第112話 コタロウの覚醒
ヴウン・・・
途端にコタロウを青白い光が包み込む。なるほど、ファイアードラゴンを倒したのでレベルアップするんだな。オレがゴブリンキングを倒した時はレベルアップだけで一昼夜かかったけどコタロウはどれくらいかかるんだろ?それにしても、コタロウのやつビックリさせやがって。ピンチかと思ってハラハラしたじゃないか。
『にゃ、アレは師匠の教え通りに速さに緩急をつけてみたんだニャ』
「ふーん、そうだったのかあ。周りで見ていたオレも騙されるくらいだから当の相手であるファイアードラゴンはそりゃ引っかかるよなあ・・・ってあれ?コタロウ、レベルアップ終わったの?」
コタロウの方に目をやると、周りの光は消えていた。レベルアップはや!もう終わったのかよ?
すかさず鑑定してみると・・・
「鑑定結果」
コタロウ
種別:超白虎雷の賜物保持者
HP:68971(67972up)
MP:0
物理攻撃力 :42561(41562up)
物理防御力 :29489(28490up)
魔法攻撃力 :0
魔法防御力 :15983(15012up)
特殊スキル:超闘気 超剛力 超隠密 超神速 超感知
限界突破:完了
「お、おう」
しっかり限界突破完了している。あとはHPや攻撃力など、軒並み大幅なレベルアップを果たしているな。ん?種別が・・・
『すっかり騙されたぞ。我を騙すとはなかなかやるではないか』
「え?」
声のした方を振り向いてみる。
「う、うわわわわ」
いつの間にか目の前に全身深紅のドラゴンがいるじゃないか。
「お、お前ファイアードラゴンか?」
『いかにも我はファイアードラゴンだ。これが我本来の姿じゃ』
で、でかい。ファイアードラゴン本来の姿は、見上げるようにでかかった。全長12,3メートル、ちょっと大きめの3階建てのビルくらいの高さだ。今まで出会った敵の中でもかなりでかい方だろう。
ゴオオオオオオオオオオオオオ・・・
すると、ドラゴンのやつ炎を吐きやがった。これがドラゴンブレスってやつか。なんて冷静に分析してる場合じゃない。
「あ、アチチチチ」
なんと、ドラゴンブレスはゴルが張った結界を容易く突き破りオレ達に襲い掛かってきた。
「っく、ウインドウォール」
オレが目の前に手をかざすと、見えない空気の壁が幾層にも出来る。ほ、良かったぶっつけ本番だったがどうやら上手くいったようだ。ドラゴンブレスの影響で周りのモノが溶け出している。岩石まで溶けているところを見ると、恐らく数万度には達しているだろう。こんなのまともに喰らったら一発で消し炭になっちゃうよ。
『にゃあ、ご主人様ナイスだニャア』
コジロウからも褒めて貰った。さすが特級風魔法だ、今までとは威力が全然違う。今、オレ達の周りにはドーム状に空気の膜ができているのだが、それのおかげでドラゴンブレスの熱から守られている。空気の膜は、幾層にもなっていて一番外側の層が限界まで熱せられると消えて内側の層へと次々に循環される。そうすることによって、内部の温度を適正に保っているのだ。って言葉で説明するのは簡単だが、実際にこの作業を超高速で行うのは今までのオレでは無理だった。空気の層を循環させるコントロールはまだしも、それを一秒間に数千回実行させるだけの魔力がまるで足りなかったからだ。
レベルアップした今ではその作業を苦も無く実行できている。ま、アイさんの演算能力込みの話ではあるが・・・
『ご主人様をお守りできず申し訳ございません』
ゴルが、ガックリと首を落としながら謝罪する。いやいや、あんた達の上位種であるドラゴンの攻撃を防げってのが無理な話なんだからさ。
「気にするなよ」
オレはガルにニッコリと笑いかける。あれ?今のオレちょっとイケてたんじゃね?
「なあコタロウ、ってあれ?コタロウは?」
キョロキョロと辺りを見回すがドームの中にいない。え?どこだ?もしかして逃げ遅れたのか?
『にゃあ、コタロウはあそこにいるニャア』
コジロウの指す先を見ると、コタロウがファイアードラゴンと対峙している。
「こ、コタロウ。大丈夫か?今助けに行くからな」
あんないきなり数万度の炎を吐くような非常識なヤツと戦うなんて危険過ぎる。オレが助けてやらないと。
『にゃ、手出しは無用だニャ』
だよね?薄々分かってたからな、今回は。どうせ、そう言われるってことはさ。ショックなんかじゃないぞ。
『にゃあ、ご主人様、何をブツブツ言ってるんだニャア?』
コジロウが不思議そうにオレの顔を覗き込む。コジロウ、こんな時はほっといてくれてもいいんだよ。
「うん?コタロウのやつ大丈夫か?」
オレは慌てて、コタロウの方に目をやった。
「う、うわわわ!!」
ファイアードラゴンのヤツがとんでもない大きさのファイアーボール(もはやボールというサイズではないが)をコタロウに向かって飛ばしていた!!




