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第209話 決勝戦 12

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・



「・・・」

『・・・』



シュウとコタロウの目のまえに鬼が立っている、いわゆる赤鬼だ。筋骨隆々な体格に見上げるような巨体、血のような赤い鎧から出ている手足に顔の色も同じく真っ赤だ。そして額からは一本の立派な角が生えている。どこからどうみても、正真正銘の赤鬼だ。体中からとめどなく暗い感じのオーラのようなものが溢れ出てきている、なんか人の顔のようなものがそのオーラみたいの中から立ち昇っているが、ただのシミュラクラ現象で人の顔に見えるだけなんだろう、そうに違いない。




「っていうか、あいつの方が覚醒しちゃったんですけど!」





「ウガアアアアアアア」




と次の瞬間、咆哮をあげてこちらへと向かってくる。速い、かなりの速さだ。覚醒したことにより大幅にスピードが上がったジョーはあっという間にこちらへとたどり着き、シュウに向けて持っていた刀を振り下ろす。言うまでもなく、今までとは段違いのスピードとそれに伴った攻撃力がその禍々しい刀へと乗って自分へと襲い掛かってくる。



「っく」



なんとか初撃を避けるが、たまたまだ。こんな攻撃何度も喰らえば絶対に当たってしまう、そしてまともに喰らえば自分の体なんて跡形も残らず粉みじんにされてしまいそうだ。



「ウガガガガ」



初撃を外されたジョーは、そのまま攻撃を続ける。手に持った刀を無造作にこちらへと振り回すがだけなのだが、身の毛もよだつスピードに攻撃力がのったその攻撃にこちらは防戦一方だ。




「コ、コタロウ、頼む援護を。って、コタロウ?!」




堪らずコタロウへと助けを求めるが、なんとコタロウはあくびをしながらスフィンクス座りをして完全にリラックスムードだった。こんな時に自由過ぎるだろ!コタロウ・・・




「ウガガガガガガアアアアア」



そんなコタロウの舐めた態度が気に入らなかったのか、ジョーの怒りの矛先がコタロウへと向く。そのままコタロウの方へと駆けていく。まずい、かなりのスピードだ。コタロウのスピードを以てしても避け切れるか?



オレの心配をよそにコタロウは「うーん」と伸びをしつつ顔をペロペロ舐めてきれいにしている。なにやってるんだコタロウ?ジョーはすぐそこまで来ているぞ。



ズガアアアアアアアン



ジョーの攻撃がコタロウへと放たれる、なんとか避けたようだが、刀と地面が激突したその衝撃で地響きが起こり、こちらまで振動が伝わってくる。



「ウガアア」



なおも攻撃を続けるジョー、その一撃一撃が必殺の威力を持っているのは明白だ。コタロウはなんとか避け続けているが、あの凄まじいスピードだ、そう何度も避け続けられる訳がない。



「コタロウっ、今行くぞ!」

『ニャ?!』

『助けに行く必要はなかよ』

『え?なんで?』


コタロウの助けに入ろうとすると、アイの念話が割って入る。その内容は予想外のものだったのだが・・・



『いや、あんな攻撃とかコタロウくんなら目を瞑ってても避けられるやん』

『そうだニャ、こんな単調な攻撃絶対喰らわないニャ』

『え?単調?』



改めてコタロウへと攻撃を続けるジョーの様子を見てみる。相変わらず超重量級の攻撃をし続けるジョーであったが、相対するコタロウの方はひらりひらりと危なげなくその攻撃を悉く躱していく。



「確かに単調だ」



攻撃力の派手さにばかり目を奪われていたが、その攻撃方法は力任せに刀を振るうばかりのなんとも稚拙極まりないものだった。あんな攻撃なら気をつけてさえいれば喰らうことはないだろう。だが、一体なぜジョーはあんな攻撃を繰り返しているのだろう?



『力ばっかしに気が言ってオツムの方がお留守になったってことやね』

『うん?どういうこと?』

『あいつは、まだ賜物ギフトの能力を完全に使いこなせてないんよ。それは、よく観察すれば分かるんやけど』

『うんうん』

『それで、シュウたちと戦ううちにどんどんと能力だけが暴走して完全に理性を失ってしまったわけやね』

『なるほど、それでいまの状態になったってこと?』

『そういうこと、計算通りあいつは自分の賜物ギフトに体を乗っ取られて最早、生きるリビングデッド状態って訳なんよ。うっふっふっふ』



さすがアイさん、エグイ作戦だ。てっきりオレの覚醒待ちかと思ってたのだが、実はあいつがあんな状態になるって事は計算づくって事だったんだな。あ、今気が付いたけど「剣術レベル」が1に戻っていた。レベル1の状態だと100%の確率で攻撃をいなす事が可能なんだよな。と言うことは、あいつの攻撃にあんなにビビっていたのに実は余裕で避けられていたってことだったんだ。




『あ、でもあいつの攻撃は避けられるだろうけど倒す事は出来ないんじゃない?』

『大丈夫、それも計算済みやけん』

『え、そなの?』

『当たり前やん、ちょっと見とかんね』



もう一度、ジョーとコタロウの戦いの様子に目をやる。相変わらず見事な体さばきで、ジョーの攻撃をかすりもさせないコタロウに飽きもせず刀を振るうジョーであったが、急にその様子が激変した。なんというか急に見えない枷のようなものに拘束されたかのように身動きを封じられたのだった。



「ガアアアアア」



両手・両足をその見えない枷によって封じられたジョーは、そのまま地面へと跪いた。そんな状態になっても闘争本能は衰えを知らず、唯一自由な口を使い咆哮をあげている。




「な、なんだ?一体あいつに何が起こっている?」



いや、この感じ覚えがあるぞ。確か一回戦でなかつ国と戦った時にコジロウが使った時空魔法だ。するとジョーの身柄を拘束したのは






『クワーハッハッハッハ、なかなか小癪な真似をするではないか電脳族の小娘が』



いつの間にか、目の前には青磁器のように綺麗な鱗に身を包まれたドラゴンが立っていた。



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