第31話 再びEDOへ
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村に戻ると大勢の人が待ち構えていた。村人総出で出迎えてくれたのであろう、100人以上はいる。先頭にはマスオさんがいる。オレに近寄ると、心配そうに聞く。
「どうでしたか?」
「はい。討伐完了です」
すると、大きな歓声が挙がった
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「良かったあああああああああ」
「これでまた漁に出られるぜえええええええええ」
良かった良かった。
と、2人の美少女が駆け寄ってくる。サザエちゃんとワカメちゃんだ。
2人はオレの両脇に立ってそれぞれの側からほっぺにチュウしてくれた。
サザエちゃんは、オレの右のほっぺに情熱的にブチューっと。
ワカメちゃんは、オレの左のほっぺに恥ずかしげにチュッと。
(今日はオレの人生最良の日だ。もう、一生ほっぺを洗わないぞ)と誓った。
村人達は、オレ達2人の帰り道を姿が見えなくなるまでいつまでもいつまでも見送っていた。
「時間はかかったけど、色々といい思い出も出来たし良かったな。」
『ニャ。おいしいお魚を沢山食べられたニャ』
また、いつの日か訪ねてみたいな。
EDOに辿りつく。今回のクエストは2週間以上かかったから、久しぶりに帰ってきた気がする。まずは冒険者ギルドへ向かおう。
ギルドに着き、木の扉を開けて中に入る。
「アヤさんいますかー?」するとすぐに
「はーい」と奥からアヤさんが出てくる。
今日は、Tシャツにジーンズとラフな格好だ。髪も無造作に後ろで束ねているだけだ。が、そんなシンプルな恰好だと余計に彼女の美しさが際立つ。やはり今日もアヤさんはキレイなお姉さんだった。
「あら、シュウくん。討伐成功したんでしょ?早速、村からお礼の念話があったわよ。」
「そうなんですか?」
「漁業組合の組合長さん、とても感謝していらしたわよ」
そうか。それは良かった。
「じゃあ、恒例の報酬とアイテムの買い取りをお願いします」
とオレはビッグバイトタートルの宝箱を取り出す。
「オッケイ。じゃあ、ちょっと待っててね。」
オレはその辺の椅子に腰かけアヤ姉の精算を待つ。今日は他に誰もいない。
すると、コタロウが『今日はあのウルサイ三人組がいないニャ』と言い出した。
(な、何を言うんだコタロウ)
オレが慌ててコタロウの顔を見た途端、2階からドタドタと階段を下りてくる音が…
「あ、アニキー。シュウのアニキじゃないですか?」
「こんちわっす」
「ちわす」
オレの方に3人が駆け寄ってくる。と、同時にアヤ姉からも声が掛かった。
「シュウ君、お待たせー。計算終了したよー。討伐報酬が250万、ビッグバイトタートルの甲羅なんだけど、コレ防具の材料として凄く人気高いんだよね。だから300万で買い取りさせて貰うね。締めて550万イェンでーす。」
(あ、なんかデジャビュ感がすごいんですけど)
すると3人がまた顔を見合わせて「すげーーーーーーーー」と騒ぎ出した。
その後、オレとコタロウは3バカと一緒に、EDOの街を歩いていた。タクヤが「アニキ、松田屋がまたまたすごいんですよ」と言うからだ。
タクヤの言うことは、EDOの街を歩くとすぐに分かった。松田屋の“安い 早い うまい”ののぼりが至る所に立っているからだ。
「松田屋が、沢山出来たので今まであった牛鍋屋はどこも閑古鳥が鳴いているらしいですよ」とタクヤ。するともう一人の弟分のヤスが
「それで、松田屋のマネをする店が出てきたんですが、どこもイマイチで」
(コウノスケさんの腕は確かだからなあ。そうおいそれとは、マネできんよ。)
そんな事を思いながら松田屋本店まで来た。やはり大行列が出来ている。様子も見たいし並んでみるか。
待っていると気付くが行列の捌けが物凄くいい。どんどん前に進んでいく。最低1時間は待つつもりだったが、15分も並ばないうちに店内が近づいてきた。すると、店員らしき女性がメニューを持ってこちらに来る。
「いらっしゃいませ。お客様は何人様でしょうか?こちらに並んでいらっしゃる間に、ご注文を伺います。どうぞこちらをご覧ください」
淀みなくそれだけ言うと洗練された所作でオレ達にメニューを渡す。
「並2つと特盛3つ、それと卵を5つお願いします。」と言うと、
その女性がニッコリ笑って「ご一緒にお味噌汁はいかがですか?」と言うではないか
メニューを見ると お味噌汁 1杯100イェンとある。
