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第311話 最後の戦いその9

「ぐ、紅蓮丸!!!」



シュウの渾身の攻撃は魔王に間一髪で防がれた。そして、その手に握った紅蓮丸の刀身があろうことか真っ二つに割けその半身が宙を舞い、そして、地面へと刺さる。半身を失った紅蓮丸はその残った半身も粒子となって宙へと舞っていく・・



「剣技でも吾輩が圧倒できると思ったが、そうでもないのか。いや、危なかった・・」

「な、なにを?」



紅蓮丸を失った怒りの矛先へと目を向ける。その当の本人であるが、胸の当たりを押さえてうずくまっている。押さえられた胸からは大量の出血が、そして反対の腕に握られた杖は主の命を救うという役目を終えいま粒子となって消えていくところだった・・



「それにしても、矮小な人族が作った刀が吾輩の杖を砕くとはな・・」

「お、お前、まだいうか。オレの紅蓮丸を・・」



激昂した次の瞬間、シュウの胸に巨大な悲しみの感情が去来する。説明がなくても分かる。これが魔王との共感覚だという事は。つまり、魔王にとってもあの杖には特別な想いがあったのだろう




「お前、素直じゃないな」

「ふん、どう取り繕っても貴様には筒抜けじゃな。意外と不便だのう、この感覚は」

「強がるなよ、弱くみえるぞ」

「たわけ」



平静を装い会話を続けお互いの様子を伺う。紅蓮丸がなくなったことはショックだ。魔王にも相応のダメージを与えたとはいえ、それで相殺されることはない


だが、ここはグッとこらえる。じゃないと、紅蓮丸も浮かばれないハズだ



(いままでありがとう、紅蓮丸)



宙へと消えていった粒子を見送りながら、紅蓮丸へと想いを馳せる。が、それも一瞬のことだ。すぐに魔王へと向き直り攻撃体勢をとる。もちろん、魔王も既に迎撃準備は整った様子だ




「ふふん、貴様。最大の武器を失ってどうやって吾輩と戦うのだ?吾輩は一切の情けをかけんぞ。覚悟しろ」



尋常ではない魔力が魔王の周りに集約されていくのがわかる。なんども使った例えであるが、まるで強力なダクトに煙が吸い込まれていくような感覚だ。だが、今回はその規模が全く違う。いままでが通常の焼肉店、まあファミレスサイズの規模に例えると今回はドーム型球場くらいのサイズ感だ




正に圧倒的である。最後の敵、魔王が覚醒し、そしてその全てを賭けた攻撃がいま、自分に向けられる。自分の最大の武器である「紅蓮丸」はもうない、アイの手助けも。絶体絶命のピンチだ。だが、不思議と焦りはない



「おい、お前こんなところでそんな物騒なものぶっ放したらどうなるかわかってるんだろうな?地球どころか太陽系まで破壊するつもりか?」

「ふん、わかっておるわ」



途端に、視界がグニャリと歪む。何度も経験したが、魔王が空間系の魔法を使ったためだ



「ここなら、誰にも気兼ねなく思いっきり決着がつけられるだろう」

「ああ、申し分ない。よし、最後の決着をつけよう」



魔王には地球を破壊する気などない。自分のルーツである地球をみたい、行ってみたい、それだけでここまで転移したのだ。いくら膨大な魔力を持った魔王と言えど、相当な魔力消費があったはずなのに・・・




「なるほど、ここなら気兼ねなく暴れられるな」




周りにはなんにも無い空間、文字通り何も無い。無だ、宇宙空間ですらない完全に世界から隔絶された真っ暗な部屋、いや、部屋と言ってもいいのだろうか?一体どれくらいの広さがあるのか?そもそも広さという概念さえもない、無限に広がっているような、そんな空間



「暴れられる?きさま、これを見てもまだそんな強がりが言えるのか?」



ゴゴゴゴゴゴ・・・



魔王の頭上に巨大な火の玉が、いや、玉というのは表現が正しくない。天体レベルの球体、と言えばいいのだろうか?真っ暗な空間に浮かんでいるためその巨大さを錯覚しそうになる



「超高熱、超重量、超質量の天体だ。これを貴様にぶつけてやる。いまは時空系魔法で時を止めているが、時空系魔法を解いたらあっという間に内部で核融合反応を起こし超爆発を引き起こす。その後、実体を失い、その拠り所をがなくなった重量だけが中心へと収縮されブラックホールとなるぞ。貴様は超高熱によって消し炭になったあと、超重力の中心へと閉じ込められ永久にでてこれなくなる」



なぜ、そこまでするのだ?いや、そこまでしなければならないのか?なぜなら「魔王因子を持った人間は一人でなければならない」からだ。どちらか一方が完全に消え去らないと、どちらかの勝利が確定しないからなのだ。では、なぜそれがわかるのか?




「DNAに刻み込まれているからだ」




覚醒したからこそハッキリとわかる。自分たちは共存できない。ということが






ゴゴゴゴゴゴ・・・





「ふむ、さすがは吾輩の片割れ、という事か」




シュウの頭上にも超巨大な球体が浮かび上がる。魔王の球体と同じものだ。示し合わせたわけではない。だが、全く同じタイミングで巨大球が前方へと飛んでいく。お互いに向かって・・




ズガガガガガガガガアアアアアアンンン




空気も無い、完全に無な世界。音も振動も伝わらない。はずであるが凄まじい衝撃が走る。シュウと魔王、お互いの中間距離でぶつかった球体はそれぞれが、お互いを飲み込もうとしている。が、完全に同じ威力を持っているために奇跡的にその場にとどまり続けている




「ほう、吾輩の全魔力を受け止めるか」

「オレも全魔力を使ったからな。だが、それでもお前の魔力には敵わなかったハズだ」

「なるほど、少し時空魔法に魔力を使いすぎてしまったようだな。いままで魔力が枯渇した経験がなかったのがここにきて仇となるとは」

「さすがの魔王様もこんな経験は初めてってことだな。まあ、そうか。自分自身と戦っているようなものだからな」

「だが、このまま負ける訳にはいかないのだよ。覚悟は決めたぞ。この戦いに全て賭ける。もう、二度と魔力は使わぬ。お前に吾輩の全てをぶつけてやろう」

「お、おまえ・・なにを?」


魔王の両腕に更に魔力が宿る。そしてその腕から発射された魔力が前方で拮抗している球体と球体へと届くと





ゴオオオオオオオ・・





「っく、まだこんな力が。ダメだ。オレの全魔力を以てしてももう耐えられない」




勢い付いた魔王側の球体がどんどんと力を増し、シュウの発した球体を飲み込みにかかる。拮抗状態が崩れシュウの球体が正に飲み込まれようとしたその時、急に力が増すのを感じる




『ボクには魔力がない。けど、全ての闘気をご主人様にあげるニャ』








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