第300話 キンジロウ その2
「私がかわいそう?」
記憶を辿ってみるが、こんなことを言われたのは初めての経験だった。自分がかわいそうだと?
「だって、王様はずっと独りぼっちなんだもん」
「そうか、独りぼっちか?そうだな、そうかもしれん。だが、そんなの慣れているよ」
キンジロウは自分のことを忘れられるのが悲しくて泣いてるのではなかった。あろうことか王である自分の身を案じてのことだったとは。こんな幼子に自分のことを可愛そうだと言われる。だが、なぜかそれが心地よかった
「なんで王様、笑ってるの?」
「うん?そう、か?」
思わずふっと笑ってしまっていた。幼子から心配される?このわたしが?初めての経験だったのだ
「でもね、だいじょうぶだよ」
「うん?なにが大丈夫なんだ?」
「王様が未来でいつか一人にならないような、そんな魔法をつくるから」
「そうか・・ありがとう」
幼子の戯言、普通ならそう片付けられてしまう。だがそんな一言をキンジロウは実現させてくれた
「おお、また魔王が無事に封印されたみたいだな」
「うんうん、キンジロウ像が建ったからな。間違いないよ」
”魔王を封印する度に自分の像が建つ魔法”
その後、エルフ王は魔王が出現しそして封印される都度現れるキンジロウ像によって彼との大切な思い出を思い出し幸せな気分になった
(ありがとう、キンジロウ)
◇
魔王の弱体化に大部分の力を失ってしまったキンジロウであるが残った力でまた獣族へと転生する。事前の調査では魔王に埋め込まれた因子は不完全なもので、その片割れが存在する。そしてその片割れは地球に存在する可能性が高いこと。地球での潜入調査にはネコというこちらの世界でのネコ族と見た目がほぼ同じ種族として潜入するのが効果的なことが理由であった
そして、その後エルフの王の調査によってその魔王の片割れが生存する場所と時代が確定しネコ族へと転生した。ジロガとして・・
◇
ジロガとして転生した後、覚醒によって全てを思い出したキンジロウはエルフ王からのメッセージを受け取る。即ち「地球の日本という国に行け」と
ところが、ここで想定外の出来事が起こる。本来地球に潜入するのはキンジロウ一人のはずだった。だが双子の兄弟としていつも一緒だったタロガと過ごしていくうちに離れることができなくなってしまったのだ。そもそも本来であれば1匹しか生まれないハズの聖獣が2匹生まれたこともおかしい。それも想定外だった
『にゃあ、タロガ兄ちゃん。一緒にいくにゃあ』
そうして2匹は地球の日本に住むシュウの元へと転生したのであった
◇
「おーい。コタロウ、コジロウ。今日からここがお前たちのウチだぞー」
転生し記憶を全て失っていたコジロウであるが、魔王と同じ姿かたち、そして同じ因子を持つシュウに対し本能的に極度に警戒心をもつ。が、それもすぐにコタロウ兄ちゃんが払しょくしてくれた
『にゃあ、コタロウ兄ちゃん。あいつは悪いヤツだにゃあ』
『大丈夫だにゃ、ご主人様はとっても優しいにゃ』
ネコ種を盲目的に愛する日本人、その一員であるシュウも例外なくネコを猫かわいがりするのであった。そうして、魔王の片割れであるシュウにすっかり懐いてしまったコジロウであったが全てを思い出したあと魔王と戦うことはもはや出来なくなっていた
(にゃあ、ご主人様、コタロウ兄ちゃん。どうか死なないで。それだけがボクの願いだにゃあ)
◇
「さてと、これがこの世界の真実だ。どうする?」
目のまえの銀髪ツインテールの幼女エルフが答えを促す。シュウはたった今、聞いたばかりの情報を精査するが完全にキャパオーバーだ。だが、その前にどうしても聞かなければならないことがある
「あのう、コジロウ?はどうなったのでしょうか?」
「にゃあん」
コタロウもそうだそうだ、と言わんばかりに相槌を打つ。エルフ王はまさかの質問返しに一瞬虚を突かれたが、にやりと笑う
「キンジロウ・・あいつはとても優しいヤツだ。本来は立ち入ることができないお前たちという部外者をこの隠里へと呼んだことで自分の存在は削除される覚悟だったのだ。だが、させるかよ」
「え、では?」
「にゃ?」
「ああ、以前のあやつの能力とは比べるべくもないがこの隠里にかくまっておる。じきに目を覚ますだろう」
「こ、こじろう・・」
「にゃあーん」
そうか、コジロウと今生の別れを覚悟していたのだがなんとか生きていることがわかった。シュウとコタロウは安堵のために泣きそうになる。が、ここで対峙しているエルフ王の態度がかわる
「おい、ここまで話したのじゃ。どうするか早く決めよ。魔王と戦うのか?それとも全面降伏か?どちらにせよお前たちはこの隠里には招かれざる客じゃ。すぐに追い出すからな」
「え?え?」
いままでキンジロウとの昔話でどちらかというと和やかなムードだったのが一変し、シュウは言葉に詰まる。が、その時またも思いがけないことが起きた
『なんばしよっとね、はよう決めんね。ウチの旦那やったらそんなのバシッと決めちゃればよかやん』
「え?」




