第41話 砂漠ステージのボス
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「トン」
着地した後考える。さっきのオアシスはなんだったんだ?幻覚か?それとも蜃気楼か?
「コタロウは、オアシス見えなかったの?」
『にゃ?なにそれ?美味しいものかニャ?それ食べたいニャ』
うん。見えなかったって事だよね。アイに確認してみる。
『さっきの幻覚はこのステージのガーディアンの精神攻撃です』
『精神攻撃?』
『はい。自分に近づいてくる敵に幻覚を見せ、サンドワームの罠におびき寄せるのです。』
なるほど、なかなかいやらしい敵だなあ。
『でもコタロウは、幻覚見えてなかったみたいだけど』
『コタロウさんは、その程度の精神攻撃、無意識下でレジストしますので』
つまり、オレのレベルではその程度の攻撃もまともに喰らってしまうって事なんだな。
と言うことは今オレが取るべき行動は、
「コタロウに全てを任せて何もしない」
って事か?
『正解です』
っく、薄々気づいていたけど“戦力外通告”って実際宣告されると傷つくなあ…
暫らくして、少しだけ立ち直ったオレは「スンッ」とした顔でコタロウに跨る。
(無だ無になるんだ。あ、無になるって考えているって事は無じゃないな、だめだだめだ。あくまでも自然に気が付くと無になっている。いや、気が付いたらダメかな?)
オレは自分の中で答えの出ない禅問答を繰り返す。自分でも訳が分からなくなった。
「ドスン」
そして気づいたら、跨っているコタロウから落ちていた。砂の上だから痛くはない。
『ご主人サマ、大丈夫ニャ?』
「うん?何が?オレは今とっても気分がいいぞ」
心配そうに顔を覗き込むコタロウにオレはアルカイックスマイルで返す。
『にゃあ。ご主人サマ、何か怖いニャ』
コタロウを引かせてしまった。やはりオレには、まだまだ悟りの境地には程遠いようだ。
『シュウさん、毎日されている魔法の訓練をすればいいのでは?』
あ、そうか。それで良かったのかー。
今度はスムーズにいった。オレはコタロウの上で水魔法の修行をする。
まずは体内に魔力を張り巡らせる。毎日やっている事だ。今では自分の体中、それこそ血管の一本一本さえも手に取る様に把握できる。体中に魔力を張り巡らせたら、次はそれを循環させる。まずはゆっくりとそして次第に速度を速めていく。
この修行中、オレの意識はまるで水中にいるかのように静かになる。瞑想状態と言えばいいのだろうか。外の様子も見えているが同時に自分と向き合っている感じだ。
『にゃ、ご主人サマ』
オレが、自分の世界に入り込んでいるとコタロウから話しかけられた。
「うん?」
『ちょうどいい場所があるニャ、ここで休憩しようニャ』
見ると、丁度いい感じの泉があって周りには草木が生い茂っている。あれ?どこかで見たような景色が…
「コタロウ、これは幻覚だ。また罠にかかるぞ」
『ニャ?ご主人サマ何を言ってるのかニャ』
コタロウはオレの忠告にもお構いなしに、どんどんと歩を進める。そして泉のほとりに生えている草地にオレを降ろした。
「うわ!!」オレは慌てて周りを見渡す。特に変化はないな。次に恐る恐る自分の座っている場所を確認する。
「あれ?本当に草が生えてる感触があるぞ」
そんなオレの様子をコタロウは首を傾げて不思議そうに見つめている。
『早く、ご飯にしようニャ』
「お、おう」
どうやら本物のオアシスの様だ。オレはほっとしてログハウスを取り出した。中で昼食を取りながら、地図で今の位置を確認する。
『目的地まであとどれくらいかかる?』
『今のペースだと4,5日くらいは…』
そうだよなあ。1階層と同じ広さとして、今は殆ど歩きに近い速度だもんなあ。
だが、至る所に仕掛けられている罠を避けながら進むとなるとしょうがないか…
それから数日間はひたすら我慢の日々であった。
オレはコタロウに跨りながら、魔法の修行に打ち込み、コタロウは罠を掻い潜りながら先にすすむ。夕方になると、安全な場所を見つけそこでキャンプ(と言ってもログハウス内だが)を張り、朝になったらまた先へ進む。それを毎日ただ繰り返す。
そうして数日後、遂に…
『シュウさん、ガーディアンのテリトリーに入りました』
「よっしゃああああああああ」
うん?特に何かいるようには見えないが…
目の前には、ひたすらに砂漠が広がっているだけだ。
