第55話 再び北東エリア冒険者ギルドへ
ご飯を食べて外に出る。まずは、北東エリアの冒険者ギルドに寄って「最後の洞窟」攻略の報告をしないとな。
9尾の銀狐を倒した後に出現した鳥居をくぐる。
(ブウン)
転移先は洞窟の入り口だった。良かった、来た道をまた延々と戻らなくてもいいのか。
オレ達は、散歩がてら歩いて北東の冒険者ギルドまで戻ることにした。コジロウはこちらの世界に来て間もないし慣れるためにもそれがいいだろう。
初めて見るものが珍しいのか、キョロキョロしながら道を歩くコジロウにコタロウが一つ一つ教えてあげている。
『あれは、森ネズミだニャ。焼いて食べるとあっさりしていて美味しいニャ』
『あれは、森グリズリーだニャ。初めて戦った時は、まあまあ苦戦したニャ』
あれ?グリズリーがいる。聖獣verのコタロウでは全く相手にならないが、今は普通のネコverだからな。襲われたら面倒だしオレが退治しとくか?
バシュッ
すると、コジロウの身体から半月状の真空の刃が飛び出し森グリズリーを一刀両断にする。
「ボン」
真っ二つになったグリズリーは直後に宝箱に変身した。
「え?今のコジロウがやったの?」
『にゃあ、あいつご主人様を狙ってたから退治したニャア』
コジロウは事も無げにそう言い放つ。そうか、見た目が変わらないから忘れていたがコジロウも覚醒しているんだよな。今の様子からするとかなりの戦闘力を持っているみたいだ。コタロウだけでも最強なのに、もしコジロウが同じくらい強ければこの世界で一生楽して生きていけるんじゃないだろうか。
そんな浮かれた考えが湧いてくるが、リュウガの言い放った言葉も忘れたわけではない。あいつのセリフは、更なる強敵との戦闘を示唆していた。
北東エリアの冒険者ギルドに着いた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。オレは、木の扉を開けて中に入る。
「こんばんはー」
すると奥で酒盛りをしていたおっちゃん達がこちらに気付く。あ、ダイゴロウさんだ。こちらに向かって大きく手を振っている。オレはコタロウ、コジロウを伴って奥へと進む。
「おおー。無事に帰って来たな」
満面の笑みのダイゴロウさんは、オレの肩をバンバンと叩いて手荒な歓迎をする。今日も大分酔っぱらっているみたいだな。
「お?おおお?何だ?」
するとダイゴロウさんがスウッと天井近くまで浮き上がる。え?え?
『ご主人様、あいつどうやって痛みつけようかニャア』
コジロウが物騒なことを言っているじゃないか。顔はいつもの可愛い顔じゃなくてなんか悪い顔になってるし。というかコジロウがダイゴロウさんを宙に浮かせているのか?
『コジロウだめだよ。あの人はオレ達の味方だから、攻撃しちゃダメ』
『にゃ?敵じゃないのかニャア?』
ドスーーーン
途端にダイゴロウさんが落ちてきた。落ちた時に打ったのか「イテテテ」と腰をさすっている。
「スミマセン、ダイゴロウさん。コジロウのヤツがダイゴロウさんを敵と間違えて魔法使っちゃって」
オレはヒールウォーターを掛けて謝る。
「おう、そうか。コジロウは飼い主想いなんだな」
ダイゴロウさんは全く気にしない。動物好きだからな。
「あ、頂いた毛皮とっても役に立ちました。めちゃめちゃ暖かいですねアレ」
「そうか、そうか。あれは我が家に伝わるマジックアイテムなんだよ。シュウの役に立ったなら何よりだ」
え?そんな家宝みたいなヤツくれたの?
「あのー。そんなに大事なものならお返しします」
「ダメだ。アレはもうお前のものだ、返して貰うくらいなら最初からやってないぞ」
そうか。そりゃ、そうかもしれないな。
「まあ、そんな事よりも料理を食えよ」
今日もテーブル上には鍋がある。あれ?これは見たことあるな、この細長いものは…
「キリ田んぼ鍋だ。この辺はおいしい米が取れるからな、その米で作ったキリ田んぼは最高だぞ」
キリ田んぼを手渡されてオレは一口食べてみる。
「う、うめえ。ダイゴロウさんコレ美味いですねえ」
キリ田んぼなんてただのローカルな郷土料理と侮っていたが、本場の味は想像を超えた。炭で焼いているから表面はカリっとしていてとっても香ばしい匂いがする。
元々の米がすごく美味いのだろうが、中はモチモチと弾力がある歯ごたえに加えて米が甘い。噛みしめる度にジュワーっと米の旨みが口の中に広がる。
汁も物凄くうまい。味噌をベースにしたスープには弾力のある地鶏っぽい鶏肉が入ってるが、すごく味のある鶏で味噌と相まって深い味わいを生み出している。
キリ田んぼにその汁を浸して食べると最高に合う。本当にいくらでも食べられそうだ。
コタロウとコジロウもよほど美味しいのだろう。夢中になって食べている。
「酒もあるぞ」
天狗舞舞を振る舞われる。オレは勧められるまま飲み干す。色々とあったが、コジロウとも無事会えたしオレは浮かれていた。すぐに酔っぱらってダイゴロウさんとコジロウ救出話で盛り上がる。自分も同じ経験をしているだけに、共感できるのだろう。
「いやー。コジロウを召喚する穴がたった5秒しか開かないって聞いた時は、ちょっと諦めましたよ」
「そうかー。たった5秒しか開けないなんて意外と「転移の魔導具」もケチな道具なんだな」
「まあ、オレの魔力が少ないからしょうがないんですけどね」
「謙遜するなよ。前人未到の「最後の洞窟」を踏破した勇者サマがよ」
あ、そうかみんなオレの力で「最後の洞窟」を攻略したと思ってるんだよな。どうしよう、これは突っ込まれたこと聞かれたら面倒くさいぞ。
「おう、お帰り勇者様。まさか帰ってくるとは思わなかったぞ」
するときれいな黒髪の美少女がやってくる。北東エリアの冒険者ギルドのマスター、リサだ。
リサはそばまで近よって来るとジッとオレの目を見つめる。こんな美少女にマジマジと見つめられることなんて生まれてこの方ない。ドキドキして見つめ返す。
「おめえ、どうやって「最後の洞窟」攻略したんだ?教えてくれ」
「え?」
想定外の展開にオレは何も言えない。頭の中は真っ白で何も思い浮かばない。
うわー、どうすればいいんだー?
(ピーーーン)
電子音と同時にウンドウディスプレイが開く。
『メンテナンスが終了しました』
その時、最高のタイミングでメンテナンス終了のお知らせが来た。




