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第246話 コタロウとコジロウの前世

この惑星でも大部分を占める大森林「獣王の森」。有史以来、そこには様々な種類の獣族が住んでいる。それぞれの種族には族長と呼ばれる長によって治められている。そして全ての族長の上に立つのが「獣王」というわけだ。


この時代の獣王はグリズリー族だった。賢王とは言えなかったが、グリズリー種ゆえの高い戦闘力を有しており民からは慕われていた。



色んな種族の中にはネコ科に属するものがいた。そのネコ一族の族長は、ライガといいネコ一族の歴史の中でも抜きんでた強さを持っていた。


そんなネコ一族の中のお話である。






「ライガよ、本当にそれでいいのか?」

「すまん長老。オレにはどうしても、こっちの道を諦めたくない」

「いや、それは構わんが。もったいない話だがお前が決めた道だ。自分の好きにするがよいぞ」



ここは族長の住居である、族長の住居とは言っても多少広めのテントのような作りで質素なものだ。獣族の中には、立派な住居を構える種族もいるが大抵は雨風凌げればいいという考えだ。中には家を持たない種族もいる。そんな中でネコ族もそれほど住居にこだわりは持ってないのである。


そして今、対峙しているのはネコ族の長老だ。ネコ族の中で一番の高齢で一番の物知りなのだ。族長であるライガも長老には一目置いている。



その長老の元に今朝、一羽の伝書鳩がやってきた。



獣族は基本的に魔法は使わない。魔力は大なり小なり持ち合わせているのだが、魔法を使うのはそれほど得意でなくその魔力を自分の肉体強化へと使うのが一般的である。戦闘だけでなく日常においても、それは一緒で念話を使えるものは非常に少ない。


そんな獣族の伝達手段として、一番有効なのがこの「伝書鳩」である。



「伝書鳩」とは言ってもれっきとした獣族の一員であるハト族の中でも特にスピードに特化した彼らの仕事は「ともかく伝言を相手に届けること」だ。それもより早く、より正確に、だ。


その仕事ぶりによって彼らは階級が分かれており、下から順にC級、B級、A級となる。もちろん階級が高くなるほどその報酬も段階的に上がっていくのだが。



そんな「伝書鳩」の中でも数羽しかいない「S級伝書鳩」のレーサーがネコ族の長老の元へとやってきた。獣族の重鎮ならだれもが知っている獣王専属の伝書鳩であるレーサーだ。



「ジダイノジュウオウニ、ネコゾクノゾクチョウデアルライガヲオソウトオモウ。ケントウサレタシ」



長老が獣王からの伝言を理解したことを確認するとレーサーは、音もなく飛び去り次の瞬間には視界からいなくなっていた。



一族から獣王が出る、と言うのは非常に名誉なことだ。獣族においてそれぞれの一族には「戦士」と「非戦闘員」に別れる。戦闘力に優れたものは「戦士」となりそれ以外は「非戦闘員」だ。純粋な強さのみがその評価方法でそこには、生まれや性差などは関係ない。



そんな獣族であるから一族で一番強いものが族長となり、そして全ての獣族の中で一番強いものが獣王となるのだ。


もちろん、正式にはこの世の神であるゼウスが決めることにはなっている。そしてごく初期の頃は、ゼウスが獣王を決めていた。だが、いつの頃からかそのしきたりはなくなり獣王は獣族で一番強いと認められたものが名乗ることとなっていた。



強さが全ての獣族において獣王を襲名するというのは最も名誉なことだ。それは獣王となった本人のみならずその一族全てに当てはまる。現獣王を輩出したグリズリー族も他の獣族から一目置かれる存在なのだ。


長老もまさかライガが断るとは思ってなかったのだが、その決断に特に反対はしない。元々ネコ族とは自由きままな性格なので、個々の意志は尊重される。というか、せざるを得ないところがある。そんな訳で一族の英雄であるライガの決断は、例え長老であろうとも覆させることはできなかったのだ。



「わるいな長老・・・」

「いや、お前は悪くないぞ。獣王にはワシから断りの連絡をいれておこう」



期待と栄誉で胸を一杯にしてやってきた長老はライガに断られトボトボと帰路についたのだった。





「ライガ、よかったのかニャ?」

「ミイ、お前は心配しなくていい」



長老が帰ったあと奥から一匹のネコが現れる。真っ白い毛並みの綺麗なメスネコだ。厳しい顔で帰っていく長老の姿を目で追っているライガの顔色を窺うように上目遣いでみている。そんなミイへと視線を移したライガの表情はとてもやさしい顔をしていた。



この美しいネコ、ミイと番になるためにライガは獣王を断ったのだった。





















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