表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/310

第3話 コタロウ狩りをする

「はあああ。良かったあああああ」

オレは、大惨事にならなかったことで心から安堵する。


すると「ぐーーーー。」とお腹が鳴る。

ホッとすると今度は急激にお腹が空いてきた。


「え?え?なにコレ?メチャメチャ腹減ってきた。」

かつてない腹のすき具合にオレは、あせって周りを見る。


幸いにして、バナナっぽい植物が近くにあるのでその実をもいでむしゃぶりつく。

「味は・・・うん。ふつうのバナナだな」


近所のスーパーで買うひと房200円のバナナとおんなじ味がした。


そのバナナ(というかバナナナ?)をひとしきり食べてお腹が落ち着いたオレは、そこでコタロウがいないことに気付く。


「コタロウ?コタロウー!!コタロウはどこ行ったー?」

あわてて周りを探すが、見当たらない。


「コタロウ・・・」


オレは不安と寂しさからションボリとその場に腰を下ろして一人黄昏れる。


そもそもコタロウは生まれてすぐウチに来てから数えるくらいしか外に出ていない。その2回とも近所の獣医さんにいった時だけだ。


1回目は、予防接種。2回目は、去勢のために訪れている。

去勢ってどうするんだろ?って思ったんだが、何のことはない。タマタマを袋から取り去るだけだ。


獣医さんに連れて行き、翌日迎えにいった時のコタロウとコジロウは、「あー。オレ達はもう二度とこのタマタマを使う日がこないんだな」って寂しげな顔をしていた。


オレはそんな2人に「オレも27年間、一度も使ったことないぜ」って話しかけてやった。

目が合ったオレ達は全てを分かりあえた・・・気がしていただけなのだろうか?


「初めて外に出たので、ちょっとテンション上がってその辺走り回っているだけさ。また戻ってくるに決まってる」と強がってみたが、不安は増すばかりだ。ひょっとして猛獣に襲われていないだろうか?などとよからぬ考えが頭を占める。


貰ってきたばかりのまだ小さかったコタロウを思い出す。とても臆病でいつもどっかに隠れていたっけ。


「そうだ、アイツは臆病だった。きっと今も怖くてどこかに隠れているに違いない。こうしちゃいられない。探しに行かなくちゃ。」


と立ち上がった瞬間、「ガサガサ」と音がして目の前の草むらからコタロウが姿を現す。


「コ、コタロウ?コタロウううううう!」


オレは、安堵とうれしさのあまり思わず涙ぐむ。


そんなオレの足元にコタロウはくわえていた何かをポトリと落とした。


「うん?なんだコレ?」


なんかピンク色のカタマリだ。

つうかどう見ても何かの肉のようだ。


鑑定してみると


「鑑定結果」

森ネズミの肉、食用可。生でも煮ても焼いても食える。


と出た。


「そうかー」と思い、コタロウをみやると肉の前でチョコンと座っている。


「あ、これオレに持ってきてくれたんだな?コタロウはえらいな、ありがとな」

とコタロウを撫でてやると目を細めて「ゴロゴロ」言い出す。

オレはすっかりうれしくなった。


ネコは犬と違い、飼い主に獲物を持ってこないと思うひとがいるかも知れないが実は意外とそうでもない。自分が狩った獲物を飼い主の元に持っていき、褒めてくれってアピールする習性がある。


犬は飼い主の指示で狩りを行うが、ネコは単独で行う。その違いだけだろう。


「それにしても、この肉って普通にスーパーで売ってるパックの肉と変わらなく見えるけどどうやって取ってきたんだろう?」と疑問が湧いてくる。


見た目500グラムくらいの肉のカタマリであるが、きれいに精肉されている。普通に生きている動物を狩った場合、それをさばいたり血抜きをしないとこんな状態にはならないハズだ。


「ひょっとして、ダレかの肉を盗んできたんじゃ?」


と思い、コタロウを見る。


するとコタロウはなぜか遠くの一点を見つめている。

その視線の先には、何か茶色い物が見えた。


「あれは?」


急いで鑑定してみると


「鑑定結果」

森ねずみ:森のみんなの貴重なタンパク源。狩っても狩ってもネズミ算式にまた増える。


とある。


なるほど、この森の中で食物連鎖の一番下の動物ってことか。さっきの肉の正体だな。


大きさはコタロウの半分くらいで全体は茶色い毛に覆われてなんかモフモフしている。顔もつぶらな瞳がかわいい。ねずみというよりは、うさぎに近い見た目だな。


オレがそんな事を思っていると、コタロウは足音も立てずにその森ネズミに少しづつにじり寄っていく。森ねずみは、そんなコタロウを気づいているのかいないのかじっとしている。


「それにしても、コタロウのやついっぱしの顔してやがる。まるで獲物を狙う獣そのままだ。」とオレは、その成長をうれしくもあり少し寂しく感じながら見ていた。


と次の瞬間、コタロウが森ネズミに襲い掛かる。爪は「ジャキーン」と飛び出し前足で森ネズミの体を動かないようロックする。そしてその、のど仏にコタロウのキバが食い込んだ。


実は、オレはグロいのが超苦手だ。昔読んだマンガの中に、主人公が無人島に流されソコで狩りをして生活する話があったのであるが、「シカ捕まえてそれをさばいて食べる?ムリムリ。ってか魚でさえさばけねえよ。」って思ってた。


なので、「うわー。ムリムリー。グロ注意!!」って思わず視線を逸らしかける。


と次の瞬間、昇天した森ネズミが煙の様に消え失せた。


「あれ?どうなってんの?」


と思ってたら次の瞬間、笹の葉みたいなのに包まれた肉のカタマリが出現した。


「お、おう?」


さすがファンタジーな世界。どうやらこの世界はNo グロらしい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