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第301話 選択

「そ、その声はまさか?」

「にゃあ?」



え?そんな?オレの最愛の妻は、目のまえであのにっくき魔王に、そう、魔王に・・



『こら、なーんか勘違いしとらんね?』

「え?なにが?」


どういうことだ?いま、オレに念話してきているのはアイのようだ。だが、もうアイは、アイは・・



『なにハトが豆鉄砲喰らったようなカオしとっとよ。魔王にウチのアバターを攻撃されたあと、通信も妨害ジャミングされて大変やったとよ。ここまでは魔王の妨害ジャミングは届かんけんやっとで通信できたっちゃけど』

「あ・・」

『あ、じゃなかやろ?ひょっとしてウチが魔王にやられてしまったって思っとると?』

「い、いやあ」


そ、そうだった。さっきは早とちりして逆上してしまったがアイの本体はあくまでも「電脳界」にあるんだった。それで、さっきやられたと思ったのはアイのアバターだったんだ。もちろん痛覚などの器官は繋いではいるけどもいざとなれば緊急脱出ベイルアウトできるんだったよな



「あ、あい~。もう、会えないかと・・」

「にゃあん」

『再会の喜びに浸りたいのはやまやまやけど、まずはどうするか?決めんとね』

「あ、はい」




再会の喜びもつかの間、シュウはまたいきなり現実に直面させられる。即ち「魔王と戦うか?どうか?」だ。いつもどおりアイに決めてもらうつもりだったが、アイからの返事は予想外の答えであった



『実はね、魔王との戦いを幾通りもシミュレートしてみたと。それこそ無数のパターンあるけん、膨大なデータを並列処理してみたんやけどね。でも、それでも全ての可能性を検証するには時間がかかり過ぎるんよ』

「うん、いつもありがとう。それでどんな結果がでたの?」

『戦って勝つ確率は低い。けどね、それがどれくらい低いかは結局わからんかったんよ。ひょっとしたら限りなく0に近いかもしれないしもしかしたら半々くらいかもしれん。何しろ、魔王の能力値を直接計測することができんけんねー。』

「ふんふん」


アイの説明を要約するとこのまま戦闘を避けた場合、魔王は獣族を滅ぼして世界が終わるまで魔族の支配する星にする公算が大。かと言ってシュウが魔王と戦ったとしても多分負ける。更に言うと仮に勝ったとしてもこの世界が滅ぶのを止めることはできないだろう。ということだった



「うん、ということは。つまり?」

『最後の戦いやろ?男らしくシュウが決断せんね』


なんと、最後の最後に自分にこんな場面が回ってくるとは・・だが、よく考えてみよう。相手はあの正当な勇者であるジョーでさえ倒した正真正銘の化け物だ。自分なんかが立ち向かえるものだろうか?


「にゃあ?」

「うん、そうだねコタロウ」


そうだ、答えは決まっているじゃないか。だって、ここで引いたら男として、アイの旦那として、絶対にダメだ


「もちろん、戦うよ。アイ」

『よし、シュウならそう言うと思っとったよ』

「うん」

『あ、それと一つ気になっとることがあるんやけど』

「うん?どうしたの?」

『エルフの隠里は別次元にあるけん、魔法って使えんやろ?』

「え?そう言えば、そうだったかも・・」


そう、この次元では全てのゲームキャラは本来存在しないはずなのでもちろん特殊能力どころか、ステータスも基本性能しか使えなくなっているのだ。シュウたちがさきほどエルフの戦士たちに簡単に捕らえられたのも全てそのせいであったのだが、本人たちは全く気付いていなかった


『気付いてなかったん?そんでコタロウくんも、にゃあしか言えないのになんでさっきから普通に話せとると?』

「え?コタロウ?」

「にゃあん」

「うん、そうだよね。コタロウ」

『やけん、なにがそうなん?』

「あ、ごめん。問題ない、ってさ」

『ま、まあ問題ないならよかとけど』


少しだけ、納得がいかないアイなのであった








「話は終わったか?言っておくがキンジロウはもう戦わせんぞ。あいつは優しすぎるんじゃ。もう、二度と戦わせたくない」

「はい、コジロウはとっても優しいんです。ボクももう戦わせたくない」

「にゃああん」



いままで冷ややかだったエルフ王の目つきが優しくなる



「そうか、キンジロウのやつ。よい仲間に恵まれたな」



途端にシュウとコタロウを光の粒子が包み込む。光の粒子はこの世界でも何回も見かけた。だが、この粒子はなんか見たことあるぞ。あ、そうだ。さっきコジロウが俺たちをここに連れてきてくれたときと同じなんだ


「それはキンジロウが残していた戦闘エネルギーじゃ。それにささやかながら私の加護もやろう。特別じゃ」

「王様・・」

「にゃあ」


なんかとっても温かい、それだけではない、なんか力が漲ってくるぞ



『ようし、次はウチの番やね。シュウの武器をドーンとバージョンアップさせたけん。「紅蓮丸マークⅡ改」になっとうよ』

「あ、あいさん?そのネーミングセンスは・・」

『カッコいいやろ?ウチも気にいっとうとよ』

「あ、はい」

『あと、「剣術スキル」もバージョンアップさせとるけんね。ファイルを展開せんね』

「うん」


メールボックスにファイルが2つある。うん?なんだ?


『あ、メッセージを預かっとる。そっちを先に見て』



シュウが返事をする前にファイルが勝手に開いていく



『おい、お前。久しぶりだな』

「あ、ゼウス様」



そうだ、戦闘の連続で忘れそうになっていたがこの世界で唯一のプレイヤーであるゼウス様だ。相変わらずのイケメンなのだが、それでもどこか憎めないヤツだ



『今はお前と直接話せないらしいからな。なんか、そっちはプレイヤーは干渉できないとかなんとか言われたのでメッセージを送るぞ。というか、ちゃんと見てたからな。お前、シャカの生まれ変わり?か?よく分からんが。どうりで話しやすいと思ったわ。そしてなんか見たことあると思ったら魔王の若いころそっくりだったんだな。思い出したぞ。ま、お前がシャカの生まれ変わりと知って安心したぞ。お前と魔王、どちらもシャカの生まれ変わりなんだろ?うまいことやってくれよ』

「ぜ、ゼウス様・・」



相変わらず、何も考えてなさそうだった。こんな世界が終わる時にでもブレないなあ・・



ブウン・・



最後のファイルを開く、と脳内の片隅にアイの上半身がワイプのように浮かび上がる。そう、よくテレビ番組でロケ先を見ているスタジオの芸能人が映りこむアレだ



『ようし、いくぞー』




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