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第253話 それぞれの葛藤

―――ミイの場合



数千年に一度、聖獣の子供を宿し、産み、育て、そしてその生涯を終える。そうしてまた、この世に生を受けまた、聖獣の子供を宿す。



今世、ミイが生まれたのは普通の家庭だった。戦士ではあったが平凡な強さの父と専業主婦の優しい母親。幼少期、両親からは愛情をたっぷりと注がれて育てられた。そして迎えた「戦闘値測定」の儀ではギリギリ「戦士」としての資質アリと認められたが、予想通りの平凡な数値であった。


ところが、そんなミイが「訓練センター」へと入学すると状況は一変する。頭の良い彼女は、初めて本格的に教わる格闘技の技の数々をすぐに覚えどんどん強くなっていった。元々、周りからもそれほど期待されていなかった彼女が小さな体で男子生徒を組み伏せる様は痛快だった。


だが、強くなればなるほど周りからライガと比べられ苛立ちを覚えるのは前述のとおりである。



そんな彼女であったが、ライガと同じ戦場へと配属され、一緒に作戦行動を行うようになり、徐々にそのマジメな性格に惹かれていった。



「ねえ、ライガ。ホントに良かったの?」

「なにが?」

「だって獣王即位を断っちゃうなんて・・・こんなに名誉な事はないのに」

「お前と番になる。それ以上に名誉なことはない」



口数が少ないライガから言われたことで一番嬉しい言葉だった。



そうして幸せな日々を過ごしていたのだったが、更に幸せな出来事が起こる。命を授かったのだ、それも一度に2つも。



「ミイ、ミイ」

「み、みい」



ライガ譲りのキジ柄にミイの白い毛並みが混ざったかわいいかわいい2匹の子猫




ミイは、子育てのために戦士への復帰を辞退した。




通常、女戦士は出産後も戦士を続けるケースが多い。子供は集落で見てくれるから、まったく問題ないのだ。ネコ族に限らず獣族では子供は一族の宝でみんなで育てていこうという意識が強いため、戦士は結婚・出産後も安心して戦士を続けていられるし、生まれてきた子供は集落に迎えられ「非戦闘員」となったネコ族みんなで平等に育てられる。


ミイが戦士への復帰を辞退したのは、子供の傍を離れたくないという気持ちも強かったのだが何より自分の死期が近いことを悟っていたからだった。







「ねえ、ライガ」

「なんだ?」

「あなたという最愛の人とタロガとジロガという最愛の子供たちに出会えて私の人生は本当に幸せだった」

「・・・」

「迷惑かけちゃうけど、子供たちのことをお願いね」






気が付いたら何もない部屋にいた。周りには何もない、真っ白な部屋だ。



精神体アストラルボディとなったミイは、転生を繰り返してきた自分の今までの過去を全て思い出す。




そしてある疑問が浮かんだ。




そう、本来聖獣を宿し、出産し、そして育てるために存在している自分がなぜ今世ではこんなに早くこの世を去ってしまったのか?前世までの記憶を失っていたからその時は分からなかったが、今回自分のお腹に宿した生命はとてつもない力を持っていた。その力に耐えきれず、結果として寿命を縮めてしまったのだ。




『オマエニハ、マダスベキコトガアル』

「?!」



頭の中に声が響く、この世界の神の声だ。今まで何度もこの声に従って自分の使命を果たしてきた。通常、自分がその生涯を終えるとこの部屋に戻ってきて、また聖獣が生まれる時まで何千年も待ち続けてきた。だが、今回は何かが違う。そう、何かが







気付いたら森の中を彷徨っていた。自分がどこから来たかもわからない。そして何者であるかも。分かっているのはミイナという名前だけ。だが、何か大切なものを探している気がする。何か分からないが、とても大切なものだ。





何日彷徨ったか分からない、すると向こうから声が聞こえてきた。




「ジロガ、こっちだにゃ」

「タロ兄ちゃん、待ってにゃあ」



気付いたら声がする方向へ駆け出していた。誰だかは分からない、なぜか分からないけど胸がいっぱいになる。会った事もないはずなのに、2人に早く会いたいと思う気持ちでいっぱいだ。






「絶対絶対、また会えるにゃあ。だから待ってて欲しいにゃあ」



またか・・・



なぜかは分からないけど、前にもこんなシチュエーションがあった気がする。最愛の2人と別れなければならない時が。だがここは2人を信じて待つことにする。いつまでも待ってる。だから元気に暮らして欲しい。自分の願いはそれだけだ。














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