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第279話 魔王の秘密2

「それでな、サル吉のやつが・・ぐすん」

「そうか、それは可哀そうだったなあ」



ゼウスの取り留めのない話が続く、相変わらずだ。そして、それにほっこりする。だが、ゼウスの星の惨状は笑えない。もちろん、そのことを指摘するのはできない。いくらゲーム上とは言え、お互い神なのだ。自分が担当でない宇宙にアドバイスをしてしまうと、した方もされた方も相応のペナルティが課されるのだ。


ペナルティが課せられても自分の宇宙には大した影響はないだろう。だが、ゼウスの宇宙は恐らく消滅してしまう。そして、それに伴ってゼウスも・・



「それでな、獣族を多くすれば、人族が滅亡するし、龍族は少しでも増やせば、人族はほとんど増えないんだ」



ゼウスの話は続く。自分の星について色々と愚痴を言っているのだが、初心者が犯しやすい間違いを全て犯している。そのため、この星はかなりのエネルギーの無駄遣いをしてしまっている。




そう、もう取り返しがつかないくらいに




「魔法文明」が栄える星であれば、すでに「魔王システム」が発動していなければならない。だが、魔王が台頭するまでもなく人類が地上を席捲しそのまま滅亡するという失敗を繰り返しているだけだ。そしてこのままでは、それを繰り返す未来しか見えない



(そもそもこの状態で「魔王システム」が作動したところで、この宇宙の「エネルギー循環システム」が正常に作動するとは思えない。どう考えてもエネルギー不足だ)




「ちょっと、トイレにいきたいのだが。キミ、案内を頼めるか」

「承知いたしました」

「じゃあゼウス、すぐにもどるよ」

「お、おう。早く戻ってきてくれよ。まだまだ話したいことがある」

「お客様、こちらへどうぞ」



美丈夫の執事に続いて廊下を進んでいく。が、生身の身体であるまいし本当にトイレに行きたいわけではない。シャカは先に進む執事へと声をかけた



「もちろん、今の状態が「詰んで」いることは承知の上だよね?」

「・・・」




ゆっくりとこちらを振り返った執事の表情に一瞬、感情が芽生えた気がしたがまたすぐに無表情になる



「まあ、しょうがない。「案内人」はプレイヤーに直接的なアドバイスはできない仕様だからね」

「我だけでなく、もちろん貴様たちプレイヤー間でも余計なことは言わぬことだ」

「心得ているとも、だがゼウスは私の大切な友人だ。このまま失うのは忍びない。なんとかできないかと思案しているところさ。もちろん、キミだって今の状況は本意ではないのだろう?」

「知れたこと、だが我は与えられた使命を果たすのみだ」

「そうか、不本意なんだ」

「・・・」


やはり表情は変わらない。だが、無言は肯定と受け取っていいだろう



「ゼウス君を私の星へと案内しようと思うんだ。もちろん、賛成してくれるよね?」

「な、貴様?正気か?!」



いままで無表情だった執事が目を見開き、驚愕の表情をする。そのことに少しだけ溜飲を下げたシャカは微笑み返した



「もちろんだとも。私の最高神の権能は全てはく奪され、その後は一介の「神」へと戻る。ペナルティとして2度と上位ランクへ上がることはない。それを心配してくれているんだよね?」

「な、なぜそこまでして我が主を助けようとするのだ?貴様は今後、自分の星にほとんど干渉できなくなってしまうのだぞ?」

「私の星は、ほっといても大丈夫だからね。では、一刻も早く準備をお願いできないかな?ぐずぐずしてると手遅れになってしまう」

「本当によいのだな?」

「ああ、もちろんだとも」


屈託のない笑顔を向ける。が、執事の表情はまたしても感情が読み取れなくなっていた






「す、すごい。シャカの星は綺麗だなー」

「ふふふ、そうかい?褒めてくれてありがとう。私も気に入っているんだ」



楽しい時間とはすぐに過ぎ去るものだ。ゼウスを連れて色々な場所へと案内したシャカであったが、タイムリミットはあっという間に到来した



「色々ありがとう、とても楽しかった。それだけでなく色々とウマイものも食べさせてもらって大満足だよ。是非、また来たいなあ」

「ははは、そうだな。また来てくれよ」



今生の別れであったがゼウスには告げない。それよりも自分の星に足りないものにキチンと気付けてればいいのだが・・楽しそうにこちらへ向かって手を振るゼウスへ精いっぱいの笑顔を向ける



(ゼウス、これでお別れだ。もう2度とキミと会うことはできない。だが、私の命に代えてもキミとキミの星は救って見せよう)



ゼウスの星の執事には例のモノは渡してある。感情の読みにくいヤツだったが、ゼウスを思う気持ちはどうやら一緒のようだ。きっと協力してくれるだろう


あとは、自分の星にも種を蒔いておかないと






シャカが考えたゼウスの星、再生計画はこうであった。まずは、「魔王システム」を発動させること。この「魔王システム」であるがシナリオが「魔法世界」だと発動する



「魔法世界」とは文字通り魔法がある世界線のことだ。成熟するのにある程度の時間がかかる「科学世界」に比べて序盤から安定しやすいのがメリットだ。だが、「魔法」という別基軸のシステムのためにエネルギーを余計に使うこととなる



そして、世界のエネルギーを効率的に使うために存在するのが「循環システム」であり「魔王システム」なのだ



「魔王システム」とはこうだ、まず魔法適正と野心が異常に高い人類が誕生する。もちろん、魔王だ。その魔王であるが当然世界を征服しようと目論み、世界の魔力すなわちエネルギーを集める。魔王の反対勢力は、世界征服などされてはたまらないからまあ、抵抗する。するが、実は絶対に勝てない。勝てないようにできているのだ。だが、勝てないまでも封印することはできる


魔王は封印されてしまうと今までため込んでいた魔力を全て失ってしまい、その失った魔力は世界へと還元される


「魔力」という限られた資源を有効活用するために「魔王」という個人に魔力を集め、それを最終的に還元させることによりできる限りムダな魔力の消費を抑える仕組みという訳だ


もちろん、この「魔王システム」にも弱点はある。そもそも、いくらムダを抑えても0にすることは出来ない。つまり、最終的にはこの宇宙からは全ての魔力は消失してしまうのだ。膨大な時間はかかるが。


だが、それ以前にこの世界は終わりを迎える。なぜなら、復活する魔王がその度に成長するからである。魔王は何度も復活を繰り返す。そして最終的には宇宙が必要としている魔力総量を超える魔力を保持してしまう。臨界点を超えた宇宙は、その存在を保つことが出来なくなり崩壊するのである



「まずは、魔王システム。これを発動させるヒントは十分に与えた。うまく作動させてくれよ」
























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