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第29話 漁師村での宴会

本日ブックマークして頂いた方、ありがとうございます。ブックマーク数が増えていくのは本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

漁業組合の組合長であるマスオさんの話では、暫く雨が続くとの事だった。外を見てみると確かに、少し曇ってきたか?雨が降ってはビッグバイトタートルは出てこないだろう。


一旦EDOに戻ろうか、とも思ったが万一の事もあるので待機しないといけない。受注したクエストは討伐依頼だが、村人の護衛も依頼内容には含まれるのだ。



マスオさんが、「この漁業組合の建物には、お客様が宿泊できる部屋がありますので遠慮なく使って下さい」と言うのでお言葉に甘えることにする。


また、アナゴちゃんみたいに浜辺に出ちゃう人もいるかもしれないので、「浜辺には絶対近寄らないよう、もう一度村の人達に通達してください」と念押ししておいた。



危険防止ってのもあるが、コタロウが戦っている姿を見られるのもまずいからな。




「さてと」



日が暮れる前に、オレ達はもう一度浜辺に行ってみることにする。




ほどなくして浜辺に着いたが、さっきと様子は同じだ。人っ子一人いない。



「なあ、コタロウ?」

「ニャ?」

「ビッグバイトタートルがどこにいるか分かるか?」



そう、オレはコタロウのスキル“感知”で探ってもらおうと浜辺に来たのだ。

コタロウは聖獣ヴァージョンになり、海の方に向かって気配を探る。



『ニャ、いたニャ。』

「本当か?」



さすがである。コタロウ曰く、かなり深いところにいるそうだ。水深は恐らく200mくらいの場所でじっとしているらしい。更に



『かなり大きなカメだニャ。僕よりも随分大きいニャ』

「え?そんなに?」



オレは、普通のカメが大きくなったんならせいぜい人間くらいの大きさだと思ってた。それでも随分大きいカメなのだが。まさか、コタロウよりも大きいなんて。



「じゃあ、引っ張り出すのは?」

『ムリニャ』



やっぱりムリだよね。と思ってたらパラパラと雨が降ってきた。マスオさんの予報通りだな。オレは風魔法でコタロウは闘気で雨を回避することができる。傘もカッパも必要なしで雨の日の戦闘も問題ないのだが、肝心のビッグバイトタートルが出てこないんじゃなあ。



しかたなく、オレ達は村に帰る。漁業組合に着いたらマスオさんが待っていた。



「シュウさんお待ちしておりました。今夜はささやかな宴をご用意しておりますので、是非お楽しみください」

「それは、ありがとうございます。では遠慮なくお呼ばれいたします」




まあ勇者が村の魔物を討伐する前日の夜、定番イベントだもんな。




そのまま、漁業組合の中にある宴会会場へと案内される。中はかなり広く全面畳張りだ。新しい畳の良い匂いが漂ってくる。実はこの村って結構、お金あるんじゃないか?




中には漁業関係者と思われる村人達が30名ほど集まっていた。オレが顔を出すと



「おおおおー」

「待ってましたー」



と歓声が挙がる。もう出来上がってんじゃねーのか?と思うくらいテンション高めだ。



マスオさんが、小声で(シュウさん。さっきの説明もう一回みんなにして頂けますか?)と言うので頷く。するとマスオさんもいきなりテンション高めに、



「みんなー。ここにいらっしゃる超一流冒険者のシュウさんが、あの憎きビッグバイトタートルを退治してくれると約束してくれたぜー」と大声で叫ぶ。え?なんかキャラ変わってない?



それを聞いた人々は一気にヒートアップする。



「ひゃっほうー。さすがEDOから来た冒険者は違うぜえええええ」

「これで、また漁が出来るー。ありがたや。ありがたやー。」

「ステキー。尊敬しちゃうわー」



リアルで初“ひゃっほう”聞いたなーと思ってたら、マスオさんが何か言えと目配せしてくる。



ムリムリ。シラフでこのテンションに付き合うのは。でも、何か言わなきゃなあ。とみんなの方を見ると期待と尊敬でキラキラした目でオレを見つめている。あ、頭の中真っ白になった。




『シュウさん、今から私の言うとおりに話してください』


救世主のアイさんだ。そうか漁業組合もWiFiエリアだったんだな。マスオさんグッジョブ。



「ただ今、ご紹介頂きました冒険者のシュウです。私はS級クエスト専門で受けており今までの討伐成功率は100%です。」



やや、というかモロ棒読みだったが、みんな真剣に聞いている。



「今回のターゲットですが、本日調査しましたところEDO湾の奥深く水深200メートルくらいのところに棲息しているのを確認しております。それを引っ張り出して退治するのは難しいのですが、ご安心下さい。カメの習性として天気が良い日は、甲羅干しをするため浜辺に出てきます。そこを狙いますので必ず倒してご覧にいれます」



最後の方、前世の首相の演説みたいに不自然に機械的な口調になってしまったが、気にする人はなく、みんな大盛り上がりだった。



「やったあああああああ」

「イカスぜ」

「ステキー」



「ようし、今日は飲むぞー」と宴が始まる。オレは宴会場でのお誕生席、最上の上座へと案内される。オレが一番前で他の村人達が、それを囲むように右と左に分かれて席がある。料理は漁師村だけあって、魚介系がてんこ盛りであった。



