第37話 雪原ステージ攻略
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トンネルを抜けるとそこは雪国だった
本当に見渡すばかりの雪景色だ。一面の銀世界とはまさにこのことだろう。
「にゃにゃにゃにゃ♪」
初めての雪にコタロウは大はしゃぎだ。まるで犬みたいにその辺を駆けずり回る。
あ、前足を目いっぱい使って一生懸命穴を掘りだした。と思ったら今度は雪にダイブした。
まあ仕方ない。暫らく遊ばせるか。こう見えてもコタロウはまだ2歳にもなっていない。まだまだ遊びたい盛りなのだ。
それにしても、こんなに雪があるところに来たのは久しぶりだなあ。
学生時代、スキー場にはよく行っていた。雪がべったりのシャーベット状のところもあれば、まるでカタクリ粉のようにキメが細かいところもあった。
ここの雪はオレが経験した中でも最上の雪質だ。歩くと「キュッキュッ」と軋む音がする。
そして少しでも止まるとどんどん体が沈む。極上のパウダースノウだ。
オレはとりあえず風魔法で上空に逃れる。コタロウもどうせすぐこの遊びにも飽きるだろうから、それまで待ってやるか。
3分ほど経っただろうか、案の定コタロウは遊びを止めて大きく伸びをする。
『ご主人サマ、そろそろ行こうニャ』
ネコって本当に飽きっぽいな。オレはコタロウの背中に飛び乗った。
「よし行くぞ、コタロウ」
「にゃあ」
「イタイイタイイタイイタイ、舌噛んだ。ちょ、止めてコタロウ」
「にゃ?」
雪道をコタロウに乗って進むのはムリだった。柔らかい雪の上をコタロウが跳ねる様に進むものだから、上に乗っているオレは大きく上下に揺れる。すぐに舌を噛むし、ひどく乗り物酔いをする。こりゃーダメだ。
一旦、コタロウから降りたオレは暫し考えた。
「あ、そうだ。」
とアイテムボックスに収納していた杉ちゃんを取り出す。オレが転移して最初にいた場所に生えていた杉の木だ。念のためにストックしてあったのだ。それをウインドカッターでいい感じに切断してと…
そう。オレは杉の木でスノーボードを作ったのだ。
実はオレは学生の頃、スノボにハマってた。当時はインストラクターの資格を取るくらいの腕前だったんだ。なぜハマってたって?もちろん、女の子にモテると思ってたからだ。
もちろんモテるどころか、女の子との接点さえ全くなかったが…
なぜモテなかったか、今考えるとそれはオレの性格のせいだろうな。
インストラクターの資格を取るために合宿していた時、他の仲間は女の子と気軽に会話してたが女慣れしてないオレはうまく話せなかったし。
女の子がいる飲み会なんかでも、空気のような存在だった事を思い出した。
あ、なんか涙出てきた。いいんだ今はコタロウがいるからな。
毎日魔法の練習をした成果で、ウインドカッターで作ったスノーボードは見事な出来栄えだった。
オレはフリースタイルなので前後対称にそれぞれ反りを作る。コレがないと前に進む時、どんどん雪に沈んでいってしまうからな。そして左右に方向転換するときには、エッジを利かせないダメだ。そのために、両サイドのフチをキレイに磨く。
よし、コレで完璧だ。
もちろん所詮、杉で作ったものなので強度はイマイチだがずっと使うものじゃないし、今はコレで十分だ。
後はブーツとビンディングだが、コレは材料がない。しょうがないから、履いているわらじを縄でくくりつける。この縄も、麦わらを編んで作った自家製だ。そしてその縄を長く伸ばしてコタロウの首に括り付ける。
「よし、完成。コタロウ走ってくれ」
「ニャ」
コタロウが走り始めるが、今度は大丈夫だ。まるでスノーモービルに引っ張られるような感覚だ。スノボは久しぶりだったが、少し滑っているうちに勘を取り戻してきた。
ところが暫らくすると
「ハーーックション。うわー寒い寒い」
そりゃそうか。オレは甚平を着ているだけだもんな。
もちろん、風魔法で自分の周りに空気の膜を作り防寒対策はしている。だが、それでも限度ってものはあるのだ。
「仕方がないか」
オレはアイテムボックスからあるモノを取り出した。
そう、ダイゴロウさんから貰った毛皮である。まさか実際にコレを着る事になろうとは。
