第54話 コジロウの覚醒
コジロウは疲れて眠っている。横でコタロウも眠っている。2匹でぴったりと体を寄せ合っている。ようやく会えたのだ、片時も離れたくないのであろう。
今は、アイテムボックスから取り出したログハウスの中だ。
オレはそんな2匹を撫でてやる。こうしていると、現世での生活を思い出すなあ。
あっと感傷に浸っている場合ではなかったな。
今日起こった出来事でまた謎が増えた。それをアイに聞かなくては。
「銀狐が言っていた「権限」のレベルによって開示される情報が制限されているって事でいいんだよな?」
『そうとって頂いて問題ありません』
「じゃあ、その「権限」ってどうやって貰えるんだ?「神託」を賜る条件ってのがあるのか?」
『それはお答えできません』
やはり、それは答えられない内容なんだな。じゃあ、質問を変えるか
「オレ達のいた世界とこの世界は、別の宇宙なのか?」
『はい、いわゆる平行宇宙です』
そうか、今日は突然の事で考えが及ばなかったが、オレは気になっていたことを聞いてみる。とても重要な話だ。
「もし今後「転移の魔導具」を手に入れたら、オレ達は元いた世界に帰れるのか?」
『できません』
え?なぜだ?向こうからこちらには行けるのに、なぜ向こうに行けないんだ??
『こちらの宇宙は「閉じて」いるからです。シュウさん達のいた宇宙は、こちらの宇宙に比べてかなり新しい宇宙ですので「開いて」います。ところが、こちらの宇宙は成熟期が終わっているためエネルギーの流出を避けるために「閉じて」います』
アイの話によれば、「開いて」いる同士の宇宙は行き来は可能、「開いて」いる方から「閉じて」いる方へは、行く事はできるが帰ることは出来ない。そして「閉じて」いる方からは行くことも出来ない。
オレの元いた宇宙は、平行宇宙の中でもかなり新しくできた宇宙でまだまだエネルギーに満ち溢れているそうだ。そのため他の宇宙から召喚の標的とされ易い。
その中でも特に地球の「日本」と言うところから召喚された人物は、非常に高い能力を持ってこちらに召喚されるので大人気らしい。
「どうりで最近、猫も杓子も異世界に行くはずだ」
文字通りネコも召喚されてるもんなあ・・・
そうか、まあ元の世界にそれほど未練があるわけではなかったが、帰れないと分かったら少なからずショックだなあ。田舎の両親は妹夫婦が面倒みるからいいか。仕事もオレ一人がいなくても回るだろうし。あ、オレ向こうの世界帰れなくても困る人いないんじゃね?
「にゃあ」
すると目を覚ましたコジロウがオレに向かって鳴いた。コタロウはまだ横で丸くなって寝ている。
「あ、コジロウ目が覚めたのか?」
コジロウはオレの方に寄ってきて頭をスリスリする。
「ははは、久しぶりだなコジロウ。あ、ネコネコスティック食べるか?」
オレはアイテムボックスからネコネコスティックを取り出すと、コジロウに渡す。
コジロウはコタロウと違ってゆっくりと味わうようにネコネコスティックを舐める。
「美味しいか?お前、オレがいなかったからネコネコスティック食べてなかったんじゃないか?」
「うにゃ」
そんなやりとりを続けているとコジロウがネコネコスティックを食べ終える。
するとコタロウの時と同様に、辺りが強烈な光に包まれた。
ピカーーーーーーーーーーーーーーー
暫くして、スウーーーーーーッと光が消える。そして光の中からコジロウが姿を現す。
あれ?現れたコジロウは普通のネコと同じサイズで変わっていないぞ。
コタロウの時は、巨大なトラになっててびっくりしたのだが…
本当に覚醒したのか?
「コジロウ?」
『にゃあ、ご主人様、久しぶりのネコネコスティックとっても美味しかったニャア』
念話は使えるようだな。
よし、では他にはどんな能力があるか鑑定してみるか。
「よし、コジロウのステータスを見せてくれ」
「ニャア」
「鑑定結果」
??????:???????
??????:???????
??????:???????
??????:???????
うん?なんだコレ?鑑定結果がバグっているのか?
すると急にウインドディスプレイが白黒反転しだした。
(ビービービー)
警告音の様な音が響き渡る。そして直後に太文字でメッセージが表示される。
『システムがオーバーフローを起こしました。直ちにロールアウトを開始します』
え?え?なんだこれ?今までこんな事なかったぞ。どういうことだ?
オレはすぐにアイを呼び出す。
『ただいま、緊急メンテナンス中です』
ところがアイを呼び出すことが出来ない。どうしたんだ?なんか不具合が起きたのか?
オレは現世で、いっつも緊急メンテナンスが入る某オンラインゲームの事を思い出した。
まあ、そういう事もたまにはあるのかもな。
コジロウとも意思の疎通出来るし、今のところ戦闘の予定もないからメンテナンスが終了するまで待てばいいか。
『にゃあ、ご主人サマお腹すいたニャ』
コタロウも起きてきた。
じゃあ、ちょっと遅いけど昼ごはんにするか。オレはアイテムボックスから牛丼を出して2人に食べさせてやる。
『にゃあ、初めて食べたけどカリカリより美味しいニャア』
『そうだろう?これは牛丼って言うんだニャ』
コタロウとコジロウは仲良く牛丼を食べる。これからはこの光景をいつでも見れるんだな。元の世界に帰れなくてもいいか。オレにはこいつらと一緒にこの世界で生き抜いてやるぜ。




