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第172話 ステイツ国の場合 10

シュトロハイムがクエスト失敗したという事件は、想像以上にモリオービレッジに衝撃を与えた。そもそも、クエスト失敗による事故率であるがもちろん新人冒険者が一番高い。特に初めての討伐系クエストで失敗する確率が一番高いのだが、それでも年に数回程度である。その後、新人冒険者が経験を積み成長していくにつれ、その事故率は飛躍的に低くなり、ベテラン冒険者ともなるとほぼ事故は起こらない。実際、モリオービレッジでベテラン冒険者が亡くなったのは本当に久しぶりの事で10年来の出来事であったのだ。




事態を重く見た、ギルドでは慎重策を取ることにした。その策とは複数のベテラン冒険者パーティによる合同クエストだ。4人パーティが5組、総勢20名のベテラン冒険者による山狩りが行われることになった。



普段は単独行動を取ることも多い冒険者であるが協力プレイが苦手な訳ではない、普段からクエストの難易度によってパーティメンバーを入れ替える冒険者もいるほどなのだ。というわけでベテラン冒険者ともなれば即興で連携プレイを行うことなど造作もないのである。



そんなベテラン冒険者が大量に狩りだされた結果であるが、成果はゼロであった。ゴブリンが作り出したであろう集落を見つけられなかっただけではない。これらのパーティが全てゴブリン一匹さえ遭遇しなかったのである。


この結果に関係者各位は、大きな失望とともにゴブリンという魔物が予想以上に狡猾であるということに考えが至ったのであった。


「ヤツらは、相手の強さを正確に把握しているぞ。そうして勝てそうな相手としか戦わないんじゃ」


ギルドマスターのスピードワゴンが言った台詞に、居合わせた冒険者の面々は無言で頷いた。





その後も、解決策は見つからずゴブリンによる被害は増え続けた。そうしてとうとう、冒険者以外の村人は村からの出入りを禁じる戒厳令が敷かれる事態にまで発展したのだった。




そうした状況を踏まえ、ギルドマスターであるスピードワゴンは苦渋の決断を迫られることとなった。







「ジョーよ、このミッション引き受けてもらえないだろうか?」




ギルドマスター兼村長であるスピードワゴンの執務室へと呼ばれたジョー達一行は、作戦内容の説明を聞いた。作戦と言っても、かなりお粗末な内容であるが。




「つまり、オレ達のパーティ単独でゴブリンの集落を見つけてくるって話だな?」

「そうじゃ、どうだ?引き受けてくれるか?」



ジョーは、正面に座るスピードワゴンの顔をまじまじと観察する。この老人は、年老いてなお、精力的で精悍な顔つきをしているのだがこのところのゴブリンの事案で、すっかり参ってしまっており、疲れがその表情に深く刻み込まれている。



(どうする?)



隣に座るトムと目を合わせると、軽く頷かれる。実のところ、ギルドマスターであるスピードワゴンに呼び出された時にこの話が出るであろうことは4人ともすでに予想していたことであった。



「やろうぜ、このままではオレ達の生まれ育ったモリオービレッジが大変なことになるし」

「そうよ、ウチのママが作ってくれるベリーブルーのジャムも今は取りに行けなくて食べられないくてとても困ってるって話だしね」


横からジェシーがいたずらっぽく口をはさむ。



「私も賛成だわ。村では沢山の人が困っているし、今まで散っていった多くの若い冒険者たちの魂に報いるためにもここはやるべきだと思う」



自分へとしっかり見据えられたメアリーのその大きなブルーの瞳にジョーの気持ちは大きく揺れる。が、軽々に結論は出せない。




「すまないが、少し考えさせてもらえるか?」



ジョーのその言葉に、スピードワゴンは少しの期待感とすまない気持ちがごちゃまぜになったなんとも言えない表情をしたのだった。



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