイスしたのだ。人とは特別感というものが大好きだ。しかも見栄っ張りのEDOっ子ならなおの事だろう。



それは見事にハマったようでこれにより「松田屋」のリピート率が大幅に上がったのは間違いない。



オレは自分の戦略が見事にハマったことに満足すると店員に注文する。



「並3つと特盛3つに卵と味噌汁を6つづつ下さい」




タクヤ達3人がこっちを見て「え?」という顔をする。まあ、そう驚くなよ。1週回って結局ノーマルが一番うまいってのがオレの結論なんだからさ。



コタロウとコジロウは、道中何回も食べた味だがお店で食べるとまた違う。というか本当に味が違う。また改良を施したようで味が良くなっているな。ダシの香りがよく効いていてあっさりと食べられるが後を引く。


ガル、ギル、ゴルは初めての牛丼だったが、余程美味しかったのか丼に顔を突っ込んで夢中で掻き込んでいる。こいつら精霊のくせに下界の食べ物全然イケるんだな・・・






会計を済ませた後、タクヤ達と別れてコウノスケさんを訪ねる。店の奥に入るとコウノスケさんが現れた。





「お久しぶりです」

「シュウさん、お陰様で何もかも順調ですよ」



あれ?コウノスケさん随分恰幅が良くなったなあ。なんか貫禄が出てきたようだ。身なりも良くなってなんか高そうな着物を着ている。



「店舗は少しづつ増やして今は全部で57店舗です。今はEDO以外にも出店しようかという計画がありまして」



なるほど、この世界のアイテムボックスは時間経過もなく容量にも制限がないから流通にはそれほどコストがかからないもんな。あとは、増産の見込みと人員の確保さえ出来れば。




「それと米の売買なのですが…」




とここで、コウノスケさんが口を閉ざす。うん?何か問題でもあったのだろうか。もしかして米を買い占めたのはいいが、品質の悪いものを掴まされて全然売れなくて不良在庫になってしまったとか。




「私が買い付けた米が予想以上の高値でどんどん売れるものですから、お金がどんどん増えていきまして」



少し困ったようにコウノスケさんは言うが、儲かっているならいいだろう?

え?ちなみにそれはいくらくらい儲かったの?是非、教えて欲しいけど。


あっといかんいかん、お金ってのは人を変えるからな。前世でも横領して捕まった同僚を何人も見てきたが、みんな悲惨な最期を迎えていた。



コウノスケさんは大丈夫だろうか?目がイェンになったりしてないか?



「コウノスケさん?」

「はい」



コウノスケさんの目をじっと見つめる。良かった、出会った時と同じ澄んだ目をしている。大丈夫そうだ。




「それでシュウさんにお礼をお渡ししたいのですが、何しろ金額が金額ですし。冒険者カードに直接入金したいのですが・・・」

「ああ、いいですよ」




オレが冒険者カードを渡すとコウノスケさんはそれを端末にかざす。「シャリーン」と音がした後、オレにカードを返す。




「ありがとうございます。今回は、3億イェン入金させて頂きました」

「はあ…え?3億??」



またまたオレはとんでもない金額を手に入れてしまったのである。


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