第42話 ジャングルステージ攻略
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「ブゥン」
出現した鳥居をくぐり更に下へ転移する。
今度はどんなステージだろうか?段々と景色が見えてくる。
「またまた暑いところだな」
「にゃあ」
鬱蒼と草木が生い茂っている。そう、今度のステージはいわゆるジャングルだった。
草木がびっしり生えていて、歩くのも一苦労だ。こりゃーまたまた目的地まで時間がかかりそうだ。
今まで同様、「ミスト・ヒール」を身に纏っているので暑さはあまり感じない。ところが今度の敵は暑さだけではなかった。
「ブーンブーン」
と、ひっきりなしに巨大なハチのような虫が周りを飛び回っている。形はハチとそっくりだが体長は30センチくらいもある。
「鑑定結果」
キラービー:お尻の針を敵に突き刺し毒を送り込む。この針に2度刺されたらショック死する。通常、集団で襲ってくるので攻撃を避けるのが非常に困難。
HP90
うわー。こえー。現世でこれが出現したら業者さんに頼むパターンのヤツだな。
オレは風魔法で、コタロウは闘気でそれぞれガードしているからキラービーの攻撃は喰らわない。
それはいいんだけど、この羽音がうるさくて敵わない。
『にゃああああああ、うるさいニャ』
とうとうコタロウがキレた。周りを飛び回っていたハチ達を鋭いツメで一刀両断にする。
「ボン」
とハチが消えて宝箱が出現する。中身はモチロン「ハチミツ」だ。
「こりゃありがたい。ハチミツは美味しいもんな」
『にゃあ、コレで静かになったニャ』
と喜んでいたのもつかの間、
「ブーーーン」
「ブーンブーン」
「ブンブンブーン」
前にも増してハチ達が押し寄せてきた。こりゃたまらん。
『ニャニャニャニャ』
「ボン」「ボン」「ボン」
怒ったコタロウがまたまたハチを瞬殺する。よしよし、ハチミツゲットだぜ。
すると、すぐに次のハチ達がやってくる。これの繰り返しだ。
「これじゃあきりがないな」
「にゃああ」
コタロウはとてもイライラしている。いつも飄々としているのにこんな様子は珍しい。
そうか、ネコって人に比べて耳がいいからな。
オレは風魔法でコタロウの耳をガードする。これで音に関してはマシになっただろう。
もちろんオレの耳も同じくガードだ。
羽音が聞こえなくなったので、少し機嫌が直ったコタロウとまた先へ進む。
それにしても草木が鬱陶しくてなかなか進めない。
あまり先へ進めないまま、時間だけが経過していく。音は聞こえなくなったとは言ってもハチの姿が消えたわけではない。見るだけでもストレスが溜まる。
『お腹減ったニャ』
「そうか、そろそろお昼ご飯にするか?」
少し早い気もするがキラービー達の相手でストレスが溜まったようだし、ちょっと休憩するか。
オレはログハウスを取り出し設置する。
『ボスの出現場所まであとどれくらいかかる?』
『今のペースだと1週間から10日くらいでしょうか』
オレはコタロウにご飯を出してやりながら、アイに今の位置情報を聞く。
今までに比べてやっぱり相当ペースが遅いな。
『あのハチ達はいくら倒しても、どんどんまたやってくるんだよな?』
『このステージのガーディアンが、キラービーのボスなのでそれを倒すまでは…』
予想通りの回答だな。
しょうがない。コタロウもイライラしているし、これは強行突破するしかないな。
昼ごはんを食べ終わったオレはコタロウに跨っていた。
「よしコタロウ、このまま進むぞ。」
『にゃ?了解したニャ』
コタロウは嬉々として走り出す。すぐ目前に熱帯雨林特有のシダ科の植物が迫る。
「ウインドカッター」
途端に目の前の草木がスパっと切断され目前に道が切り開かれる。
魔力をどんどん使うので魔法の連発は避けたかったが、ここは前進することを優先させよう。
「よーし、ドンドン行くぞー。ウインドカッター」
『にゃあ、どんどん行くニャ』
オレはウインドカッターを連発し、コタロウは喜んで切り開かれた道を滑走する。
「ハアハア、コタロウちょっと待って。魔力が切れそうだ」
日々の修行で一発当たりの魔力使用量はかなり軽減されているのだが、それにしてもちょっとウインドカッターを連発し過ぎた。
『にゃあ、じゃあこれからはボクが“闘気斬”で前を切り開くニャ』
え?さすがに主戦力のコタロウは体力温存した方がいいんじゃ…
『決して推奨は出来ません。残り体力を常に温存しつつ行動してください』
アイにアドバイスを求めたところ、こんな回答だった。
『コタロウ、押さえるんだぞ』
『分かったニャ』
分かってるとはとても思えないくらいコタロウは派手に“闘気斬”をぶっ放して先へ進んでいく。
今まで押さえつけられていたストレスから解放されてイキイキとしている。
「え?え?ちょっとコタロウ、待って待って」
コタロウのスピードがどんどん上がる。そしてどんどん派手に“闘気斬”をぶっ放す。
ついでに巻き込まれたキラービーも真っ二つになるが、お構いなしに進む。
「スパーーーーーーン」
風景が後ろに流れる速度は、体感的には通常の道を移動するのと変わらないくらいだ。
やっとの事で振り返って後ろを見てみると、オレ達が通った後には草木がキレイに切り取られた道が延々と続いていた。
『ニャニャニャニャ♪』
コタロウは有頂天になり過ぎてオレの声が耳に届かないようだ。どうしよう?大丈夫だろうか?
