第273話 ミイナの戦い
(時は少しだけ遡る、アイの指令を受けた面々の中で傷ついたフェンとライガは回復に専念したあとミイナと合流し親ゴーレムと戦っていた・・・)
目のまえのゴーレムが攻撃モーションに入る。そのまま打撃攻撃がくる。かなり素早い動きではあるが、避けられないほとではない。なんなく避ける。フェンとリュウガの方へと目を向ける。彼らも危なげなく避けている。心配はしていなかったがホッとする。
が、初期に比べてかなりスピードが上がってきた。そしてこうしている間にもそのスピードは上がり続けている。
では、相手の攻撃力がまだそれほどでもないうちに倒してしまえばいいのでは?
もちろん、できるものならそうしている。が、何度か試みた攻撃はいずれも不発だった。恐らく、弱点をつかないとダメージが通らないのであろう。
やはりさきほどアイが言った通り、ここは回避に専念した方がいいようだ。
ギュイイイイインンン・・
ゴーレムから異音が鳴り響く、さきほどから何度も聞いた音だ。そして、この音を発する度にまた一段階強くなるのも分かっている。だが、どうすることもできない。
『両腕が刀に変形したにゃん。フェン、リュウガ気を付けるにゃん。今までと間合いや攻撃のスピード、威力、諸々違ってくるにゃん』
『御意』
『っち、わかってるよ』
会話が終わらぬうちにゴーレムの攻撃が3人を襲う。紙一重で躱すが予測していたよりもはるかに速く、そして間合いが長い。そして、そのことがミイナの作戦変更を余儀なくさせた。
『このままではジリ貧だにゃん。2人とも攻撃に転じるにゃん』
『御意』
『そうこなくっちゃな。待ちわびたぜ』
『リュウガ、あくまでもわらわたちは時間稼ぎだにゃん。忘れるなにゃん』
元々攻撃っ気が強いリュウガはこの消極的な作戦には不服だった。だが、もちろん自分たちの勝利のためには従わざるを得ない。そんな状況下での攻撃命令はまさに渡りに船であった。
『よっしゃあ、これでも喰らいやがれー』
風の賜物持ちのリュウガ必殺の竜巻がゴーレムの周囲に巻き起こる。逃げ場をなくすように4つの竜巻がぐるりとゴーレムを取り囲む。それもただの竜巻じゃない、時折雷が落ちる雷雲を含む竜巻だ。中心はほぼ真空状態であり内部へ取り込まれたモノはその圧倒的な気圧差で切り刻まれる。
ゴオオオオオオオ
見る間に竜巻がゴーレムに迫っていきゴーレムのその巨体に襲い掛かる。
ギリギリギリギリギリ
金属をむりやり捻じ曲げるようなそんな不快な音があたりに響き渡る。リュウガの竜巻により身体ががっちりロックされ身動き取れないどころかこのままだとねじ切れそうな雰囲気だ。
『よし、チャンスにゃん』
もちろん、これだけでやられる相手ではないことは百も承知だ。だがひょっとしてこれで突破口が開けるかもしれない。そしてそれがどんな低い確率だろうが、やらないという選択肢は残されていない。
ウオオオオオオオオンンン
フェンが雄たけびを上げる。ただ、雄たけびを上げた訳ではない。超指向性の特殊な音波を発生することにより味方の攻撃力にブーストをかけるためなのだ。
『にゃん』
ミイナの絶対攻撃がゴーレムへとヒットする。フェンの雄たけびによって数倍の威力をもった攻撃がである
『浅かったにゃん』
ぐにゃり、とゴーレムの右腕があらぬ方向へと折れ曲がる。が、ミイナの狙いは心臓だ。攻撃を察知したゴーレムが防いだのだ。絶対に当たる攻撃が外れる。恐らく、何らかのスキルによって防がれたのだろうが不明だ。
グググググ・・
そのゴーレムが動き始める。リュウガの放った竜巻に拘束されたままでだ。
『だめだ、オレの最大の技でもこの程度の足止めにしかならねー。追撃を頼むぜ、姫さん』
『わかったにゃん』
絶対攻撃はそう何度も連発できるような技ではない。ミイナは追撃のために力を溜める。だが、そうするうちにもゴーレムはリュウガの拘束から逃れようともがく
『まだか?早くしてくれ、いまにも拘束が解けそうだ』
『もう少しだにゃん』
ウオオオオオオオンン
『フェ、フェン?!』
『時間稼ぎなら任せろ、長くは持たんが』
フェンのブーストを今度はリュウガの攻撃に乗せる。が、このブーストはあくまでも単発攻撃のためにある。フェンの言うように長時間効果が持続するものではない。それをムリして持続させている。
『よし、溜まったにゃん』
だが、ミイナの攻撃準備が整うまではなんとか持った。すかさず、今度はミイナへとブーストをかける。
『にゃん、にゃん、にゃん』
3連撃がゴーレムへと突き刺さる。さすがのゴーレムも右手が破壊された状態では防ぐのも難しく今度は急所へと届く。
『まだまだだにゃん。次は5連撃だにゃん』
ウオオオオオオオオンン
ミイナの攻撃に合わせ、フェンがまたまたブーストをかける。
ドゴ、ドゴゴゴ
鈍い金属音が辺りに響く。ゴーレムは本体に甚大な被害を受け大きなひびが入っている。暗くてよく見えないが内部のアレはシステムの一部だろうか?隙間から光が漏れ出している
劣勢から攻撃に転じたところ思わぬ手応えがあり、攻勢にでることができた。だが、油断は禁物である。3人とも歴戦の勇者であり気のゆるみはない。戦場では、一瞬の油断が命取りであることは何度も経験している。ミイナは好機とみて更に畳みかける。
『まだまだまだまだまだまだあ。だにゃん』
ドガドガドガドガ、ドガガガ
ゴーレムの胴体へと打撃がまとめて入る。当初、小さな亀裂だったのが、どんどんとひびが広がっていき、そして割れた。
ピカーーーーーー
次の瞬間、眩い光が辺りを覆った。




