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第157話 ステイツ国VSダルシム国 その4

ビキビキビキッ




ウメの体を守っていた『物理攻撃無効』結界が音を立てて崩れていく。文字通り全ての物理攻撃を無効化する結界なのであるが、それを壊されたことにそれ程の驚きは覚えていない。もちろん初めての経験ではあったが、あくまでも想定の範囲内ではある。でなければ、ジョーの攻撃を必死に避けたりはしない。




『ウメ、オレの結界だけど破られるかもしれない』

「うん?カメ太の結界が?だって無敵じゃないの?」

『うん、ひょっとしたら竜種には効果がないかもしれない』

「そうか」




この戦いの前にカメ太と交わした会話だ。カメ太がなぜ竜種に効果が無いと言ったか分からない。もしかしたら、カメ太自身も分かってないのかもしれない。だが、カメ太のいう事なら信用できる。それで十分だった。




(ふむ、このような状況久しく体験してなかったな)




武闘大会で優勝した後のウメは苦戦らしきものを経験してこなかった。大会でその才能が一気に開花した彼に敵うものはなく、そして彼の傍らには常にカメ太がいたからだ。国の英雄なったウメであるが、それなりに仕事の依頼はあった。国賓としてのお勤めもあったが、あくまでも年に数回程度であり、それ以外は殆どが討伐依頼であった。もちろん、ダルシム国にも冒険者ギルドは存在し通常の魔物や猛獣はギルドに属する冒険者が退治するのが常であるが一流の冒険者でも太刀打ちできないものに関しては、ウメの出番が回ってくるのだ。




そうして討伐依頼がきた魔物の数々であったが、国内最強のウメと聖獣カメ太のコンビにとっては敵にもならなかった。幸か不幸かダルシム国には、この世界最強の種族である竜種が存在していなかった。ダルシム国最強の猛獣はワイルドエレファントという象とマンモスの中間くらいの生物である。最も恐れられている猛獣であるがそれが突然変異で大きくなった個体の討伐依頼がされた事があった。



元々大きな体が更に大きくなりその巨大な体躯はカメ太のサイズを優に超えていたが防御力と攻撃力はそれ程でもなく、国民に甚大な被害を与えたその個体は2人によって難なく撃破されたのだった。





だが今2人の目のまえにいるステイツ国代表ジョーは間違いなく強敵だ、今まで戦ってきた敵とはまるで次元が違う。最早、余力を残して戦える相手ではない。





「とうとうコレを使う時が来たようだな」




いつの間にかウメの手には輝く棒状の道具が握られていた。長さは1メートル以上あり、その先端には宝飾が施された輪っかがついている。僧侶などがもっていそうないわゆる錫杖というやつだ。そのきらびやかな外見は、ウメの質素ないで立ちと比べ少し違和感がある。その外観はただの道具ではない只ならぬ存在感を放っている。そう、ダルシム国の国宝、『アーユルヴェーダ』だ。




前述の通り、ウメは大会優勝より苦戦らしい苦戦をしたことがない。従って国王より賜った『アーユルヴェーダ』は今まで一度も使用したことがなかった。もちろん使用方法もよく分かっていない。『ピンチの時手にすれば、とてつもない加護を賜る』とだけ伝え聞いていたのみだ。




普段は耳の中に隠しておけるほど小さくなるその錫杖を取り出し手にしたウメはその言が本当であった事を身をもって実感していた。




「なんという凄まじい力だ。勝てる!オレは究極のパワーを手に入れたのだ!!」




体中から迸るパワーを手に入れたウメは思わずそう叫んでいた。その余りの変貌ぶりに目の前の相手ステイツ国代表ジョーが若干引いているが、究極のパワーを手に入れたウメは高揚感から全くその様子に気付いていない。




だがウメが有頂天になるのも無理はなかった。もともと才能に恵まれなかったウメは、その超人的な努力によって今の地位を築いたのであるが努力だけでは埋められないものがある。それはチャクラと呼ばれる体内の潜在エネルギーのことだ。魔力を持たないダルシム国民は魔法が全く使えない、その替わりとしてこのチャクラを使って色々なことが出来るのだ。といっても主に身体強化のような簡単なものだが。




そしてもちろん、ダルシム国の国技でもある「ヨガ闘技」にはこのチャクラが重要な役割を担っている。基本戦術である身体の伸縮に始まり、ファイアーボールを射出する「ラマファイアー」究極奥義であるテレポートに至るまで全てチャクラあって初めて可能となるのだ。




ウメは生まれついてその体内チャクラの量が普通の人に比べてとても少なかった。一般的な「ヨガ闘技」の有段者と比べて半分くらいという絶望的な少なさだったのだ。それでも血のにじむような努力を重ね少ないチャクラをうまくやり繰りする術を身に着けて今日の彼があるのだが、そんな彼でもチャクラの消費量を気にせず戦いたいと思うことはある。そして今、突然ではあるがそれが叶ったのだ。



そんなこんなでひょんなことから願いが叶ったウメは、その高揚する気持ちになんとか折り合いをつけ目のまえの敵に再度向き合う。目のまえの敵、ステイツ国代表ジョーはそんなウメの様子を興味深そうにただ観察しているだけだった。




「すまぬな、年甲斐もなくちと取り乱してしもうた」

「いいってことよ。それよりも、一体どうしたんだい?どうやらその道具を取り出してから様子がおかしかったけど。みたところ武器にも見えないし、それは一体なんなんだい?」

「ああこれか?」



言いながら手にした「アーユルヴェーダ」を眺める。国宝の秘密を敵国の人間へ易々と話していいものだろうか?瞬間、そういった考えが過ぎる。




「これは我が国の国宝でな。持つとチャクラという体内エネルギーを増幅させてくれるのだ」

「ほほう、それは凄いな。だがいいのか?国宝の情報をヨソの国へと流してもさ」



ジョーの指摘は最もだ。だが、ウメは全く動じない。すました顔で次へと話を繋げていく。




「問題ない。お主はわしが、国宝『アーユルヴェーダ』の威力に狼狽えていた時に攻撃しなかった。絶好の機会だったのにな。お主のその心意気に応えたまでよ、それに」

「うん?それになんだい?」




言葉を切ったウメに次を促す。それに応えるウメは鷹揚に頷く、いつものポーカーフェイスではない。珍しく自信に満ちた表情だ。




「これを手にしたワシが負けるわけないからな」

「はははっ、言うねえ。謙虚を美徳としていたような今までのキミではないみたいだ。つまり、それだけの根拠がその右手に持っているモノにあると言う事だね?」

「いかにも」

「なるほど、キミがさっき言ってたチャクラってのが増えるんだよね?」

「然り然り」

「どれくらい増えるのかなあ?」




上目遣いで尋ねるジョーに片目だけ開けたウメは、この問いに答えるべきか暫し思案する。




「今までのワシの体内チャクラの総量が1とすると」

「うんうん」




ここでウメはたっぷりと溜めた後に渾身のドヤ顔で言い放った。





「約1000だ」



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