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第136話 EDOの街にて

「お・ま・た・せー♪」




トキさんとの会話に野太い声が割って入る。振り返ると筋肉ダルマのイッコーさんに伴われた可憐な美少女が視界に入る。




「ッ―――――」




その瞬間シュウの時間が止まる。その可憐な少女に瞳を奪われて―――







「・・・どげんかな?」





淡い桃色の髪を左右で束ねたいわゆるツインテールを揺らせながら、オレを上目遣いに見る、その瞳は髪を束ねたリボンと同じくライトブルーだ。




全体的に黒を基調としたレースのミニワンピ、同じく黒のショートブーツに黒のニーハイはその形の良い脚をひざ下10センチまで包み込んでいる。いわゆる、ゴスロリの恰好だ。なぜ、異世界にゴスロリが存在するのか少しだけ考えないでもないが、この際それは置いておこう。




「控え目に言って最高です」





「ホント?!嬉しい!」




ボキャブラリーが貧困なオレの誉め言葉に、瞳を輝かせ飛び跳ねるアイ。飛び跳ねた拍子にフレアスカートが広がり真っ白な太ももがチラリと見えドキっとする。




「髪と瞳の色も、バッチリだね。服装によく合ってるよ」

「うん、ニコちゃんがね。こっちがいいって言うけん」




今やすっかり馴染みになって「アイちゃん」と「ニコちゃん」と呼び合う間柄なのだ。





「ニッコーさん、いつもありがとうございます」

「あらあ、いいのよおー。それよりシュウちゃんも、『ニッコーさん』だなんて他人行儀ねえ。アイちゃんみたいに『ニコちゃん』と呼んでもいいのよ」




ニッコーさんのありがたい申し出に苦笑いで対応する。実は心の中ではニコちゃんと呼んでいたりする。もっともお尻に大魔王を付けた上でだが。




2年前からすっかり普通の女の子らしくなったアイは、特にファッションへの情熱を燃やすようになり、ニッコーさんに色々と手ほどきを受けるようになったのだが、そうやってファッション熱が更に燃え上がり、最近になり、とうとう髪と瞳の色を自由に変更可能な設定としたのだ。元々、アイの髪は肩よりも少し長めのさらさらセミロングでアレンジしやすい。そのため、実に様々なバリエーションに変化させる事が可能となった。そう、まるでゲームキャラのアバターのように。




「ありがとうございました。シュウ様、アイ様、またのお越しをお待ちしております」

「シュウちゃん、アイちゃん、また来てねーん」




会計を済ませ、2人に別れの挨拶をすると、シュウはアイにてのひらを差し出す。




「ん」




アイは、頷くとそのてのひらに自分のてのひらを差し出しそのまま重ねた。いわゆる「恋人つなぎ」をすると2人は、ふたたびEDOの街を歩きだした。




横で並んで歩いているアイにこっそりと視線を移す。シュウとアイの身長差は約10センチだ。斜め上から見るアイの横顔は相変わらずかわいい。その容姿は4年前から全く変わらない。恐らく、これからも変わらないのだろう。では、シュウはどうだろうか?実は、シュウの見た目もこの4年間で余り変化がなかった。この世界にも貴重品ではあるが、鏡は存在していて、洗面所で毎朝、自分の顔を見ているが自分の変化は、ほぼ気付かないレベルで変わってなかった。




半神デミヒューマンは、戦うために若い時代が長いんよ。ムサシさんみたいにね』




ムサシ師匠はモロそんな感じだが、オレも同じ戦闘民族のくくりに入ることに若干の疑問をはさみながらも、一応納得した。








「ねえねえ、あの人」

「きゃあ、ホントだ」

「わあ、かっこいい」




EDOの往来を歩いていると、若い女子からの熱い視線を感じる。どこの世界でもいつの時代でも若い女性というものは、自分から遠い存在にはあこがれを抱くものらしい。まあ、分かったような口を聞いちゃいるがその熱い視線を一身に受けているのはアイなのだが。




その類まれな容姿とニッコーさんコーディネートのファッションが合わさっていまやアイは新しもの好きのEDO女子たちにとって、いわゆるファッションリーダー的な存在となっているのだ。




今更言及するまでもないことだが、ヒノモト国民は黒髪と黒の瞳に和装がデフォルトである。それに比べ今のアイは、桃色の髪にブルーの瞳、レースの黒ワンピにニーハイ、ブーツとまるで違っている。それでは何故、こんなにEDOの住民に受け入れられているのか?一つはヒノモト国民のおおらかさがある。だがそれだけではない。





「ありがとうございましたー」

「ゴチソサマー」




その時、近くのラーメン屋から食べ終わった女性客がゾロゾロと出てくる。その髪の色は一人は金髪、もう一人は赤毛に近い明るい茶髪、もう一人は栗色。そして瞳の色もブルーに茶色に明るいグレーとバリエーション豊富だ。彼女たちはステイツ国民だ。実は、今ステイツ国では空前のヒノモトフィーバーが吹き荒れているのだ。それは、ヒノモト国民の「OMOTENASI」であり、「RAMEN」や「SUSI」などのグルメであり「KIMONO」というヒノモト文化が彼らにとってとても興味深いからである。そして今や大型クルーズ船「イタイタニック」が週一の運行でEDO湾へやってくるのだ。




そうやって異文化交流が始まり、外国の生活様式がより身近になったところに、ニッコーさんプロデュースされたアイがEDOの街で見かけられると、その人気が一気に加速したのだった。




