第249話 成長
「おいで、タロガ、ジロガ」
「ミイミイ」
「み、みい」
2匹の子猫はすくすくと育っていった。ネコ族は生まれてから3歳までは母親の元で育つ。「戦士」も「非戦闘員」もそこは関係ない。そして「戦士」と判別されたネコ族は親元を離れて訓練センターへと入れられ、一人前になるまでは母親と顔を合わすこともない。そのためネコ族の母親は、特に「戦士」の母親はこの短い間に一生分の愛情を自分の子供に注ぎ込むのだ。
2匹の母親となったミイは、わが子たちに精一杯の愛情を注いだ。惜しむ声も多かったが戦士は引退し、朝から晩まで付きっきりで2匹の世話をした。子猫たちは野原で走り回り、疲れたら母の傍で丸くなって眠る。そんな2匹を舐めて毛並みを整えてやる時間がミイは大好きだった。
「かわいいかわいい、タロガにジロガ。戦いだけの私の人生にこんな穏やかな時間を過ごす日がくるなんて」
そんな3匹の様子を少し遠くで見守るライガ、彼もタロガとジロガは可愛い。だが、それと同じくらい、ミイのこともまだ愛しているのだった。
◇
ミイが亡くなったのは、それから一年後のことだった・・・
◇
それから更に1年後
「タロ兄ちゃん、待ってニャア」
「はやく来るニャ」
元気に原っぱを走り回るネコたちの姿があった。
「はあはあ、兄ちゃんたちは速いニャア」
ジロガが息を切らしながら、タロガの元へと走り寄る。
「ジロちゃん、お疲れ様だにゃん」
自分そっくりな兄ネコ、タロガとその横にいる真っ白いネコの元へとたどり着く。数日前から一緒に遊ぶようになったミイナだ。数日前、いつものように2匹で遊んでいたらいつのまにか現れたので3匹で遊ぶことにしたのだ。
ミイナは、タロガとジロガに比べて一回り小さいが非常にすばしっこくてタロガの動きにもついてこれるほど身体能力が高い。かといって動きが遅いジロガのことも気にかけてくれて兄のタロガとしては、もう一人お姉ちゃんが出来たみたいで大助かりなのだ。とても人懐っこい性格で3匹はすぐに仲良しになった。
3匹は来る日も来る日も一緒に遊んだ、仲が良いその様はまるで本当の兄弟のようだった。すばしっこいタロガとミイナをいつもジロガが追いかけていく。2匹に比べて動きが遅いジロガであったが、そんな彼を2匹は常に待っていた。
そんな3匹の遊びが追いかけっこから狩りへと移行するのに、そう時間はかからなかった。元々ネコ族の子供は狩りを覚えるのは早い。幼少期から狩りを始めるものが殆どで、それは「戦士」に限ったことではない。
そしてその狩りの獲物も最初は小さなラットから始まり徐々に大物へとなっていった。
「ミイナ、そっち行ったニャ。任せるにゃ」
「任されたにゃん。ジロちゃんも手伝って」
「にゃあ、2人とも速いにゃあ。待ってにゃあ」
ドドドドドド・・・
と豪快に走ってくるのが今日の獲物であるワイルドボアだ。ネコ族の大人であっても「戦士」職でなければなかなか手を出せない大物だ。
そんなワイルドボアがこちらへ向かって一目散に突進してくる。
「にゃん♪」
ミイナが一瞬牙を覗かせワイルドボアへと接近したかと思うと一瞬でまた離脱する。
ブシュウ・
途端にワイルドボアの首筋から鮮血が噴出した。接近した一瞬のうちにその牙を頸動脈に突き立てたのだ。だが、ワイルドボアはまだ止まらない。多少スピードは落ちたがジロガへと向かって突進してくる。
「にゃ、にゃあ」
ジロガが身構えたその時、突進してきたワイルドボアが一瞬宙に浮き、横へとその進路をズラされる。物凄いスピードで走ってきたタロガがワイルドボアの横っ腹にダイビングしたのだ。
ズズウウン・・
ワイルドボアはそれでも数歩進みその後その場にドサリと倒れた。
「にゃあ、やっぱりタロ兄ちゃんはすごいにゃあ。ミイナもとっても素早かったにゃあ」
「ジロガ、大丈夫だったかニャ?けがとかしてないかニャ?」
「タロちゃんは、心配性なんだからー。ジロちゃんにはかすり傷ひとつついてないニャン」
大きな獲物の前に集まる小さな小さな3つの影。タロガは本格的な訓練を始める前にすでに大人顔負けの戦闘力を持っていたのだった。