とオレが席についてキョロキョロしていると、2人の人が近づいてきた。そして



「サザエでーす」

「ワカメでーす。今日は、よろしくね先生」

「え?ええー??」




ギョっとしてそちらを向くと、若くてきれいな女の子2人が三つ指ついて挨拶していた。


(ああ良かった。オレの想像通りの光景だったら、ちょっとしたホラーだろ。)



サザエちゃんは、現世にもいそうな現代的な見た目だ。少し茶色っぽい髪をポニーテールにまとめている。服装は、Tシャツにデニム素材のミニスカートだ。これも舶来モノなのだろう。



ワカメちゃんは反対に大和撫子風の美少女だった。肩の辺りまで伸ばしたきれいな黒髪はサラサラだ。あわいピンクの浴衣を着ている。



「こんばんは。えっとオレ先生じゃーないんだけど」女性に慣れていないオレがドキドキしながら言うと



「だってマスオさんが、そう言えって」



コラ、マスオ!自分の嫁と義理の妹になに言わせとんじゃー。



「え?マスオさんの奥さんですか?」と聞いてみる。

「え?やあだあ。まだ、結婚なんてする年じゃないんですけどー。それともそんなに年とって見えたの?先生、ひどーい」



聞けば2人とも漁師の娘だが、マスオさんと血縁関係はないそうだ。一先ず安心した。



「じゃあ、カンパーイ」



と酒を酌み交わす。見れば周りも勝手に始めている。あまり堅苦しい会ではないようだ。



「シュウさんどうぞ。」とワカメちゃんがオレに酒を注ごうとする。

「イヤ。まだ入ってるから」と断ると

「えー?私の酒は飲めないって言うのー?」と拗ねる。



困ってコタロウの方を見ると、大量のごちそうに囲まれ脇目も振らずに、ハグハグと食事の真っ最中だ。



「え?2人とも未成年じゃないの?」未成年にお酒飲ませたら犯罪だろ?

「ん?なんのこと?お酒なんて子供の頃から飲んでるけど」

「うん、そうそう。お父さんたちが、漁から帰ってきたらいつも宴会するもんねえ」



さすが、漁師の娘さんは豪快だな。



モチロン、前世でも夜の社交場に行った経験はある。ところが、そこでのオレの役回りは一番下座で上司の酒を作ることだった。女の子も上司にしか付かずオレはそんな女の子と会話をした事さえなかったのだ。



それが、今やこの待遇。戸惑いが隠せずに、ぎこちなくお酌をして貰う。それにしてもこの女の子2人もの凄く酒が強い。子供の頃から飲み慣れているだけはあるな。釣られてオレも酒が進む。気が付いたらベロンベロンになっていた。



「シュウさーん。魔法得意なんでしょ?何かやって見せてよー」

「あ、私もみたーい」



という2人のムチャぶりに今までになかったほど、酔っぱらって気が大きくなったオレは、



「まかせとけーい」と立ち上がる。そして大声で叫んだ。



「みなさーん。今から不肖私めが一発芸を披露しまーす」




すると会場がおおいに盛り上がる。



「いいぞー。やれやれー」



オレは会場の真ん中まで進んで行き、女の子達に手招きする。2人は、オレと違って堂々としたものだ。周囲に手を振ったり投げキッスまでする余裕がある。


2人の女の子を目の前に並ばせた後、オレは両掌に魔力を込め小さなファイアーボールを100発ほど撃ちだす。「おおおー」と周囲にどよめきが起こる。


オレが出現させた100発のファイアーボール達は、まるで生き物のように彼女たちの周りをぐるぐると取り囲みだした。その様はまるで、前世の水族館でみた巨大水槽の中のイワシの群れのようだ。


「ハイッ」とオレが声を掛けると、今度は2人の頭上で回り出す。その頭上で回っている火の玉が1つずつ彼女達の前に並んでいき、最後には大きなハート型を作り出した。


観客はため息を洩らす。まだまだこれからだ。



「ハイッ」


次は2人を取り囲むような球状に配置する。そして



「いけー」



火の玉達が次々に彼女達を襲う。



「ヒイー」観客達は、悲鳴を上げて目を覆う。



あわや2人が火の海に包まれる。とおもった瞬間、



「ジュウウウウ」と言う音が響く。



いつの間にか、2人は水の球に覆われていた。その球に火の玉は、次々と飛び込んでいき「ジュッ」という音と共に消えていく。そして最後の火の玉が消えた瞬間、



「パシャっ」



二人を覆っていた水の球がはじけて2人が出てくる。何の打ち合わせもしてないのに、2人は当然の様に両手を上げた後、深々とお辞儀をする。本当に大したものである。



「ブラボーーーーー」




拍手喝采で、みんな大興奮だった。この様に宴の夜は更けていくのであった。




次の日、昼近くに起きたオレは頭が割れるように痛い。



「イテテテテ」完全に二日酔いだった。


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