第198話 決勝戦開始
「ようし、ドラゴとの話も終わったみたいだしそろそろ始めよっか」
ジョーがこちらをみてニカっと白い歯を見せサムズアップする。まあ、ホワイトドラゴンにももっと聞きたいことがあるがキリがないしな。つうかあのドラゴン、ドラゴって名前があったのね。
「ようし、アイ、コタロウいくぞ」
「うん」
「ニャ」
その様子を見たジョーが、ドラゴへと向き直る
「ようし、ドラゴ。アーマーだ」
その途端、光の粒子がジョーの周りを取り囲みその姿を包み隠す。そして一瞬ののちに再び姿を現したジョーは完全武装していた。
「か、かっこいい」
思わず口から感嘆の言葉が出てしまう。まるでドラゴの姿を模したかのような流麗なフォルムに、これまたおんなじ純白の竜麟がビッシリと生えた鎧を装着している。イケメンが純白の鎧を着ているとか、現世でもこんなコスプレイヤーいたかもしれんな。元ネタは分からんが。
『こちらも渡しておくぞ』
ピカーッと稲妻が一本走り、ジョーへと直撃する。もちろん、ジョーには何のダメージもなくその手にはまるでその稲妻がそのまま変身したかのようなピッカピカの剣が握られていた。
『では、我はこの戦いが終わるまで貴様らの戦いを見守ろう』
そう言い残すと、優雅に翼を広げそのまま上空へと飛び立ちあっという間に見えなくなった。
ズウ・・・・ン
「!!」
急に目のまえが真っ白になる、ホワイトアウトってのはこういう事か?というくらい辺り一面真っ白だ。だが、それだけではない。体が鉛のように重くなった。
(なるほど、別空間に飛ばされたようだな)
「大丈夫か、コタロウ?」
『にゃ、真っ白で何にもなくてつまらんニャ』
辺りを見渡すとなるほど、バトルマンガ御用達の「修行部屋」って感じの空間だ。広さは一体どれくらいあるのか分からないほど広い。が、何もない空間が広がっている。そして、重力が恐らく10倍くらいあるようだ。
「ふんっ」
アイテムボックスから愛刀の「紅蓮丸」を取り出し一振り、うん問題ない。正直、コジロウの物理魔法を使えば重力操作により無重力状態にも出来るのだが、イケメンからは重力系の魔力は検知されなかった。だったら、対等の条件で戦うのが男の勝負ってものだ。イケメンがこっちの方を伺っている。勝負は開始されているが、騎士道精神なのかまだ攻撃は仕掛けてこない。
「大丈夫かい?ボクはこの空間は慣れているけど、初めての人はちょっときついかも」
「いや、問題ないよ」
『問題ないニャ』
「いいね、こりゃいい勝負ができそうだ。では遠慮なくいこうか」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
うお、急にイケメンの雰囲気が変わっていく。なんというかオーラが集まっていく感じがする。そしてその純白の鎧が時折ピカっと光る。
「では参る・・・」
「よし、コタロウ。最初はオレ一人でいく。アイ、サポートしてくれ」
『分かったニャ』
『りょうかーい』
次の瞬間、ジョーが目前に迫っていた。光り輝く剣を上段に構え、斬りかかってくる。
キンキンキンッ
最初の斬り合いは、相手の出方を窺って受けに回る。とは言っても自動で発動する「剣術スキル」任せなのであるが
「なっ?!レベル12だと!」
シュウは受けに回った際、得られた戦闘データの数値に驚く。今までの最高レベルだ。
相手の戦闘力を分析し、対策をとって戦うのがシュウのというかアイの戦闘スタイルだ。この「剣術スキル」にしてもただ相手と戦闘を行うだけのスキルでなく相手の戦闘データを収集する役割を果たす。
その際、相手の戦闘力に応じた「剣術レベル」が発動する。この「剣術レベル」であるが、もちろん相手の戦闘力が高いほど、このレベルも数が増えていく。
だったら、常に最高レベルで戦えばいいだろうと思うがいい事ばかりでもないのだ。
つまり、
『この「剣術レベル」は戦闘中、最も与ダメージの期待値が高くなるレベルを自動で選択するように設計してるんよ。もちろんレベルが高くなるほど、リスクを取らざるを得ないから被ダメージも考慮しているんやけどね」
手強い敵に向かって捨て身の攻撃やクリティカル狙いばっかししていたら倒せる確率は上がるかもしれないがその分、自分の防御が疎かになるよって話なのだ。
ちなみに普通に外で出会うグリズリーなどの猛獣系のモンスターの場合、「剣術レベル」はほぼ1で事足りる。キンググリズリーの最強クラスのボスで2から3くらいだ。そしてダンジョンボスクラスでさえもレベル5くらいで事足りるので、ジョーのレベルにシュウが驚くのも無理はない。
「ふうむ。『相手にとって不足はない』ってやつだな」
シュウの表情が緩む、強敵と戦えることに高揚しているのだ。
「お、言うじゃないか。まだまだ楽しませてくれそうだ」
不敵なシュウの振る舞いにジョーのテンションも上がっていく。そしてそれに呼応するかのように、その手に握られた剣の光が強くなっていく。




