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第174話 ステイツ国の場合 12


「ようし、いくぞー」



ゴブリン探索の旅は、2日目の朝に突入していた。ジョーたちは前日、昼ごはんを食べた後も山を2つ進み暗くなる前に野営を行った。今までも、日をまたぐクエストはあったので野営も手慣れたもので特に問題は生じない。だが、今回のクエストは何日かかるか分からないのが不安材料ではある。



だが、そんなことは些細なことである。何しろ、ずっと好きだったメアリーと両想いになれたのだ。浮かれるジョーの足取りはとても軽かった。



「油断するなよー」



気持ちがすぐ顔に出るジョーが調子に乗っているのは丸わかりなので、他の3人は心配になる。何か失敗をしでかさないかと。




「うん?」



急にジョーの表情が鋭くなる。



「どうした?」

「シッ」


口を人差し指で指して静かにしろのポーズを取る。そしてジョーの表情をみるトムに向かって右前方の草むらを指さす。



ブンッ!!



その途端、トムは手にしたバトルアックスを振りかぶり一直線に振り下ろした。




「キキイ」



草むらに5匹のゴブリンが隠れていたのだが、ジョーのスキル「気配察知」で事前に発見できたのだ。この手の探索系スキルは斥候職に多く保持されているのだが、決して珍しいスキルではなくジョーのような勇者職にもそのスキルを持つものは多い。ちなみにこのパーティで探索系スキルを保持しているのはジョーだけである。



「ようし、いいぞトム」



トムの初撃により3匹のゴブリンが戦闘不能となる。残り2匹はジョーの出番だ。ジョーは、ジョースターから遺された「デュランダル」を構えると2匹のゴブリンへと切りかかる。



シャキーーーン・・・



一匹目を斬りつけた返す刀で2匹目を袈裟懸けに斬る。たった一合の打ち合いもなく、2匹のゴブリンは一刀両断にされたのだった。



「おう、浮かれてポカをしないかと心配してたけど自分の役割はちゃんと果たしてんじゃないか」

「まあな、というかお前も言うようになったじゃないかトム」



ジョーは、いつの間にか頼もしくなったトムの横顔をまじまじと見つめる。



「いや、オレが気付かなかっただけで本当はもうとっくに」

「うん?どうしたんだ?」


幼馴染というものは、いつまで経っても子供の頃が忘れられない。ジョーもいつも泣いてたトムの姿がどうしても思い出されてしまうのだが、トムは今や立派な戦士になっている。体格もジョーより一回り大きいし膂力も今や敵わない。いつも一歩引いてるから大人しいイメージがあるがジョーの一挙手一投足を見ていて、ジョーの指示があると勇敢に立ち向かう。



「お前が頼もしくなったんじゃなくて、オレが大人になって周りが見えるようになったってことか」

「何言ってんだよ?お前のスキル「気配察知」にいっつも助けられてんじゃないかよ」

「いや、そういうことじゃなくて」


やいやいと騒いでいる男2人を優しく見つめる女の子2人。


「なんかいいね、あの2人」

「うん、いっつもジョーに振り回されてたトムが可愛そうだったけど大人になったね」

「いや、トムもまだ子供だよ。2人でいる時なんかさあ。ごにょごにょ」

「え?本当に?2人でそんなことしてるの?」


真っ赤になるメアリーであった。






ゴブリン探索も5日目を迎えた。ゴブリンの気配を追って越えた山は10以上となったが、ジョーはこの山がゴブリン達のアジトだと確信していた。なにしろ、今までよりも断然ゴブリンの気配が多いのだ。それだけではない。今まで一定期間を置いて出現していたゴブリンが全く出てこなくなったのだ。これは強敵が現れる前兆であることは、ジョーたち4人全員が理解していた。



「どうする?」



ジョーは3人の顔を見回した。つまり、ここで進むか撤退するかの選択を相談しているのだ。安全策を取るならもちろん「撤退」だ。ゴブリンのアジトの正確な位置は分からないが、おおよその場所は分かった。それならここはとっとと撤退して次は大勢で攻めてくるのが吉だ。


だが、この安全策には穴もある。大勢で攻めるのなら相手に気取られず一気に攻めるのが常道だ。こちらが大勢で来たことが相手に分かれば、ゴブリンもそれに対して防御を固めるだろう。例え1対1では弱いゴブリンでも籠城戦となればこちらの不利は否めない。大勢で攻め入って、こちらが全滅してしまう可能性も高くなるのだ。







だが、この時のジョーはまだ気付いてなかった。自分が今まさに最悪の選択をしていることに。後になってジョーはこの時の選択を一生後悔することになるのだ。





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