第46話 最後の階層へ
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朝、目が覚める。
「コタロウ、朝だぞ」
「うにゃ」
いつもは、ごろごろとなかなか起きないコタロウだが今日はガバっと起き出した。
『にゃあ、早くいこうニャ』
すっかりやる気になっている。そりゃそうか、いよいよコジロウに会えるんだものな。
オレは急かすコタロウをなだめ、朝ごはんを出してやる。腹が減っては戦はできないからな。オレは闘いの時は、横で見てるだけなんだけど…
それにしてもコタロウは、昨日の戦闘で見違えるように成長したな。コタロウを包む闘気の質が目に見えて変化している。
今までも、体の周りを青白いオーラが力強く渦巻いていた。クエストでの討伐対象となっていたモンスターやここの各階層のボスクラスだとさすがにオーラを纏っているが、そのオーラの量と光の強さは圧倒的にコタロウの方が上でそれだけで力量の差が推し量れていた。
ところが、今はそのオーラが更に研ぎ澄まされている感じがする。コタロウの身体の動きや感情の変化に即座に呼応し形態を変化させているのだ。
強大な闘気を随時垂れ流しにしていた状態が今までとするなら、今は最小限に留めているオーラを自由自在に操っているという感じだ。
コタロウのやつ、また頼もしくなったなあ。本当に昨日の戦闘を経験できてよかった。
と、それよりも出発だ。最後の階層へ行かないと
「行くぞ、コタロウ」
「にゃ」
オレ達は、鳥居をくぐった。
「ヴン」
次の瞬間、下の階層へ到着する。
「さ、寒い」
「にゃ」
目の前には大きな湖がある。辺り一面は見渡す限り雪の世界で、寒さのためにその湖は全面的に凍っていた。
「つうか、この景色見覚えあるんだけど。まさか1階層にループしてないよな?」
ここまで来て振り出しに戻るとか、ありえないんだけど。
ところが、コタロウは構わずに前に進む。オレは慌ててアイテムボックスから毛皮を取り出しそれを着こみながら後を追う。
「メリメリメリメリ」
すると、氷を突き破りスノウクロコダイルが3頭現れた。
3頭とも1階層で戦ったものよりも、二まわりほど大きい。早速鑑定してみる
「鑑定結果」
エグゼクティブ・スノウクロコダイル:スノウクロコダイルの最上位種。全ての同種に指示を与えることが出来、シナジー効果による攻撃は単体でのそれに比べて5倍以上と言われている(当社比)
HP:680
特殊スキル:同種統率
マネージメント・スノウクロコダイル:スノウクロコダイルの上位種。自己より下位の同種に指示を与えることが出来る。
HP640
特殊スキル:同種指示
マネージメント・スノウクロコダイル:以下同文
こいつら、1階層で戦ったスノウクロコダイルの上司と社長ってことか?こんな世界にも縦社会があるとはなあ…オレはサラリーマン時代の事を思い出し、ちょっと憂鬱になった。
オレの上司は最悪だった。手柄は自分のモノにし、失敗は部下のせいにする。
支店長が「おい、この案件はどうなっている?」と聞くと、そいつは「ああ、三上にやらせてます」
(ああ?そんな話聞いてねーよ)
そしていつも怒られるのはオレだった。ところが、そいつはみんなから嫌われてたからだろう。人事部に色々とリークされて関連会社に出向させられた。その時は(ざまーみろ)と思ったものだ。まあ、そんな話は今はどうでもいいか
さて、このクロコダイルカンパニーの待遇はどうだろう?上司は尊敬できるのか?
そんなオレの心配は全くの杞憂に終わった。この会社組織は、上司と部下の風通しもよく固い信頼関係で結ばれていた。具体的に言うとコタロウに素晴らしい攻撃を仕掛けてきたのだ。
3頭の一糸乱れぬ、連携攻撃がコタロウを襲う。前後を挟んでコタロウと対峙した3頭は寸分の狂いもなくタイミングぴったりに同時攻撃を仕掛けた。
逃げ場を失くしたコタロウは上空にジャンプする。
すると、なんとエグゼクティブはコタロウの着地地点を予想し2頭に指示を飛ばして凍った湖に穴を開けさせたのだ。その判断能力と的確な指示は賞賛に値する。
「にゃ?」
そのまま着地したら、凍える水の中に真っ逆さまだ。コタロウは空中で体を捻り、瞬時に着地点を変更する。
ところがそれさえも予測していたエグゼクティブは、コタロウの着地の瞬間を狙って攻撃を仕掛ける。
3頭同時に大きなキバを剥きコタロウに襲いかかった。
本当に、傍で見ていてほれぼれとするような統率力と判断力と動きだった。
(クロコダイル達よ、いい会社に就職したな)
次の瞬間、クロコダイル達の身体が真っ二つに切り裂かれ「ボン」と宝箱に変化する。コタロウの目に見えないほど素早い攻撃がやつらにヒットしたのだ。
今のコタロウでは相手にならなかったな…
エグゼクティブよ。お前の事は出来るだけ覚えておくぞ。
オレは、宝箱の中を確認する。
「スノウクロコダイルのワニ皮(特上)」と「スノウクロコダイルのワニ皮(上)」が2つだった。
「さてと、先に進むぞコタロウ」
「にゃ」
近くに出現した鳥居をくぐり次のステージに転移する。
次の転移先は?
「ん?」
そこには、懐かしい日常の風景が広がっていた。そう、今となっては取り戻したくても叶わないもの。
「オレの部屋じゃないか!」
リビングにはソファがあり、腰を下ろすと正面のテレビからはいつも観ていたバラエティ番組が流れている。え?今までの出来事は全て夢だったの?
「にゃあ」
「にゃあ」
オレが今の状況に戸惑っていると、ソファに座るオレの足に2匹のネコがじゃれ付いてくる。コタロウとコジロウだ。久しぶりに見たコジロウは前と全く変わっていない。少しぽっちゃり目で短いシッポを「ぴん」と立ててオレにすり寄ってくる。
「よしよし、ブラッシングして欲しいのか?」
オレが2匹にネコ用ブラシでブラッシングしてやると、とても嬉しそうに「ゴロゴロ」とのどを鳴らす。
とコタロウが膝の上に乗ってきた。ノドを撫でてやると、気持ちよさそうに目を細める。オレはそのままテレビを観ながら、コタロウを撫で続ける。
うん。いつもの日常だ。数か月ぶりに戻ってきた我が家であったが、何も変わってない。
よしよし、ネコネコスティックをやらなきゃな。あれ?どこにあったっけ?
オレは膝の上のコタロウをそうっと降ろすとネコネコスティックを探す。
ところが、ネコネコスティックはどこにもない。クローゼットの中にも、冷蔵庫の中にも、食糧を備蓄している棚も探した。
オレは部屋中を探し回ったが、見つける事が出来なかった。
「あ、そうだった」
そこでオレはネコネコスティックの場所を思い出した。そうだ、ネコネコスティックはアイテムボックスに収納しているんじゃないか。なんでそれを忘れていたんだろう。
「あれ?」
次の瞬間、部屋は跡形もなく消え去り、オレは砂漠の真ん中に立っていた。
「チッキショオオオオオオオオオオ」
周りを見渡すとうすバカ下郎とその配下のサンドワーム10匹が、コタロウの攻撃により真っ二つにされた瞬間のようだった。
「そうか、またあの下郎の幻惑に掛かってしまったのか…」