『にゃ、敵発見』
すると、コタロウがピタっと止まる。
え?いま敵発見って言った?
前方は少し開けて広場になっていた。中央に大木が生えていて、大きな、本当に大きなハチの巣がぶら下がっている。所謂スズメバチの巣だ。通常のスズメバチの巣も大きいがこれは桁が違う。
10メートル以上はあるだろう。一戸建ての住宅くらいの大きさがある。
え?もうボスのところまで来たの?早すぎるだろ…
「ちょ、待ってコタロウ」
オレをその場に降ろしたコタロウはそのまま巨大なハチの巣の前に飛び出す。興奮しててオレの声が耳に届いてないようだ。オレは魔力が枯渇寸前で何も出来ない。
「ブンブンブンブン」
「ブーンブンブンブン」
「ブンブン」
「ブーン」
「ブンブンブーン」
すると巣からキラービー達がわんさかと出てきた。数にして数万匹くらい、いるんじゃないだろうか?あまりの多さに空が真っ暗になる。こりゃさすがにヤバイ。絶望感がすごい。
「コタロウ、やばい逃げろ!!!」
オレは声を限りにコタロウに向かって叫んだ。
ところが、コタロウを見ると全く物怖じせずにその数万匹のハチ達と対峙している。
そして前足を思いっきり振り下ろした。
「ゴオオオオオオオオオ」
闘気の刃が真空となり竜巻が発生する。数万匹のハチ達は、その竜巻に巻き込まれ錐もみ上に上昇していき、そのまま為す術もなく息絶えていく。
「ボン」「ボン」「ボン」「ボン」「ボン」
「え?まじで??」
あんだけいたハチの群れを瞬殺かよ!!!後には、おびただしい数の宝箱が残っている。
「ブオオオオオオオン」
「ヴオオオオオオオ」
「ヴルォォーーーーン」
すると、今度は一際大きなハチが数匹とその後ろに特大のハチが出てきた。
ボスとその直属の部下ってところか。ボスの体長は1メートルくらいで部下は50センチくらいもある。
「鑑定結果」
クイーンキラービー:群れを統率するボス。自分自身、高い攻撃力を備えているが、仲間を率い戦うことにより、より強い戦闘力を発揮する。
HP290
特殊スキル:同種統率 迅速
ナイトキラービー:クイーンを守護する役割を担う。通常のキラービーよりも攻撃力・機動力に優れている他、仲間との連携攻撃が得意
HP190
特殊スキル:迅速
数えてみるとナイトキラービーは7匹いる。
「シュッ」
すると突然、何匹かのナイトキラービーが消えた。一瞬にしてコタロウの背後に移動したのだ。
クイーンの指示した陣形通りなのだろう。コタロウの正面にはクイーンが、そしてその周囲にはナイトキラービーが、油断なく一定の距離を保ちながら空中に静止している。
今度こそヤバイぞ。なんか統率力がもの凄いし、それぞれの攻撃力も高そうだ。
オレはコタロウに注意をしようと思ったその瞬間、
「???」
突然コタロウの姿が消えた。
「ボトボトボトッ」
すると何かが落ちてくる。
「うわっ」
見るとそれはナイトの首だった。あの一瞬でコタロウは3匹ものナイトキラービーの首を刎ねたのだ。
「ブーンブーン」
「ブンブン」
急に陣形が崩れハチ達に動揺が走る。その混乱をコタロウが見逃すはずもなく、また2匹のハチがコタロウに首を刈られる
「ボトボトッ」
残りはクイーンとナイト2匹の計3匹だ。圧倒的に見えた戦力をコタロウがあっという間に削ってみせた。コタロウのやつ、なんて戦闘力なんだ。改めてそう思う。
力の差は歴然だ。ナイト2匹は、コタロウにびびって萎縮しているように見える。
ところが、クイーンは最後まで立派だった。ナイトもろとも3匹まとめてコタロウに正面から攻撃を仕掛ける。
「ブウウウウウウウウウン」
コタロウは冷静に“闘気斬”を放ち、ハチ達は真っ二つとなった。
敵ながら、あっぱれな最後だったな。さすが数万匹を率いてたボスだ。上の階層のボスとのギャップが凄くて余計に立派に思える。
「ボン」
宝箱が出現する。中身を確認すると、「クイーンゼリー」と「ナイトゼリー」だった。ローヤルゼリーのようなものだろうな。
後は、宝箱の回収だ。何万個もありそうなキラービーの宝箱をオレはこの後、何時間もかけて回収した。誰が何と言おうと「ハチミツ」は欲しいのだ。




