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第52話 9尾の銀狐

目が覚めるとすっかり傷は癒えていた。自分を俯瞰で見ていたからよく分かるが、昨日はリュウガとの戦闘で体中の骨と言う骨が折れるかまたは、ひびが入っていた。


人間は約200の骨があると聞いたことがあるが、文字通りほぼ全ての骨が折れていたのだ。普通だったら半年は安静にしなきゃならないケガだ。

それがたった一晩で治るとは魔法の力ってスゴイなーと改めて実感する。



「コタロウ行こうか?」

「にゃあ」



朝ごはんを手早く済ませオレはコタロウと最下層へと続く鳥居をくぐった。



(ブン)



転移した先は神社の境内だった。日本にあるオーソドックスなタイプで広さは運動場くらいだ。奥には社があり脇には2体のキツネの像が置いてある。


神社なんて初詣くらいしか縁がなかったが、元の世界そっくりの建造物を見るとこみ上げてくるものがあるな。柄にもなく手を合わせお辞儀をする。昔テレビで正しい参拝方法をやっていたが、覚えていなかったので適当だ。


そのまま、暫らくお参りをする。コタロウはそんなオレの様子に何か感じ取ったのか横で神妙な顔をしてお座りしている。




『2人ともよく来たの』




その時、社の襖が「スッ」と開き銀色に輝く大きな狐が姿を現した。体長はコタロウとあまり変わらないくらいであろうか?


全体的に細くてしなやかな肢体をしている。現れた場所と相まって神々しい雰囲気を醸し出している。



オレがその姿に圧倒されて何も言えずに黙っていると銀狐は続ける。




『私がこの洞窟の主じゃ。聖獣様のお相手はちと荷が勝ちすぎるが、背を向ける訳には行かないのでな。来るがよい』




うお、さすがにダンジョンのボスはなんか理知的だな。長く生きているからだろうか、誇り高き様は気品さえ漂わせているじゃないか。


そんな銀狐にオレは意を決して話しかける。




「あの、ちょっと聞きたい事があるんですけど…」


『うん?ここまで来た褒美じゃ。言ってみるがよい』




「ダンジョンタイガーって一体何者なんですか?」



オレが聞くと9尾の銀狐はあからさまに気まずそうな表情を浮かべた。



『それは言えんのう』



やはりそうか。でも折角なのでこの銀狐から何か情報を引き出したいな。

何かないだろうか?あ、そうだ。



「あの、コタロウの事聖獣って分かってるんですよね?他のボスは知らなかったみたいだけど、どうしてですか?」



すると銀狐は、途端に得意気になり饒舌に語り始める。



『なんと言っても私は、このダンジョンの主だからの。つまりこの中で一番偉いのじゃ。他のやつらと違って長く生きておるし、頭の出来も違う。なので与えられている権限も違うのじゃ』



うん?今、権限って言ったな



「その権限ってなんのことですか?」



すると銀狐は、ちょっと考え込みブツブツ独り言を始める。

『うーん。これは話したらまずいんじゃなかろうか』



グレーゾーンな話なんだな。よし、もうひと押ししてみるか



「え?銀狐さんは偉いんですよね?なら話しても全然問題ないですよ」

『そうじゃ、私は偉いんじゃ』


よしよし乗ってきたな。


「すごい権限も持っているし、この洞窟の中でも一番長生きで頭がよくて」

『うんうん。お主分かっておるの』


この人、すっげえチョロイぞ。銀狐は、オレのミエミエのお世辞に簡単に引っかかってくれた。

あんまり簡単なので良心の呵責を感じてしまうが、別にオレオレ詐欺で騙している訳じゃないからセーフということにする。



「そんな偉大な銀狐様にお願いです。後生でございますから」

『ふうむ、しょうがないの』



よし、落としたぜ。9尾の銀狐から得た情報によると、「権限」とはこの世界の神から賜る「神託」により授けられるそうだ。その権限の内容によってこの世界のことわりを知ることが出来る他、様々な能力を使役できることもある。


この「権限」を得た者は管理者クラスと呼ばれ、この管理者クラスにもそれぞれのランクがあるそうだ。



「なるほど、さすがは銀狐様、ところで銀狐様のランクは何ですか?」

『ブロンズ…』


すると、銀狐は小さな声でボソッと呟く。



そうか、銀狐でも管理者の中ではまだまだひよっこって事なのか…




でもまた少しこの世界のルールが分かったぞ。まだまだ謎は多いが、少しずつ解き明かしていくしかない。それにしてもなんか色々と話していたら情が移って銀狐を討伐するのがかわいそうになってきたな。



こいついいヤツだし、なんとかならないのだろうか?



