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第40話 砂漠の歩き方

本日、ブックマーク登録頂いた方ありがとうございました。今後もお楽しみ頂ければ幸いです。

オレは鳥取砂丘でさえ実際に見たことはない。なので、コレが砂漠かって言われると自信がないのだが…


スフィンクスやプラミッドがあり、どこまで行っても砂ばかりってのは完全に砂漠だ。それは分かる。


ところが、目の前に広がっている砂漠は見渡す限り砂ばかりではあるがところどころに草木が生えていたり、たまにアメリカの西部劇で出てきそうな草が丸まったヤツが「カサカサー」って転がっていたりする感じだ。


そう言えば、以前プレイしたRPGにこんなマップがあったなあ。まあここが砂漠かどうかってのは、どうでもいいことだな。


それにしても暑い。さっきまで雪原だったのが、このギャップだ。体温調節機能がおかしなことになっている。


「コタロウ、大丈夫か?」

『“闘気”でカバーしているから何とか大丈夫ニャ』


そうか。オレも風魔法で自分の周りに空気の層を作りガードしているが、それでもなお暑い。

あ、なんか頭がぼーっとしてきた。こりゃいかん。


「よし、ヒール・ミストだ」


オレの周りにヒールウォーターを霧状にして散布する。オレの体表に接触したミストはそのまま蒸発し気化熱で体温を下げる。蒸発した水分はまた空気の層内を循環し続ける。

循環するうちに、その気化した水分がまた霧状になる。というようにミストをぐるぐる回し続ける仕組みだ。


何とか頭が働いているうちに思い付いた魔法だったが、うまくいった。もちろん、コタロウにもミストを散布してやる。



『とっても涼しいニャ』



よし、快適になったので心置きなく進めるな。

オレは、例によってウインドウ上に表示された地図を頼りに目的地を目指す。


それにしても、全然敵が出てこないな。敵もこの暑さでは堪らないのかもな。なんて思っていると、



『にゃ、敵が来るニャ。ご主人サマ気を付けて』



コタロウの声と同時に、近くの繁みからオオカミみたいな獣が飛び出してくる。



「ガオオオオー」

「うわ」


オレは後ずさってそのオオカミと対峙し鑑定をする。


「鑑定結果」

サンドウルフ:砂漠地方に棲息するオオカミ。通常、集団で生活することが多く仲間と連携して狩りをする。素早い動きと牙が武器。

HP290


ん?仲間?


と次の瞬間、同じ繁みからそのサンドウルフが次々と飛び出してきた。


「うおおおん」

「うおん」

「うーわん」


「うわっ」



異世界に来て数か月、それなりに場数も踏んでいるのだがオレはいまだに咄嗟の対応が出来ない。情けない事にまたしても尻もちをついてしまった。


そんなオレにサンドウルフの群れが次々に襲いかかる。






「ザザザザザザァ」



すると急に周りの砂が崩れ始めた。オレとサンドウルフ達は砂と一緒に下へと流されていく。


「え?え?」

「ワオーン」


オレは益々パニックになる。



その時、コタロウがオレの救出に飛び込んできてくれた。オレのエリの後ろを咥え、そのままオレもろとも「ぴょん」っとジャンプしてその場を脱出する。




「ひええええええ」



上から見てみるとよく分かった。砂が崩れてすり鉢状の穴になっている。かなり巨大な穴で直径は5,60メートル、深さが30メートルくらいだろうか。


そしてその一番下には、キバを持った巨大な生き物が大きな口を開けて待ち構えている。



あれ?これなんか見たことあるよね?アリジゴクだっけ?ちょっと違うような。とりあえず鑑定してみる。


「鑑定結果」

サンドワーム:砂漠地方にすり鉢状の罠を仕掛け、掛かった獲物を捕食する。胃液は強力な酸性で獲物を骨ごと溶かす

HP380


「ワオーン」

「ワオン」

「ワオーーーン」



穴に落ちたサンドウルフ達は為す術もなく砂に飲み込まれ、そのままその大きな口に吸いこまれていった。





『この辺りは至る所にあいつの罠が仕掛けられているから、気を付けるニャ』

「ありがとうコタロウ、助かったよ」



やはりコタロウは頼りになるなあ。さて、気を取り直して先に進むか。



コタロウは“感知”で罠の場所が分かるので全く危なげなく先を歩く。オレはその後ろをおっかなびっくりでついて行く。そのまま暫く歩き続けた。





うん?コタロウの歩みが止まった。立ち止まって地面を眺めている。


「どうしたコタロウ?」


すると、コタロウが前方の砂地を「トン」と叩いた。途端に周りの砂が崩れ出し、またすり鉢状の穴が出現した。今度の穴はかなり大きい。直径100メートルくらいあるだろう。


しかも場所が悪い。オレ達が進んでいるルートの丁度ど真ん中を塞いでいる。

コレはかなり大回りしないとだめだ。時間的にもロスが大きいな、と思っていると



『ご主人サマ、ボクの背中に乗るニャ』


オレはコタロウの言ったとおりに背中に跨った。コタロウは「ピョンッ」とジャンプしてその穴を軽々と超える。


おお、さすがコタロウ。とまたまたオレは感心する。聖獣になってから頼りっぱなしで飼い主としては情けないがとても助かっているよ。




その後も時々大きな穴が出現し、その度にコタロウに跨りその穴を飛び越えていく。

それを淡々と繰り返す。


『にゃあ、お腹がすいたニャ』

「そうだな、そろそろお昼ご飯にするか」


オレは周りを見渡すが、罠だらけのここにログハウスを設置するのは危険だろう。




あれ?向こうに丁度いい感じの泉と生い茂った草木があるじゃないか。砂漠地帯のいわゆるオアシスってヤツだな。



「コタロウ、あそこにあるオアシスでお昼にしようか」



オレはオアシスに向かって走り出した。この暑い中、ずっと歩き続けてのどがカラカラだ。あの泉で水浴びをしよう。


あれ?思ったよりも距離があるな。なかなか辿りつかない。



と、その時目の前に砂の壁が立ちはだかる。


「え?え?」


周りはいつの間にか砂に囲まれていて、オレは腰の辺りまで砂に埋まってしまっていた。そしてそのまま砂に流されて下へと落ちていく。



「うわああああああああああ」



底で大きな口を開けてあのサンドワームが待ち構えている。オレはなんとかそのキバから逃れようともがくが、砂はもうオレの肩まできていて身動き一つ取れない。



「もうダメだ」



その瞬間



「斬っ」



サンドワームが真っ二つに切り裂かれる。


『ご主人サマ、大丈夫ニャ?』


コタロウが“闘気斬”で助けてくれたようだ。でも、オレはもう首まで砂に埋もれている。



「コタロウ、砂に埋もれるー。助けてー」

『にゃ、ご主人サマ。なんでいつものように空を飛ばないニャ?』



「え?」



そりゃそうだよね。またまたテンパって忘れてた。



オレは風魔法を唱える。途端にオレの周りに風がまとわりつき、オレは宙にフワリと浮いた。


最初っからこれで良かったんじゃねーか。


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