『にゃあ、敵発見ニャ』
コタロウが砂地を前足で「トン」と叩く。すると、前方に5つのすり鉢状の穴が現れた。5つの穴はオレ達を取り囲むように放射線状に配置されている。
そして穴を挟んで向こう側に、一際大きな穴が出来ている。なるほど、コレがボスの巣穴なのだろう。
オレは風魔法で宙に浮かび、そのボスの巣穴の真上まで移動する。すると穴の底に大きなキバを持った生き物がいた。
「うん?何かサンドワームと違う」
サンドワームはみみずが大きくなったような形状だ。先端部分に大きなキバを持った口があり、それで獲物を捕食する。
ところがボスの巣穴からは鎌状に湾曲した2本の大きなのこぎりが見える。そのフォルムはまるで獲物を罠に落として捕食するある昆虫の幼虫に見える。
「そうそう、これがアリジゴクだよね」
「鑑定結果」
うすバカ下郎:サンドワームを率い獲物を罠に落とし捕食する。また幻影を見せることによって、罠におびき寄せ罠に落とし敵を捕食する。といった卑怯な戦法を好む、まさに下郎である。
10年間も地中で生活し成虫となったら1週間で死んでしまう自分の境遇を呪い、精神が捻くれてしまい、そんな戦法を取る様になったと言われている。
HP590
特殊スキル:念話 幻影 同種統率
うわー。こじらせてんなー。と思ってたら
『キシシシシシ、よく来たな。たっぷりと可愛がってやるぞ』
なんか粘着質な雰囲気だな。あんまり関わり合いになりたくないタイプだ。
『コタロウ、早めに片づけようか』
『ニャ』
コタロウは“闘気斬”を目の前の穴の一つに向かって飛ばす。
『ニャ?』
ところが穴の底にいるサンドワームは、砂の中に潜ってしまった。“闘気斬”は砂の表面を削っただけで本体にはダメージを与えることが出来ない。
くっそー、面倒な敵だな。
と次の瞬間、コタロウが穴の底まで飛び降りる。その勢いのまま地面に向かって、自分の右前脚を振り下ろす。
「ズドオオオオオオオオオン」
穴の中を覗きこむと底が大きく抉れている。その横でコタロウがチョコンとすまし顔で座っていた。
「やったのか?」
「にゃあ」
子分を殺されたうすバカ下郎は激怒する。
『クエーーーー、よくもやってくれたな。お前たち遊びはお終いですよ。やっておしまいなさい』
使い古された陳腐なセリフ回しだなあ…
ザザザザザザザザザァ・・・
すると残された4匹のサンドワームがコタロウの周りを囲いこみ、ひとつの巨大な穴を作り出す。直径は100メートルはあろうか、そして穴の深さは50メートルくらいある。物凄く深い。
穴の底では、コタロウと4匹のサンドワームが対峙していた。そして4方向から一斉にコタロウに牙を向き襲い掛かる。
「グエエエエエエエエ」
「斬っ」
次の瞬間、4匹のサンドワームが全て真っ二つになっていた。コタロウの鋭い爪で切り裂かれたのである。
「コタロウの目の前に姿を現したら、そりゃーそうなるよな」
「にゃあ」
子分を全て失ったうすバカ下郎は、更に激怒した。
『チッキショオオオオ、こうなりゃオレ様が直々にお相手してやるぜええ』
次の瞬間、オレは水の中にいた。
「え?え?」
なんだコレは?これも幻影なのだろうか?だが実際問題、水の中にいるような感覚で体が上手く動かせないし、呼吸をすることもできない。
すると、大きなサメが近づいてくる。巨大なサメだ。4,5メートルくらいあるだろうか?大きく開けた口からは、鋭いキバが剥き出しになっている。
「あわわわわ」
オレは慌てて逃げるが、水中ではサメの速さに敵うはずがない。あっという間に追いつかれる。
凶悪なキバがオレの目前に迫るが、オレはこの絶体絶命の大ピンチに為す術がなく目をつぶる。
「???」
ガブっと喰われるかと思ったが、何も起きない。恐る恐る目を開ける。
「あれ?」
目の前には元通りの砂漠地帯の風景が広がっていた。
『クッソオオオオオオ、先に地獄で待ってるからなーーー』
丁度、うすバカ下郎が真っ二つに引き裂かれたところだった。
「そうか、アイツが死んだから幻影が消えたのか。コタロウ助かったよ」
「にゃあ」
オレがヤツの幻影に踊らされていた間に、コタロウが“闘気斬”で瞬殺していたようだ。
またまた何の役にも立てなかったが、今は気にしないでおこう。
すると「ボン」と宝箱が出現する。
「どれどれ」
中身はなんとミスリル鋼だった。コレはいい物を手に入れた。




