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第259話 いざ魔王城へ

「全員揃ったにゃんね?いざ出発するにゃん」



獣王ミイナが揃った面々を見渡し号令をかける。コクリと頷くもの、大きく頷くもの、おーっと大声を出すもの。そのリアクションがバラバラなのは様にならないが、全員の気持ちは一つだ。



「いざ!魔王城へ!!」




シュウは隣で一緒に並んでいるアイへと目をやる。アイはシュウの視線に気づくとにっと笑ってブイサインをする。わが愛する嫁はこんな時でも通常運転である。更に隣の2人は、なかつ国代表メイリンとその聖獣ピーちゃんだ。美しい桃色の髪を結び目高めのツインテールにしたメイリンは相変わらずの美少女であるが、以前よりも大人びて見える。背筋をピンとした佇まいは凛とした印象を与える。その横のピーちゃんは心なしか以前よりも目つきが鋭くなった気がする。そしてこれは気のせいじゃないと思うが、毛艶、というか羽根艶?がとてもよくなんというか光沢のある色に仕上がっている。


その隣はフェンリルのフェンだ、獣王に謁見する前の最終試験官だったのだがそのままメイリンたちを鍛える教官となったのだ。


更に隣には、ステイツ国代表のジョーがいる。そのジョーであるが額の真ん中に立派な角が一本生えている。そして軽鎧の隙間から見える腕や足、それに顏などの肌は赤黒い、それも艶のある赤だ。高級車の塗装のようなヤツだ。



(え?もう完全に鬼になってるやん?)



と思ったのだが、これが覚醒というヤツらしい。勇者としての賜物ギフトが発現し、晴れて賜物保持者ギフトホルダーとなったらしい。ちなみに狂戦士バーサーカー賜物ギフトだということだった。



その横には、ジョーを鍛えて賜物保持者ギフトホルダーとなるのに多大な貢献をした張本人がいる。獣族の戦士リュウガだ。リュウガは、コタロウとコジロウの父親であるライガの一番弟子であり右腕として長年仕えていた獣族屈指の戦士だ。そしてライガの命令でコタロウとコジロウの幼年期をさりげなく見守っていたらしい。もっともコジロウはともかく、コタロウは気付いてなかったそうだが。


「よう、久しぶりだな。2人とも強くなったのが分かるぜ。頑張ったみたいだな」


再会を果たした時にはとても嬉しそうに笑ったのが印象的だった。



「マスターリュウガには、覚醒させてもらって感謝しているよ。でも、それまでに何度も何度も命を奪われたけどね」



鬼となっても爽やかなジョーの言である。が、命を奪われたということに関してはこっちもだ。シュウもコタロウ共々、獣王ミイナにあの特訓場で何度も絶命させられたのだ。



「何度死んでもやり直せるにゃん。安心して死んでにゃん」

「お、鬼ですか?・・・」

「鬼だニャ」



とは言っても、リアルに死ぬ感触まで再現されている特訓場では何度も死ぬことにより精神も十分鍛えられたと思う。



「よし、わらわ達を魔王城まで運ぶにゃん」



目の前の()()のドラゴンへと声をかける。真っ白な、まるで白磁のようなドラゴンと真っ赤な、まるで高級外車のようなドラゴンだ。



「よし、頼むぞドラ。行こう、アイ」

「うん」

『頼まれた、ご主人様』



真っ赤なドラゴンの背中にシュウとアイが乗り込む。この真っ赤なドラゴンの正体であるが、精霊サラマンダーであったガルとギルとゴルが進化した姿なのだ。獣王の森にてそのマナを体中いっぱいに吸い込んだ3匹はそれぞれ融合することによって1頭のファイアードラゴンになったのだった。



「アイちゃんが乗るなら、私たちもコッチに乗ろう」

『心得た』



続いて、メイリンとピーちゃんが乗り込んでくる。



「頼んだよ、ドラゴ」

『じゃあ、オレもこっちに乗るか』

『そうか、じゃあ私もこっちに』


ジョーはもちろん、ドラゴの方へと乗り込み続いてジョーを鍛えていたリュウガとメイリン達を鍛えたフェンリルのフェンと続く。



「じゃあ、わらわは・・・」



残ったのは獣王ミイナとその両脇にまるで狛犬のようにチョコンと鎮座しているコタロウとコジロウだ。ミイナはほんの刹那、気づくか気づかないくらいの一瞬だけシュウに視線を送ったあと、両脇のコタロウとコジロウに目配せをする。



「こっちに乗せてもらうにゃん」



そう言ってドラゴの方へと乗り込んでいく。



(ああ、コタロウとコジロウは向こうに乗るのかな・・なんか、3人には切っても切れない絆のようなものを感じるしなあ)



特訓が終わったあともミイナにべったりのコタロウとコジロウにシュウは、その仲睦まじさにほっこりとしつつも寂しくも思っていたのだった。



『ミイナ、じゃあまた後でニャ。ぼくたちはご主人様と一緒に行くニャ』

『にゃあ、やっぱりご主人様と一緒がいいにゃあ』



ところが、コタロウとコジロウはこっちへと駆けてくるではないか!



「コタロオオオ!、コジロオオオオ!!」




涙と鼻水でグシャグシャになった顔面でスリスリされる2人は少しイヤそうな表情を見せながらも、どこか嬉しそうだった。その様子を見たミイナは誰も気づかないほどの一瞬寂し気な表情をしたあと、すぐに前方へと顔を向けたのだった。




『では、いくぞ』

『しゅっぱーつ』



2頭のドラゴンが音もなくすっと空へと飛びあがっていく。そうしてある程度の高度になった後、ギュンっと前方へと加速していく




「凄い・・・」



眼下には、獣王の森が見える。ずっと修行に明け暮れていたから初めて見る光景だ。そこかしこに集落が作られている。そこでは色々な種族がそれぞれの集落で日々の生活を営んでいるのが垣間見えた。コタロウ達ネコ族の集落、フェンの集落であろう狼族、グリズリー種の集落。それだけではない、リスやウサギ、ネズミなどの小動物の集落もある。



そしてそれぞれの集落が仲良く共存している様子が遥か上空からでも分かるのだ。どうしてそんな事が分かるって?なぜなら、これらの集落には垣根がない。大きくて力がある種族はもちろんのこと、小さくて力がない種族においても外敵から身を守るための設備が集落には一切見当たらなかったのだ。そしてそこで暮らしている動物たち、距離があるのでその表情までは見えない。だが、そこに暮らしている一人ひとりが生き生きと動いている様子だけは確認できた。



(まさに動物たちにとっての理想郷ユートピアだな)




「そろそろ国境だにゃん」

「?!」



ミイナの声を合図に前方を見てみる、すると森の樹々で覆いつくされていた景色から一転して地平線が開けた。












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