まあ背に腹は代えられないし、どうせダレも見てないからな。旅の恥はかき捨てって言うし。と色々と理由を見つけながら着てみる。
「あったかーい」
ところが着てみるとメチャメチャ暖かい。どう見てもただの毛皮をなめしただけの古臭い着物だが、オレが前世で思い切ってボーナスはたいて買ったモンク○ールのダウンよりもずっと暖かい。更に驚くのは足元まで温かいことだ。
オレはいつものようにわらじを履いている。雪山でわらじ、通常ならとても耐えられないハズ。
きっとこの毛皮は何等かのマジックアイテムなのだろう。
すると毛皮を着たオレを見たコタロウが、
『ご主人サマ、カッコいいニャ』と褒めてくれる。
「そ、そうか?」
『にゃあ。それを着ているとまるでグリズリーみたいだニャ』
それ褒めてねーよ…
一面の雪原を走り続ける。コタロウは雪の上を飛び跳ねるように移動している。初めて雪の上を走るのに、全くそんな素振りを見せず力強く駆けている。そんなコタロウに引っ張られながら、オレは久しぶりのスノボを楽しんでいた。
雪原とは言っても、完全に平地ではない。ところどころにちょっとしたデコボコや少し大きめのコブがあったりする。そこでちょっとしたトリックを決めてみたりするのだ。現世に比べて体力が上がったお陰か、全然疲れないし思い通りに体が動くので非常に楽しい。
しかし行けども行けども、景色は変わらない。自分が今どこにいるか分からなくなりそうだ。アイのお陰で常に自分の位置は把握できているのだが、確かにナビがなければ確実に迷子になるだろう。
『にゃあ。前方に敵発見』
「うん?」
突然コタロウから報告がある。良く目を凝らすと、大きめの猛獣が3頭いる。見た目が白いから、よく見ないと見落としてしまいそうだ。
「コタロウ止まれ」
「にゃ」
すぐに鑑定する。
「鑑定結果」
スノウグリズリー:雪山に棲息するグリズリー。寒冷地に適応し、通常の個体よりも大型化している上、攻撃力・防御力も高い。
HP:380
あ、あいつらオレ達が最初に戦って瀕死の目にあわされた山グリズリーの上位種ってことか。
「コタロウ頼む、オレにやらせてくれ」
『にゃ、分かったニャ』
聖獣であるコタロウなら万が一にも負けないだろうが、オレもあれから成長している。
今のオレの実力を試してみたい。
「よし」
オレは風魔法で上空に浮かぶと、右手からはファイアーボール左手からはウォーターボールをそれぞれ3個ずつ発射する。それらは、オレの頭上でそれぞれ合体し大き目のファイアーボール3個になる。
「いけー」
オレの掛け声とともにその大き目のファイアーボール達が、3頭のスノウグリズリー目がけてすっ飛んで行く。
「今だ!!混ざってはじけろーーーー」
オレは右手を握りしめ前に突き出す。その途端にファイアーボール達がグリズリーの目の前で炸裂した。
「ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン」
そう、以前山グリズリーに留めを刺した水蒸気爆発を自分なりに改良した合体魔法、その名も「スチームエクスプロージョン」技名にセンスがないのはご愛嬌だ。
まともに食らったグリズリー達が、「ボンッ」と宝箱に変化する。よし。うまく行ったな。
「うん?」
1匹がまだ死んでない。直撃を避けたか。瀕死状態だが、まだ目は死んでいない。
それならばコレを喰らえ
「ウインドカッター極!!」
真空の刃が、スノウグリズリーに襲い掛かる。
「斬っ」
生き残ったスノウグリズリーは頭と胴体が切り離され、その後宝箱が出現した。
これも改良版だ。通常のウインドカッターを極限まで研ぎ澄まし殺傷能力を上げたのだ。
「よし、どちらの技もうまくいったな」
『ニャ、ご主人サマ良かったニャ』
コタロウも褒めてくれ、オレもホッとしていると
ファンファーレが鳴り響く。
「ん?」
久しぶりにレベルが上がったようだ。
シュウ
勇者Lv19
種別:人族
HP168(10up)
MP239(15up)
使用可能な魔法:初級火魔法、初級風魔法、初級水魔法
まだまだひ弱なオレだが、絶対生き残ってやるぜ。




