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第36話 「最後の洞窟」へ

ブックマークご登録頂いた方、ありがとうございました。日々、ブックマーク数やpv数などに一喜一憂しております。今後も応援よろしくお願いいたします。

話の流れから大型犬を想像していた「タロウ」と「ジロウ」はなんとチワワだった。

ウルウルした目で来客者のオレとコタロウを見つめている。するとコタロウが念話でそっと報告する。


『ニャア、この2匹ご主人サマよりも強いニャ』


え?オレは慌てて2匹を「鑑定」してみた。


タロウ

種別:妖犬

HP:290

MP:0

使用可能なスキル:疾風 初級闘気 気配探知 


ジロウ

種別:妖犬

HP:179

MP:318

使用可能な魔法:中級風魔法 初級聖魔法 



ホントだ。2匹ともオレよりも強いな。と言うかハチベエさんよりも強いんじゃねーか?


『それにしても、コタロウはこの2匹の実力をよく見破ったな。』

『にゃあ、僕のスキル“感知”の前では何者であれ実力を隠すことは出来ないのニャ』


なるほど、さすがだな。





ちなみにオレのステータスは


シュウ

勇者Lv18

種別:人族

HP158

MP224

使用可能な魔法:初級火魔法、初級風魔法、初級水魔法


である。完全に2匹に負けている。



「驚きました。2匹ともかなりの強さですね」

「お、よく分かったな。それが分かるだけでも大したものだ」


ダイゴロウさんは更に機嫌が良くなる。タロウもジロウも年齢が30を過ぎた頃から妖力を獲得し、更なる強さを手に入れたそうだ。ちなみに今の年齢は50を超えているとのこと。


「見た目で実力を判断するなとはよく言われますが、ここまで極端な例は珍しいですね」

「いやー。そうは言ってもこいつらは生まれた時からオレが鍛えたからなあ。」


ん?どういう事?


「こいつら、生まれたばっかりの時はてんで弱かったからな。こりゃダメだと思ってな」


元々ダイゴロウさんの実家は猟師だったのもあって、タロウとジロウは猟犬としてスパルタ教育を受けたとのこと。


生まれたばかりのチワワを猟犬としてスパルタ教育…


その光景は想像するのも恐ろしいな。


「ところで、2匹の戦い方ってどんなんですか?」


興味本位で聞いてみる。するとダイゴロウさんは、得意気に話し出す。


「タロウは、近接攻撃型なんだ。と言ってもパワーはないからスピードを生かした攻撃なんだけどね。素早く相手の懐に入り込み、闘気技の発頸を打ち込んだり闘気の刃で相手を攻撃する。相手が怯んだところをオレが留めを刺すんだ。」

「コンビネーションプレイですね。」


ダイゴロウさんは、にこにこしながら続きを話す。


「ジロウは、後方支援タイプだ。風魔法でこちらの攻撃力や防御力を強化したり、聖魔法で傷ついた仲間を癒したりな」


ダイゴロウさんの話を聞くうちに、オレはコジロウと一緒に戦う姿を思い描く。コタロウが近接攻撃を引き受ける。コジロウは頭が良いネコだから、魔法タイプだろう。後方支援をしてくれるに違いない。そんな事を考えていたら一刻も早くコジロウに会いたくなってきた。


コタロウを見ると、珍しく「ふんふん」と興奮している。オレと同じ気持ちの様だ。


「ダイゴロウさん、色々と話して頂いてありがとうございました。オレもコジロウと会えたらダイゴロウさんとタロウとジロウみたいなパーティを作りたいです」


そう言ったらダイゴロウさんまた泣き出した。本当に涙もろい人だ。


「お前、本当にいいヤツだな。よし、お前にいいものをやろう。餞別代りに受け取ってくれ」


とアイテムボックスから何か取り出す。


「イヤ。そんないいですよお」と言いながら、取り出したものを見てみる。


何かの毛皮でできた蓑っぽいアレだ。猟師さんが昔話の中でよく着ているヤツだな。うわー。本当にいらないんだけど…


とても断れる状況ではなく、仕方なく貰う。まあアイテムボックスに塩漬け確定だな。






翌朝



まだ薄暗いウチから目が覚めた。いよいよコジロウと会えると思うと、いてもたってもいられない。急いで身支度を整えて、ダイゴロウさんから用意してもらった部屋から出る。


「うん?もう起きたのか?」

「ワンワン」


ダイゴロウさんとタロウとジロウはもう起きていた。猟師の朝は早い。


(まあ、ダイゴロウさんは厳密には違うけど生まれた時からの習慣となっているのだろう)


山に仕掛けた罠を朝一で見廻り、獲物がかかっていればその場で仕留め戦利品をゲットする。罠は何十か所も仕掛けているので見て廻るだけでもかなりの時間がかかるそうだ。


ちょうど見廻りが終わり帰ってきてタロウ、ジロウと共に一休みしていたところだった。


そのまま朝ごはんの支度をして、みんなで食べる。シンプルにご飯と漬物と味噌汁だ。

あ、味噌汁の汁が赤い、いわゆる赤だしだ。EDOでは普通の合わせ味噌だったので、このバリエーションの違いは地味にうれしいな。


「色々とありがとうございました。また寄らせて頂きますね」

「おう、本当に気を付けるんだぞ」

「ワンワン」



みんなに見送られ、「最後の洞窟」に向かう。いよいよだ。今までの出来事が色々と思い出される。初めて異世界に渡ってきた時のこと。魔法を使えたこと。狩りをしたこと。そして山グリズリーと戦い瀕死となったこと。そこで初めてアイと出会ってコジロウに会う方法を教えて貰ったんだったな。


今も常に地図が表示されていて、「最後の洞窟」まで迷わず向かっている。本当に助かっている。






「コタロウ、着いたぞ」

「にゃあ」


「最後の洞窟」は何の変哲もない、普通の洞窟だった。例えるなら冬にクマが冬眠していそうな感じといえば良いだろうか?


名前からして、森の最奥にある荘厳な雰囲気を醸し出しているヤツを想像していたが、拍子抜けしてしまう。


入口の脇にはボロい木の看板が立てかけられており、かろうじて「最後の洞窟」と読める文字が書かれてあった。



とりあえず中へ入ってみるか。



「せ、せまいな」

「にゃあ」


見た目通り中は狭く人ひとりが通るのがやっとだ。天井もオレが腰をかがめてやっと進めるくらい低いので、聖獣サイズだと通れない。コタロウもネコバージョンのまま、ついてくる。本当にここが「最後の洞窟」なのか?少々不安になってきた。


しばらく進むが、依然として狭い通路が続いている。さすがに不安になってアイに聞いてみる。


『ここが、「最後の洞窟」で間違いありません』


しょうがない、ガマンして進むか。そのまま腰をかがめながら前進を続ける事約一時間、少しずつ天井が高くなっていく。




「?!!」




すると突然目の前が開け、目の前に雪原が広がっていた。



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