第49話 決死の防戦
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「コ、コタロウ?」
なんとか正気を取り戻したオレは、コタロウの方に目をやる。
コタロウは、右前足がなかった。
闘気で出血を止め、3本の足でヨロヨロとかろうじて立っている状態だ。
「に、にゃあ…」
「!!!!!」
『シュウさん、今はコタロウさんの事は忘れて私の指示に従ってください。
でないと本当に2人とも死んでしまいますよ』
またまたパニックになりそうなオレにアイから檄が飛ぶ。
『分かった、どうすればいい?教えてくれ』
『はい』
アイから作戦内容が伝えられる。緊急事態なので簡潔な内容だ。
『分かった、それで成功確率はどれくらいなんだ?』
『聞かない方が身のためかと思いますが…』
『頼む』
『不確定要素が多分にあり、正確にはシミュレートしかねますが概ね30パーセント前後だと予想しています』
3割ね。高いんだか低いんだか…でもこれに賭けるしかない。
「よし」オレは覚悟を決め、リュウガに向き直る。
「よくもやってくれたな、今度はオレが相手だ」
『ふん、矮小な人間風情が何を言うかと思えば…これでも喰らえ』
リュウガは鼻で哂うと、オレに向かって無造作に
闘気の渦を放つ。
ギュウウウウウウウウウウウウウンンンン
(来た!)
オレは風魔法を全開にして身に纏う。
『シュウさん、出力を2%下げて下さい』
『分かった…これでいいか?』
『はい、大丈夫です。その状態をキープしてください』
っく。キツイな。かなり精巧な魔力のコントロールが求められる。
『次に私の指示する場所に指示する角度とタイミングで突入してください』
(ブウン)
するとリュウガの放った渦に、場所を指定する丸印と角度を指示するベクトル(⇒)が表示された。
『突入まで、あと5・4・3・2・1』
「よし、突入ううううううううう」
オレはアイの指示通り、荒れ狂う暴風の渦に決死の覚悟で突入する。
ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
渦内部は、超高密度の気流が発生していた。
ミシッミシミシミシッ
オレの風魔法程度で完全にガードできる訳もなく、その圧力で体中の骨が軋みを上げる。
「あっぐう」
ものすごく痛い。気が遠くなりそうな中、なんとか集中力を切らさずに
魔力のコントロールを続ける。
『シュウさん、脱出経路です』
アイから再度の指示が飛び、同じく渦内部に丸印と矢印が表示される。
オレはほっと溜息をついた。体中が悲鳴を上げている。
骨と言う骨が軋みもう限界一杯だった。
『脱出まであと5・4・3・2・1』
オレは、闘気の渦からなんとか抜け出した。堪らずそのままへたり込む。
体中の骨が砕けたんじゃないかと思うくらい全身に激痛が走る。
『ほう、どうやったか分からんがうまく躱したようだな』
リュウガが意外そうな顔をする。が、次の瞬間邪悪な笑みを浮かべ更に暴風渦を放つ。
『どうれ、ご褒美をあげるかな』
うっそだろ!!今度は、闘気の渦が3つもくるじゃねーか。
オレはまた風魔法を纏うが、痛みのため集中力を保つことができない。
『シュウさん、あと18パーセント出力を上げてください』
『っぐ…これでどうだ!!』
『あと7パーセント足りません』
『くっそおー。これで、これでどうだ?』
『少し足りませんが、誤差の範囲内です。これを保ってください』
物凄くツライ、少しでも気を抜くと力が抜けていくようだ。
やっとの思いで集中しオレは荒れ狂う渦に立ち向かっていく。
『次は、タイミングがかなりシビアになります。少しのズレが命取りになりますので、心してください』
3つの渦の中でも一番前のものに印が付く。うそだろ?ほぼ真横から飛び込むってのか?
『行きますよ。突入まで3・2・1』
「ぐあっ」
オレは心の準備も出来ないまま、一つ目の渦に飛び込んだ。
その途端、内部の乱気流に体中が締め付けられる。更にアイの容赦ない指示が飛ぶ。
『シュウさん、出力が弱まっています。あと3パーセント上げてください、
脱出まであと3・2・1』
オレは痛みと疲れで意識が朦朧となりながらも、コタロウの痛々しい姿を
思い浮かべ自分に活を入れなんとか行動に移す。
「くう」
脱出してほっとしたのもつかの間、次の指示が飛ぶ。
『突入まであと2・1』
オレはまたまた風魔法を展開させて渦に突っ込んでいく。もう体中ボロボロだ。
魔力もいつまで持つだろうか…
だが、そんな極限状態の中で突然、オレの中で何かがブレイクした。
嘗てないほどに精神が研ぎ澄まされ、集中力が高まっていく。
オレは満身創痍の自分の身体をまるで他人事のように客観的に判断する。痛みは麻痺してきたのかあまり感じなくなっていた。
うん?今の衝撃で左鎖骨が折れたな。よし、上級治癒魔法だ。肋骨は、3本折れて8か所ひびが入っている。肺に突き刺さったら呼吸が出来なくなる、折れたところにこちらも上級治癒魔法をかけよう。
自分に治癒魔法を掛けながらも、アイからの指示を同時にこなす。
あと2秒で脱出だ、出力は今のままでキープして角度はこれでいい。
・・・よし、脱出したな。次の渦は、すぐ突入だ。進入角度、出力、ともに問題なし。
今のオレは自分の事をまるで上空から観察しているような感覚だ。
全身くまなく手に取る様に理解でき、完璧に操ることができる。シンクロ率100パーだ。
しかもそれをまるで深い海の底にいるかのように静かな世界で実行できている。
と、最後の渦を脱出したオレの目の前にリュウガがいた。
『これで、終わりだ』
リュウガはオレに向かってその大きな前足を振り下ろす。生きることを諦めざるを得ないような、とてつもない攻撃力だ。集中した今のオレの目にはその様子がまるでスローモーションのように映るが残念なことに体がついていかない。残酷な決断を下すしかない。
(ガード?ムリ、全身砕ける。避ける?間に合わない…)
ドゴオオオオ・・・
オレはリュウガの攻撃を喰らい後方に何十メートルも吹っ飛ばされようやく止まった。
全身骨折だらけでとうに肉体の限界を超えている。もう1ミリも動かせない。
そんなオレにリュウガが『おまえ…』と言いかけるが、そのまま黙ってこちらに向かってくる。
止めを刺すつもりなのだろう。
(もはや、これまでか?)
とそのリュウガの目の前に立ちはだかる影が…
『良かった…どうにか間に合いましたね』
復活したコタロウだ。




