第274話 遅れてきたヒーロー
時間軸が分かりにくいかと思いますが、272話の続きです
「お、お前はウメ」
「久しぶりだな。ヒノモト国の勇者よ」
頭にターバンを巻いたヨガ行者のいで立ち。聖獣戦でステイツ国代表のジョーと戦って敗れ、そのまま戦線離脱したウメが目のまえに立っている。
ゴゴゴゴゴゴ・・・
ゴーレムが放ったミサイルが着弾した際の土埃が晴れる。と、その晴れ間から大きなカメが顏を覗かせる。
「あ、あいつ。カメ太か?」
「いかにも」
カメ太はジョーに敗れた際、生まれ変わったため縁日で売っているミドリガメくらいのサイズになったハズだ。だが、今は最初に出会った時の巨大ガメサイズになっている。
「すっごく大きくなってるんだけど」
「うむ、それには訳があってな」
ウメが言うにはカメ太の生まれ故郷であるカメック星まで出かけ、最長老様と面会したそうだ。その最長老様から2人とも潜在能力を引き出してもらったとのことだった。
「な、なんか。ご都合主義というか・・」
色々と言いたいことはあるが、それはまあそういうものだと思おう。メイリンが抜けたところにまた新たな戦力が加わってくれた事を素直に喜ぶことにする。
「そ、それにしても・・」
目のまえの親ゴーレムに目をやる。さっき見た時と様子が随分違う、特に見た目が・・
ゴゴゴゴゴ・・
「なんかキラキラしとるね」
「う、うん。なんか、きれいな」
そう、まず見た目の色が銀色から金色に代わっているのだ。それも、すっごいキラキラした金色だ。アレは、そう。シャンパンゴールドというヤツだな。更にサイズが大幅に小さくなった。前は見上げるような大きさだったのだが、今目の前にいるゴーレムはさっきまで戦っていた子ゴーレムと変わらない、つまりちょっと小さめな人くらいのサイズ感なのだ。
シュウは前世で大好きだったマンガに出てくるゴールデンな敵役を思わず思い浮かべていた。
「クククク、そうですか・・・どうやら私のかわいい子供たちは全て倒されたようですね」
な、なんと。さっきまでカタコトだったのにすごい流暢にしゃべりだした。その口調は正にシュウが思い浮かべているキャラそっくりだ。というか声まで似ているんだけど。その後、親ゴーレムはわなわなと震えだした。
「絶対にゆるさんぞ、この虫けらども!!じわじわとなぶり殺しにしてくれるわ」
「?!」
めっちゃ切れてるじゃないかー。こりゃあ、やばい。そしてあいつ絶対変身するよね、それも何回か
「ねえシュウ、あいつ変身するんやろ?ウチ知っとるよ」
「さすがアイ、多分変身するだろうね。3回かな?」
どうやらアイも同じことを考えていたらしかった。だが待てよ、そもそもアイツ最終形態っぽいよね?というかそこから更に修行して限界突破してる感じだよね?そこから更に変身するの?
「ごちゃごちゃウルサイですよ。全く、人をイライラさせるのが上手な人たちですね」
なんて話してたら更にイラっとさせてしまった。
ここで今の状況を整理しておこう
こちらの陣容は全部で9名だ。まずは、この親ゴーレムと戦って時間を稼いでくれたミイナ、リュウガ、フェン。だがこの3名はこれまでの戦いによりかなり消耗しているし、傷もまだ癒えていない
次は、駆け付けたばかりのウメとカメ太。ゴーレムの攻撃を防いだばかりであるが、まだ余力はありそうだ
そして、シュウ、アイ、コタロウ、コジロウ、ドラ。子ゴーレムとの戦いを経た今であるが特にケガもない
その総勢9名でゴーレムをぐるりを取り囲んでいる。小さなゴーレムをだ。客観的にみてかなり有利だろ、この状況
「あ、アイ」
「油断せんごとね、こっちが有利に見えるやろうけどもまだアイツの戦闘力は計れてないんやから」
「う、うん。もちろん。そりゃあそうだよね」
『ご主人様、いま完全に油断してたニャ』
「そ、そんなことないよコタロウ」
『にゃあ、ご主人様はすぐ態度に出るから分かりやすいニャア』
「こ、コジロウまで・・」
ピカーーー
「?!」
何かが光った?そして、なぜかウメがいつの間にか近くにいるのだが?
「させぬぞ」
「なにを?」
決めポーズでゴールデンゴーレムに決め台詞を吐く。いいなあ、オレも一回言ってみたい
ジジジジ
「?!」
ここでシュウはいつの間にか自分の目の前にバリアが張られたことと、そのバリアに弾丸が突き刺さっていることに気付く
「気を付けるごと言うたやろ」
「う、うん。ごめんアイ」
ゴールデンゴーレムの攻撃を喰らっていた。間一髪、ウメが防いでくれたから良かったものの喰らったら大ダメージ負うヤツだ。
「クフフフ、うまく避けたようですねー。でも、まだまだ行きますよ。いつまで避けきれるか見てあげましょう」
ゴールデンゴーレムが右手を指鉄砲の形で構える。すると指先が一瞬光る。
ピカーー
指先からレーザーのようなものを放射している。が、アレはレーザーではない。弾丸だ。それもオリハルコン製の弾丸だ。
そう、このゴールデンゴーレムは指先がレールガンになっているのだ。
ピカッピカピカーーーー
「っく、あいつ連射できるのかよ」
レールガンを溜めなしに撃ってくる。アイでさえ、単発でしか撃てないレールガンをだ。
「さ、させぬぞ」
ウメがテレポートを駆使しつつ狙われた味方のカバーに入る。が、さきほどまでと打って変わって余裕が見えない。
「クフフフ、健気にも頑張ってますがそろそろ苦しいようですねー。焦りが見えます。これならどうかな?」
ビビビビビッ
ゴールデンの指先から数発の弾丸が発射される、その向かった先は・・
「み、ミイナ!!」
「っく、数が多い」
すぐさまミイナの傍らにテレポートしたウメだが弾丸の数が多すぎて全ては防ぎきれない。や、やばい。このままでは疲弊したミイナへと弾丸が当たってしまう。
『にゃあ、させないニャア』
『ボクもいるニャ』
「コタロウ、コジロウ!!」
ミイナの傍らにコタロウとコジロウが駆け付ける。ウメが防げなかった弾丸は、コタロウとコジロウにより全て迎撃された。まあ、2人にとってミイナは特別だからなピンチになったらさすがに助けに行くよね。う、うん。別に悔しくなんてないからな。まあ、ミイナは可愛いからな。オレももっと実力があれば助けに行くのだが・・
『危ないご主人様!!』
「え?」
ミイナが危機を脱しホッとしたのもつかの間、いつの間にかゴールデンゴーレムに後ろを取られていた。ヤツはオレに向かって弾丸を数発ぶっ放した。その狙いは弱点である心臓だ。
ギュイイイイイイインンン・・
『間一髪だったね、ご主人様』
だが、一人オレの側に残っていたドラのバリアによって守られた。そうだよね、ドラはオレの専属の召喚獣だからね。
パリーーーンンン
そのドラが張ったバリアが砕ける。そしてバリアを突破した弾丸がオレの背中を貫いた。
『ご、ご主人様?!』
ま、まじか?オリハルコン製の弾丸はオレの心臓を正確に貫いていきやがった・・・
『・・・ロールバック発動』