「あの、銀狐様」

『うん?なんじゃ?』


「オレ達は「転移の魔導具」が欲しいだけなのでなんとか戦わずに譲って貰えないでしょうか」



すると銀狐は口を閉ざし何かを思案する。そして暫らくの沈黙の後、ジロリとこちらを睨み言い放つ。



『バカを申すな、この洞窟の宝物をタダでくれてやる訳なかろうが』


「でも」


『確かに、聖獣様相手では勝算は薄いかもしれんがの。だが、私に戦わないという選択肢はないのじゃ』



そう言われて俯いているオレに向かって銀狐は更に話を続ける。



『それにの、私のような妖狐にとって強敵と戦えるというのは一番の楽しみなのじゃ。もし死ぬという結論が待っていようとそれは変わらないぞ。この洞窟の主になって数百年、ずっと退屈していたからな。頼むからその楽しみを奪うでないぞ』



オレはもう何も言えなくなってしまった。すると今までずっと横で丸くなっていたコタロウがムクっと起き上がる。



『じゃあ、始めるかニャ』

『望むところじゃ』



すると超巨大な怪物が目の前の地面から現れる。砂で出来た怪物だ。ゴーレムというやつだな。

体長は30メートルくらいもあるだろうか?それが3体もいる。



ドゴオオオオオオオオオオン



ゴーレム達はコタロウに向かって容赦なく拳を振り下ろす。ところが神速のスキル持ちのコタロウからすればその動きはスローモーションに見えるのだろう。難なく避けていく。

そして避けざまに闘気斬とうきざんを放つ。


スパッ


ゴーレムは闘気斬に真っ二つにされるが、すぐに傷が修復される。やはり砂で出来ているので効き目は薄いようだ。


即座に切り替えたコタロウが今度は、暴風闘気オーラストームを放つ。リュウガとの戦闘により成長したコタロウのオーラストームは更に威力が増している。


ゴーレム3体に襲い掛かるとその体を上空に巻き上げあっという間にバラバラにしてしまった。



ところが銀狐はゴーレムがやられるのは想定済みだったようだ。特に動揺もない。

そのまま淀みなく次の攻撃に移る。



バシュッ 



先端が尖った土の塊がコタロウを襲う。まるで土でできたヤリだ。

サイズはかなり大きく2メートルくらいの長さがある。それがコタロウ目がけてすごい速さですっ飛んでいく。


ところが当然コタロウには当たらない。さっと避けるとヤリはそのまま地面に突き刺さる。



「!!!」



すると銀狐の周囲に無数のヤリが浮かび上がる。

正確な数は分からないが数100本はあるだろう。それらが一斉にコタロウに襲い掛かった。

それでもコタロウには当たらない。まだまだ余裕の表情で避け続ける。狙いを外れたヤリ達も軌道を変え更にコタロウを追い続ける。



そうして数百本の土のヤリとコタロウの追いかけっこが始まった。



ヒュン

ヒュン

ヒュン



ヤリがコタロウに狙いをつけ飛び回るが、コタロウはそれらを全て躱し続ける。

余裕の表情でとても楽しそうだ。




『にゃはははは。当たらなければどうということはないニャ』



なんて言ってる。



ところが、いつものごとくあっという間にこの遊びに飽きたコタロウはその場に稲妻を落とす。



ズガアアアアアアアアアアアアアン・・・



すると無数にあった土のヤリ全てに被弾し、消し炭になってしまった。

そのままコタロウは攻撃に転じる。オレが瞬きする間に銀狐の目の前に移動すると、そのまま前足を振り下ろす。



ドガッ



すると一瞬のうちに銀狐の目の前に大きな土の壁が出来る。なるほど、さすが土の上級魔法を使えるだけあるな。色々と魅せてくれる。




ドガガガッ



だが、コタロウはお構いなしに攻撃を続ける。土壁は堅い岩盤で出来ているようだが、今のコタロウにとっては紙のようなものだ。簡単に壊れていく。

だがこの土壁、壊しても壊しても後からいくらでも出現する。

そうしてコタロウの周りには残骸の岩石が無数に散らばっていった。




ドガ

ドガガ

ドガガガッ



いつまでたっても本体に辿りつけない。そのもどかしさから段々とコタロウが苛立ってきたようだ。





「に゛ゃああああああ」




と雄叫びを挙げる。遂にキレてしまったようだ。



すると、その瞬間周りに散らばっていた岩石が集まりあっという間にコタロウを閉じ込めてしまった。後には大きな球状の岩石が残る。




『やれやれ、うまくいったようじゃな』


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