第28話 漁師村にて
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「こんにちはー」
漁師村に着き村人に話しかける。村には、沢山の家が立ち並んでいる。意外と大きな集落だ。ここでEDOっ子たちの食卓にのぼる魚介類を全て供給しているとなると、これ位大きくなるのだろう。この世界では、街といってもいいくらいの規模だ。
「あ、ひょっとして冒険者の方ですか?」
「はい。そうです。」
村人も察しがいい。討伐依頼を出した件については周知されているようだ。
「組合長がお待ちです。ご案内しますのでついてきて頂けますか?」
漁業組合の組合長のところへ案内してもらう。
その村人の後をついていくと一際大きな建物の前で止まる。これまた大きな看板には「漁業組合」と書いてあった。
建物の中に入っていくと「組合長室」と表札がある部屋の前まで案内される。
案内してくれた村人が「コンコン」とドアをノックすると、中から「どうぞ」と声がした。村人がそのままドアを開きオレとコタロウを招き入れる。足を踏み入れると部屋の中は、簡単な作りではあるが応接セットと執務机のようなものがあった。
中で組合長らしき人物が立って出迎えてくれる。
「ようこそいらっしゃいました。組合長のマスオと申します」
「冒険者ギルドから来たシュウとこちらはコタロウです」
マスオさんの家族構成などの個人情報が非常に気になったのであるが、そこは聞かずにグッと我慢する。マスオさんはがっしりとした体形に精悍な顔つきをしている。日に焼けて真っ黒なまさに海の男という見た目であった。
中肉中背で草食系なオレよりもよほど戦闘力が高そうだ。
ところが、依頼主はそんな事は全く気にならないようである。そもそも冒険者の実力は見た目に左右されないし、特に魔法が攻撃手段の場合には全く関係ないからだ。更に言うとEDO冒険者ギルドの依頼成功率は80パーを超えているそうで信頼と実績がある。オレの事をプロの冒険者として扱ってくれているのだ。
おれは応接セットに勧められるまま腰を下ろした。その横でコタロウは丸くなっている。
「不作法でスミマセン。」
「いいですよ。彼も大事な戦力なのでしょう?」
「はい」
と言うか主戦力なんですけどね。マスオさんは構わずに話を始めた。
元々バイトタートルはソコソコの数生息していたが、被害はそこまで大きくなかったそうだ。ところが、異常に大きくなった個体が出てきてから組織だって行動するようになったらしい。すると定置網の獲物は根こそぎ取られるし、漁に出た船は襲われる。そんなこんなで今は漁業が全く出来ない状態だということだ。
「ウチは漁業で成り立っている村ですから、漁が出来ないと非常に厳しいんですよ。なんとか一刻も早く討伐して下さい」
と頭を下げられる。早く討伐したいのは、こちらも同じなのでターゲットについて色々と話を聞いてみる。ビッグバイトタートルはEDO湾の奥深くに棲息しているらしく、砂浜からは姿を見る事は滅多にないそうだ。ところが船を出すと水中から激しく攻撃してくる。最悪沈められるので誰も船を出せず、今では砂浜に誰も近寄れなくなった。
「うーん。つまり討伐するには何とか陸に引っ張り出すか、こちらが何らかの方法で水中に潜って戦うしかないようですね」
オレはそっとコタロウに念話で聞いてみる
『コタロウ、水中で戦うのって出来る?』
『それはムリだニャ。だって僕泳げないんだニャ』
そりゃそうだよね。ネコだから。
「マスオさん、何とか陸に引っ張り出す方法を考えてみますよ。」
「お願いします」
と言ったはいいが良い策もすぐには浮かばない。オレは聞き込みをするために一旦、建物の外に出てみた。
漁師村だけあって道行く人は漁師っぽい人ばかりだ。片っ端からつかまえて話を聞く。しかし集まった情報はというと、どれもマスオさんから聞いた内容と似たり寄ったりだ。
・漁に出かけたら、いきなり周りに数百匹のバイトタートルが現れ船を沈められ命からがら泳いで逃げた。
・定置網を取り込みに行ったら、獲物が全滅していた
・沖の方で、物凄く大きなカメの魚影が見えた。
といった具合である。
「うーーーん。こりゃー厳しいかなあ」コタロウと話しながら、てくてく歩いていると村はずれまでやってきてしまった。引き返そうと思って踵を返した時、子供たちの声がする。
「やーい。ウソつきー」
「ウソじゃないもん。」
「じゃあ、証拠見せてみろよー」
見ると、一人の子供を4,5人の子供が囲んで何か囃し立てている。
ベタな展開にホッとしながら、オレはその子供たちに駆け寄った。
「何があったんだい?オニイサンに話してくれないか?」
「え?オジチャンだあれ?」
「コラコラ、オニイサンだろ」
とこれまた、ベタな応酬を続ける。予想通り囃し立てられた子がビッグバイトタートルを見たと言ったのを、他の子供たちが信じられないでからかっているという話だった。
おれはその子の前で腰を落とし同じ目線になる。肩に手を置いて、「オニイサンに見たもの全部、話してくれるかい?」
すると、その子は「え?オジチャンに?」えーい。その件はもういいだろ。
5歳くらいのその女の子はアナゴちゃんと言う名前だそうだ。うん。何かオレの価値観を大きく覆す出来事が起きたが、ここは異世界なので受け入れることにする。
気を取り直してアナゴちゃんに話を聞く。ようやく理解者が現れた事に気をよくした彼女は、大喜びでオレに話してくれた。
「えっとね。おひさまが出てたからね。遊びにいったの。そしたらおっきなカメさんがとても気持ちよさそうだったんだよ」
まあ、5歳の幼女だからね。そんなオレはじっちゃんの名に懸けて推理する。つまり、こういうことだろう。
“その日は、とても天気が良かった。テンションが上がったアナゴちゃんは、立ち入り禁止の浜辺まで遊びにいっちゃった。ソコで日向ぼっこをしているビッグバイトタートルを見た”
「謎は全て解けました」
漁業組合に戻ったオレは、名探偵になりきってマスオさんにそう報告した。
「つまり、どういうことかと言いますと、カメは定期的に甲羅干しをします。天気が良い日に浜辺を見張っていたら、必ず現れるハズです」
ドヤ顔で話すオレに対してマスオさんが非常に気まずい顔をする。
「シュウさん。雲の様子や風から運ばれてくる空気の湿り加減から判断すると、これから暫く雨が続きますよ」
さすが漁師さん。気象予報士ばりの天気予報だ。




