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第53話 閉じ込められたコタロウ

大きな球状の岩石を目の前にして銀狐は余裕の表情で佇む。その表情はとても満足そうだ。



「コ、コタロウ?コタロオオオオオオオ」


叫ぶオレに銀狐が応える。



『叫んでもムダじゃ。これはただの岩石の塊じゃない、強固な結界となっているのじゃ。何人たりともこの結界から抜け出すことは叶わんぞ』



オレはコタロウが閉じ込められた岩石を見てみた。カッチカチでとてもじゃないが、破壊できそうにない。でも、助け出さなきゃ。オレはウインドカッターを放つために魔力を溜める。すると、岩石の内部から一筋の光が走った。




「あれ?今光った?」と思った次の瞬間、爆音と共に岩石に巨大な雷が落ちた。




ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン




落雷により岩石は真ん中からぱっくりと二つに割れている。そして中からコタロウが姿を現す。



「コ、コタロオオオオオオオオ!」



オレはすぐに駆け寄る。岩石の中から現れたコタロウは、雷をモロに受け体中真っ黒焦げだ。目を真ん丸にしてビックリした顔をしている。



『ああ、びっくりしたニャ。あんなに大きな音が出るとは思わなかったニャ』



雷の賜物保持者ギフトホルダーのくせに何やってんだよ?まさか自分の落とした雷でダメージ受けるなんて。まあ、卵だからしょうがないのかな。



気を取り直してヒールウォーターをかけてやるとすぐに全快した。





あ?そう言えば銀狐の方はどうなった?



結界を破られた銀狐の方を見ると信じられないといった顔で立ち尽くしていた。

だがオレと視線が合うとすぐに悟ったような笑みを浮かべる。



『参ったの。さすがは聖獣様じゃ。私の最終奥義である結界をあんなに簡単に破られてしまっては、もう勝機はない。降参じゃ』



その場に座り込んでしまった。




コタロウは、そんな銀狐に止めを刺すべく傍らに立つ。


『最後に全力で戦えて楽しかったぞ。そして自分よりも遥か上の存在も知れた。もう思い残すことはない。ひと思いにやってくれ』


『ボクも楽しかったニャ。銀狐、お前の事は忘れないニャ』


コタロウは、そう言うとツメを「ジャキーン」と伸ばし前足を振り下ろした。銀狐は真っ二つとなり、直後に宝箱が出現する。


さよなら銀狐、お前は敵だったけどいいヤツだったな。オレもお前の事は忘れないぞ。だが、今はそれどころじゃない。いよいよオレとコタロウの悲願が達成されたのだ。



おれはドキドキして宝箱の中身を確認する。中には1辺が20センチくらいの四角推状の金属の塊が入っていた。外見はピカピカしたピラミッドって感じだ。恐る恐る取り出してみる。金属の塊だけあって大きさの割にズッシリとしていてかなり重い。



『コレが「転移の魔導具」なのか?』

『はい、間違いありません』



じゃあ、早速コジロウを呼び寄せるか。あれ?これどうやって使うんだ?

アイに説明を聞かなくちゃ



『「転移の魔導具」は召喚したい相手の座標を特定すれば、自分と相手をつなぐ所謂ワームホールを創り出せるアイテムです』


なるほどコレはすごいアイテムだな。前世で言うところのどこにでも行ける…ゲフンゲフン。




「なるほどコジロウを呼び寄せる場合は、コジロウが今いる座標を特定しなくちゃいけないんだな?でもどうやったら座標が特定できるんだ?」


『大丈夫です。「魔導具」に手をかざせばシュウさんの思考を読み取り、勝手に座標を特定してくれます』


「そうか、それは便利だな」



オレは言われるままに「転移の魔導具」に手をかざす。すると「シャリーン」と音がした後、機械音声で「座標の特定ができました」とアナウンスされる。



「よしオッケーだな。次はどうすればいいんだ?」



『あとは、「魔導具」に魔力を込めてください。ワームホールを維持するのには莫大な魔力が必要なのですが、「転移の魔導具」は魔力増幅炉にもなっていますのでシュウさんのささやかな魔力を何万倍にも増幅してくれます』


っく、悪気はないんだろうけど傷つくなあ…



「それで、魔力を込めたらコジロウのいる世界とオレ達が今いる世界を繋ぐワームホールが出現するの?」



『そうですけど…シュウさん急いだ方がいいですよ。「転移の魔導具」は一度起動すると、3分以内に魔力を込めなければ機能が停止してしまいます。このタイプは一度しか使えませんので慎重に扱わないとせっかくの「魔導具」がムダになってしまいますよ』



ええええ?そういう事は早めに言ってよー。と思うが事は一刻を争う。早くしないと今まで苦労してきたことが全て灰燼に帰してしまうのだ。オレは慌ててアイに問いかけた。



「じゃあ、重要な事だけ教えて」



『はい。特定された座標にワームホールが出現します。見た目は黒い穴ですが、その中に飛び込めばこちらに転移することが出来ます』


え?コジロウが自らの意思で飛び込まないとダメなの?あの警戒心が強いコジロウがそんな事するはずないじゃんか。



『シュウさん、あと1分を切りました。そろそろ魔力を込めて下さい』



「ふんっ」



色々と言いたいことはあるが、そんな事言ってる場合じゃない。オレはありったけの魔力を「転移の魔導具」に込める。



『シュウさん達はこの世界とはまた別の平行宇宙から来ましたので、ワームホールを維持するのには、特に多くの魔力が必要になります。今送った魔力では増幅しても5秒間しか維持できません』



ええええええ?じゃあ、コジロウは目の前の怪しい穴にたった5秒で決断して飛び込まなきゃならないの?もっと魔力を込めないと



『あと20秒です』



よし!今こそオレが覚醒しなきゃならない時だ。覚醒しろオレ!!!

オレは体中から湯気が出るかと思うくらいに力を込める。が特に何も変わらない。






『あと10秒です』




やはりそんなに都合よく覚醒しないよな。オレは最後の手を使うことにした。







オレは両手を上にかざし叫んだ「異世界のみんな、オラに魔力を分けてくれ」






『・・・もういいですか?』





終わった。まさかオレの魔力が足りないばっかりにコジロウを召喚できないなんて…

ごめんよ、コジロウ。











「ぶにゃん」



その時、ネコの鳴き声がした。



「あ、コジロウ、聞いてくれよ。オレの魔力が足りないばっかりにコジロウを召喚できなかったんだよ」





うん?あれ?何かおかしい。



もう一度、コジロウの方を見る。ソコには間違いなくコジロウがいた。







「コジロおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「に゛ゃああああああああああああ」



感激のあまりオレとコタロウが叫びそれにコジロウが応えた。



「うにゃあ」


とうとうコジロウを呼び寄せることに成功しました。次話は本編をお休みしてコジロウの物語となります。

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