お蔭で松田屋を始めとする飲食チェーンの「コウノスケグループ」は、インバウンド需要により更に売り上げがあがったのは言うまでもないが、それだけでなく、元々呉服屋であった越後屋も高級和服が飛ぶように売れているそうだ。




ところでこの世界の言語であるが、殆どの人が「翻訳スキル」というものを保有しており他国とのコミュニケーションはほぼ問題なく行える。この「翻訳スキル」は、中級まで行くとほぼストレスなく伝わるのだが大半の人が所持している「初級翻訳スキル」では、少しカタコトになってしまう。それは、国によって微妙に変ってきて例えばステイツ国の人と話すとカタカナで変換され、なかつ国だと語尾に「アル」がつく。そしてダルシム国はなぜか語尾が「ヨガ」となって変換されるのだ。まあ、現世に比べたら遥かにコミュニケーションが取りやすいのは言うまでもないが。




こうして一躍有名人となったアイであるが、相変わらず人見知りは治らず、他人から注目されるとオレの陰に隠れてしまう。だが、若い女の子たちからきゃあきゃあ言われるのは、まんざらでもないらしく、オレの背中に隠れながらそっと手を振ったりしているのが見ていてとても可愛らしい。




さらにさらに、「イタイタニック号」から運ばれてくるのは観光客だけでなくステイツ国の様々な物資も同時に到着し、それを仕入れて商売を始めるモノもいる。もちろん、キチンとした事業計画があればEDO銀行からの融資も受けられる。そういった諸々の条件が重なり今やEDOは道路はしっかりと整備され、町の至るところには大きな店が出来、一大国際都市へと変貌を遂げたのだった。




そうして立ち並ぶ商店であるが、そららのお店の経営者はほとんどがまだ若い。実は、彼らはコウノスケさんが運営する経営コンサルタント会社の門戸を叩いた後に開業しているのだ。




もはやなんでもアリとなってしまったコウノスケさんは、今やEDO経済界のフィクサーと呼ばれる立場だ。そして、なぜがその収益の何割かがオレの懐に入ってきている。そんな大金、使いみちがないけど。




まあ、そういった訳で和テイスト一辺倒だったEDOの街は急速に洋風文化が浸透していった。





「シュウさん、アイちゃんおかえりー」

「ごはんにする?夕食にする?それとも、ディ・ナ・ア?」




屋敷に戻るとサザエちゃんとワカメちゃんが出迎えてくれた。どうやら夕ご飯の用意が出来ているらしい。その2人のいで立ちであるが、コレも以前のメイド服ではない。以前のメイド服は、黒と白を基調としたあくまでもクラシカルな装いで派手さはないが適度な清潔感があり、2人を清楚なメイドに仕立て上げていた。まあ、中身はともかくとしてだが。




今のメイド服は、サザエちゃんは、淡い桃色のミニスカートに白の半そでのプリーツが入ったシャツ、ワカメちゃんは、ライトブルーのミニスカートと同じく白のシャツ、そしてそれぞれがエプロンをしているのだが、胸元がなぜかハート型に開いていて谷間がよく見えるようになっている。




なぜ、こんなデザインなのか?それは言うまでもないことだが、現世でオレが見ていたドラマ?の中でセクシーな女優さんが着用していた衣装と同じものだ。なぜかアイがこの衣装をいたくお気に召してメイドの2人に見せたところ、即決で採用となったのだ。




ノリが良い2人は、そんなセクシーな衣装を着ただけでなく、様々なラッキースケベをオレに仕掛けてくれる。例えば、サザエちゃんが脚立を持ち出して廊下に掛かっている絵画を熱心に掃除しているところにたまたま出くわすと「旦那様、危ないのでちょっとこの脚立押さえてて頂けますか?」「あ、はい。(なぜ敬語?いつもはタメ口なのに)」と思って押さえているとその短いスカートの中身が見えそうで見えない絶妙な角度になっていたり、なぜか廊下の曲がり角でバッタリ出くわしたワカメちゃんが「きゃあ」と言って倒れたり「大丈夫?(今の絶対、オレの顔確認した後ぶつかってきたよね?)」その倒れた拍子にスカートが少しめくれて太ももがチラリと見えたりとか、色々とやってくれる。今もオレ達を迎えてくれてお辞儀をしているのだが、その豊かな胸の谷間がハート型の隙間から一番よく見える角度で止めている。そうして、上目遣いに見上げてオレの視線に気付いた後、恥ずかしそうに胸元を押さえて「シュウさんのエッチ」と言うまでが、一連の流れとなっている。




この4年で2人は、性格はともかく見た目はすっかり大人の女性へと変貌を遂げていた。以前は健康的な美少女という感じだったのが、今ではすっかりグラマラスになった。出てるところは出ていて引っ込んでいるところは引っ込んでいるというヤツだ。特にワカメちゃんの成長は著しく、服の上からでもハッキリと分かるその大きくて形の良い胸を事あるごとに揺らすので本当に目の毒だ。しかもサラサラストレートのきれいな黒髪と伏し目がちの普段の清楚な行動と相まってとても煽情的な見た目と言えよう。




「だが断る」

「ん?シュウさん、どうしたの?」

「ああ、いや何でもないよ~」




不思議そうに首を傾げるワカメちゃんにお茶を濁す。




(異世界ハーレムに全然興味がないといったら嘘になるけど・・・)




2人が自分に好意を持っているのかその真意は分からない。確かめたこともないし、その必要もないと思う。自分には、アイ一人がいるだけで十分すぎる程、幸せなのだから。






(完全に2人にからかわれているだけなのだが、今だに女心を分からないシュウなのであった・・・)



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