第99話 ダンジョンへの入り口
周りの景色を懐かしみながらそのまま先へと進む。暫らく行くと、コタロウと狩りをしていた川に差し掛かった。川原には、森ブタが何頭かいてのんびりと水を飲んでいる。ところが、森ブタたちはオレ達の顔を見るや一目散に逃げ出した。正確に言うとオレ以外のメンバーを見て逃げ出したのだろうが・・・
初めて森ブタと対峙した時は、思わず尻もちついてしまったんだったな。今となってはその出来事も懐かしい。
感傷に浸りながらも、どんどんと歩を進めていく。そして山の麓に到着した。そう、鳥居があるアノ特殊な山だ。初めての強敵、山グリズリーと戦った後にここでアイと会う事ができたのだったな。
「コジロウ、ここからは強い敵が現れるかもしれないからアイの事よろしく頼むな」
『にゃあ、任せてくれニャア』
「ゴルも頼むぞ」
『お任せください。強力な結界をすでに張っております』
まあ、敵に遭遇したとしてもさっきの森ブタのように一目散に逃げるだろうし、今のオレ達に向かってくるような強敵は現れないとは思うが念には念を入れないとな。
「なん食べとうと?」
「あ、これはマンゴーだよ。甘くておいしいんだよ」
野生のマンゴーだが、国産の高級完熟マンゴーのように大きくて甘い。コタロウに跨っているアイにも分けてあげると「美味しかねえ」満足気に言う。一体こんな山奥でどうやったらこんなマンゴーが育つのか分からないがそんな事は考えてもしょうがないのだ。
そのまま山を登っていくが、幸いな事に敵との遭遇はない。相変わらず、ここにしか生えていない独特な植物が生い茂っているので道々採集していく。今回は、余裕があるので沢山採って帰った後で栽培してみよう。
「ガル、敵がいたらすぐに教えてくれよ?」
『オッケイ、でも不思議な山だね、ここ。敵どころか全然なんの気配もないよ』
ガルの索敵能力は素晴らしく一キロ圏内ならアリの子一匹でも見逃すことはない。やはり以前と同じく何も出てこないようだ。
それにしてもあの頃はコタロウと一緒に山の中で常に特訓をしていたから山歩きも慣れていたのだが、久しぶりの山道が全く苦にならない。師匠と特訓三昧のコタロウは兎も角、何しろオレなんてここ最近全然運動していないのに。ありがたいことにどうやらこの世界では、どんなにサボっても一度上がったスキルやレベルは落ちないようだ。
『頂上付近に敵はっけーん』
鬱蒼とした木々を抜け山肌が見えだしたころにガルからの報告がある。やはり以前山グリズリーと遭遇した時と同じ場所に敵がいるようだ。
「ガル、相手のステータスは分かるか?」
山グリズリー:おなじみ山に生息する最も一般的なグリズリー。同じ種類でも、長く生きているため他の個体に比べて戦闘力は高め。
HP:520
その途端、オレの脳内に敵のデータが流れ込んでくる。なるほど、なかなか強いじゃあないか。こりゃあオレの腕試しには丁度いいな。ようしいっちょうやるかあ。オレは右手でコタロウを制する。
「コタロウ、ここはオレに任せてくれるか?ずうっとコタロウの特訓ばかり見ていたからたまには実戦も積んどかないとな。ようし、やるぞお」
「にゃあ・・・」
うん?なぜかコタロウがあっちの方を向いてオレと目を合わせないんだけど、いやそれだけじゃなくてガル達もみんなそっぽを向いている。どうしたんだ?
『なに言ってんだよご主人様、そんなのオレがとっくにやっつけちまったぜ』
その時、ガルが得意気に言い放つ。なんだよお、人がせっかくやる気になってたのにー。
とっくにやられてるのに、やる気満々のオレを見てみんな居た堪れなかったんだな。うわー、こりゃ恥ずいな。
「あ、なんか落ちとるよ」
頂上へと到着すると、例によって桐の箱が落ちていた。討伐された山グリズリーのなれの果てだ。箱を開けるとどっさりクマ肉が入っている。まあ、コレは持って帰るとするか。
桐の箱をアイテムボックスへ仕舞い込むと鳥居の方へと進んでいく。上がりきった先には、勝手知ったる境内が現れる。
「あったあった」
境内には、無数の木が植えてあるのだがそのうちの1本に用があるのだ。何の変哲もない、銀杏の木を見つけると全員でその木を取り囲む。その幹に手を当てて魔力を送り込むと
ブウン・・・
その場に魔法陣が出現する。そう、これがオレ達を目的地のダンジョンへと案内してくれるのだ。すると目の前が真っ暗になり少しの浮遊感が襲う。ちょっとした乗り物に乗っている気分だな、例えるならば新幹線といったところか、もちろん各駅停車の旧型じゃないぞ新型の揺れが少ないやつだ。数秒後、再び目の前が明るくなってきた、そう目的地に転移したのだ。
「目的地のダンジョンにとうちゃーく」
アイは、テンション上がりまくってそこらへんをキョロキョロしている。オレも周りを見渡してみる。
「うーーん、なんというかまあ、普通?」
オレ達が転移した場所は、ちょっとした草原だった。見渡す限り牧草みたいな背の低い草が生えていて遠くの方には木々が生い茂っている。まあ、とりあえず先へと進むか。
「アイ、方角はこっちでいいの?」
「うん。そっちの方やね」
オレの隣で一緒に歩きながら、ナビをしてもらう。コレもちょっとしたデートだよな。ハイキングって言えばいいのか?なんて事を考えていると向こうの方に人影が見える。あれ?ここってダンジョン内だよな?なんで人がいるの?と思いつつも近づいてみると。
「え?アレはもしかして例のアレだよな?」
こっちに向かって敵意剥き出しでキイキイ言ってるこの緑色の小人たちは・・・
「ゴ、ゴブリンだよな、アレ?」