モチロン、これも5杯頼む。(コウノスケさん、オレが言った事覚えててくれたんだな)
ほどなくして、店内に案内される。席に着くとすぐに湯呑に入ったあったかいほうじ茶が供される。それを飲んでほっと一息ついた頃、
「お待たせしました」
とお盆に乗った牛丼と卵、それに味噌汁が運ばれてきた。
これ完璧なオペレーションじゃねえか。コウノスケさんの教育スキルぱねえ。
まずは味噌汁を一口、やはり美味い。薄味だがダシが効いてて香りも良い。
次に牛丼に卵を割りいれてかき混ぜる。そして一口。
「やっぱり美味いなあ」
『ニャア』
最初に作ったときよりも味が洗練されて、美味くなっているな。こりゃ繁盛するのも頷ける。
あ、そうだ。コウノスケさんに会って行こう。まだ色々話すことがあるからな。
オレはタクヤにお金を渡して会計をお願いする。
「アニキ、どこ行くんですか?」
「ちょっとここの店主と話があるから、ここで失礼していいかな?」
「分かりました。アニキごちになりました」
と3人からまた頭を下げられる。オレは(店内でこんな事されたらオレがなんかヤバいヤツみたいじゃないかー)と思いながら、そそくさと店の奥に向かった。
「コウノスケさんいますかー?」
「あ、その声はシュウさんですか?お待ちしてましたー」
コウノスケさんが奥からすっ飛んできた。
まずは、今の店員さん達の接客スキルを褒める。すると「イヤー。まだまだですよ。彼らは、まだうちの店に入って日が浅いものですからしょうがないんですけどね。」
あれでまだまだとは、恐れ入った。コウノスケさん曰く、接客スキルが一定の水準に達した店員は研修終了で他の店舗に異動させるとのこと。
「今は何店舗あるんですか?」
「はい。昨日開店した店舗含め、全部で21店舗になりました。」
わずか一か月足らずでそこまで増やすとは、すごい商才だ。
「なるほど、まだまだ店舗は増やせそうですか?」
「イエ、食材の確保はなんとかなりそうなのですが、それを任せる人員が不足してまして」
さすがコウノスケさんだ。飲食店経営は、人員の確保が一番大切ということをよく分かっている。
「コウノスケさん。出店は、今後慎重に行うことにしましょうか?急に増やして品質を落としてもいいことありませんから。」
まずは、“松田屋”というブランドイメージを創り上げる事が大事だろう。
次に、今後の戦略について色々とアドバイスする。ライバル店も出現するだろうし、お客を飽きさせない仕掛けが必要になってくるからな。と言っても現世で牛丼屋がやっていた事をそのまんま、伝えるだけなのだが。
「はい。分かりました。いつもながら素晴らしいお考えです。」とコウノスケさんはしきりに感心してくれるが、その理解力の方が賞賛に値すると思う。
「それと、コレは飲食店の経営とは別の話なのですが…」
とオレは話を続ける。
「お米を仕入れる時は、どうやっていますか?」
「はい。それは色々な伝手を頼っているので、いくつかパターンがありますが」
基本的には馴染みの農家から直接買い付けるが、ない場合にはよその農家を当たったり米屋から買ったりするそうだ。
「特に店舗が増えると品質の維持が大変なんですよねえ」
そうだろう。そうだろう。ヒノモト国民は、コメが大好物だ。その品質には人一倍うるさい。
そこでオレがした提案とは
「コウノスケさん。いいお米があったら、いくらでも買い取りましょうよ。」
「え?なぜですか?」
そう。オレは松田屋に米問屋を経営させるつもりなのだ。
なぜかこの世界には米問屋がない。米屋はあってもそれは個人客が買いにくる程度で、個人商店レベルの規模だ。つまり富が一か所に集中してなく、個人個人に分散している経済構造なのだろう。
コウノスケさんの目利きと今の松田屋の牛丼の売り上げがあれば、良い米を買い占めてアイテムボックスにストックし、市場に米が不足した時に高く売りつければ大儲けできるハズだ。そしてゆくゆくは米の相場を操り、市場を独占するのだ。
「なるほど考えた事もなかった。やはりシュウさんは素晴らしい」
オレの説明をまたまたすぐに理解するコウノスケさん。本当に有能な人だ。すると、
「あ、忘れてました。最初に言うつもりだったのですが、スミマセン。シュウさんにお渡しするお礼なのですが」
とコウノスケさんが、風呂敷に包まれたモノをオレの方に持ってくる。
「ご確認ください」
包みを開くと10,000イェンの札束が2つ出てきた。
え?つまり200万イェンってことだよな?と言うことは??
オレの所持金、1,000万イェン超えたんじゃ?




