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第289話 ジョー対魔王

ゴゴゴゴゴゴ・・・



(ふん、一回死んで少しはマシになったようだな・・)



魔法が存在するファンタジー世界において見た目の強さがその尺度とならない場合が多い。魔力特化型のコジロウが良い例で素人目にはなんの変哲もないネコであるが、実はこの世界でのトップクラスの強者である。ということが往々にしてある



そんなことはいまさら確認するまでもない、いままで長い長い年月の間数えきれないほどの強者を見てきたのだ。一目で強者とわかるものも多かったが、なかにはうまく実力を隠しているものもいた。ながい歴史の中には魔法特化型の勇者もいた。稀にその実力を読み違えるほどの勇者も生まれたのである



「今度の勇者は魔王に勝てるぞ」



ほのかな期待を抱くのをやめたのは敗北が100を超えたころ、そしてその敗北は積み重なっていきいつしかドラゴの心にはさざ波さえたたなくなっていった




だが、いま目のまえにいるジョーのオーラ総量は明らかに魔王を超えている




もう一度言う、「この世界では見た目の強さだけが強さの尺度とならない」




だが、この世界始まってから「魔王のオーラ総量を上回った勇者はいなかった」のも事実なのだ。



オーラ、闘気ともいう強者が身にまとう覇気であるが物理攻撃においてその攻撃力の大きさに比例する。そしていま目のまえに立っているジョーから立ち昇るオーラはむこうにいる魔王よりも明らかに多い。それも圧倒的になのだ



そしてその身にまとうオーラの色であるが、いままでの漆黒のオーラではない。いままでのジョーの纏っていたオーラは禍々しさを感じざるを得なかった。が、いまその身にまとうオーラの色は明らかに違う。真っ黒なのは変わらない。が、黒い中にも神々しさを感じるのだ。そう、まるで上質な黒曜石を思わせる黒光りするそのオーラの色にドラゴは思わずにやりとしてしまう。



(あやつめ、我のオーラの特性までしっかり取り込みよったか)



そう、今までの漆黒のオーラに光り輝くドラゴの龍闘気ドラゴニックオーラを足したようなそんな見た目のオーラなのであった





「・・・ふむ、なかなかのオーラを持っているようだ。が、それがどうした?吾輩にとって格闘スキルはあくまでもおまけ。魔王たる吾輩の神髄は、その魔力にあることをいまさらわからぬわけでもあるまいに」



だが、魔王の反応は至って淡泊なものであった。まるで、興味を失ったおもちゃをみるような目。その瞳にはおよそ感情というものが抜け落ちているようだ



『くっくっく、魔王よ。我には貴様のはったりなど通じぬぞ。つまらん強がりはよすんだな』



そう言い放ったドラゴにじろりと視線を向ける。有史以来なんどもなんども、それこそ数え切れぬほどの戦いを経たのである。表情には出さずとも魔王の感情は読める。というか、初めてだ。こんな魔王は。



今まで、心にさざ波さえも立たなかったあの魔王が高揚しているのがわかる



「クフフフ、そういうお前こそ今までになく浮かれているではないか?」




(え?本当?あれで浮かれてるにゃん?いつも通り、というかいつもよりも不機嫌にみえるにゃん)




人の機微に敏感な獣族のそれも王であるミイナでさえも、わからないその違いではあったが・・・




「なに勝手に盛り上がっているのさ?お楽しみはこれからだよ。そうだよね?」



一点の曇りもない瞳で見つめる先で魔王の視線と交差する。ここで初めて魔王の表情が微かに動く



「よくも吾輩にそんな偉そうな口をきけたものだ。まあ良い。すぐに黙らせてやろう」



魔王は隻腕である左腕を後方へと伸ばす。何もないその虚空が割け次元の狭間がかおを覗かせる。その真っ暗な中へと左腕を突っ込む、そして、再び現したその腕には一振りの剣が握られていた



「お!凄いね、それ」



じろり、ジョーを睨む



「おい小僧、なにが凄いんだ?」



ジョーが凄いと言ったのは、もちろん魔王が手にしている剣を指している。錆びついた何の変哲もない剣だ。兵卒が持っているような大量生産されている感じのやつだ。そんな剣を指してジョーは「凄い」と言った。魔王が訝しげに聞き返すのも無理なかろう



「いや、だってその剣、キミの動きにぴったりくっついているじゃないか?まるで生きている。いや、精密機械並って言ったほうが正しいか?ともかくキミが内包している魔力に完璧に呼応しているので、驚いたんだよ」

「ほう、実力に見合わぬ力を手に入れて舞い上がっているかと思ったがそれなりには落ち着いているようだな」



魔王が使う剣だ、もちろんただの剣であろうはずがない。のであるがよほど高位の魔法職でないとその仕組みまでは気付かない。ましてや、ジョーは戦闘職なのである。そのジョーが正確に自分の剣について理解していることを魔王は多少ならずとも驚いたのであった



「まあよい、どうせこの剣のことは戦えばすぐにわかることだからな。その秘密が知れたとてどうということはない」

「そんなたいした秘密でもないからね」

「ふん、まずはその減らず口を黙らせてやるとするか」

「やってみたらいいよ。やれるものならね」



ジョーはいつもの愛刀「エックスカリバー」を両手で握る。いつもは光り輝いているその刀身が、綺麗に黒光りする



「よし、いこうエックスカリバー」


















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