夢を見ていた
志賀晴海は夢を見ていた
決していい夢ではなかった
でも目が覚めた今では思い出せない
だから今日も不快感を感じつつ体を起こす
「あ、おはよう兄さん」
「あぁ、おはよう二乃」
ぼやけた視界を手で目をこすることで払いながら体を起こすと、左斜め前に正座した小柄で袖が長袖ピンクで、白いスカートを履いた長髪の少女が座っていた
彼女は二乃、晴海の妹で中学生
そして、晴海にとって大切なパートナーである
「兄さん、いくら必要最低限しか高校行かないからって、ちゃんといい時間には起きてよ、もう8時だよ」
「すまんな・・・って、お前も十分不登校だろ」
二乃の文句にツッコミを入れると、むぅっと頬を膨らませてぶっしょな顔を見せる
といっても、彼女はもともと可愛くて評判なので、決して普段からぶっちょではない
「いいもん、私だって兄さんの役に立てるよう頑張ってるもん」
「そうかいそうかい」
「何よその言い方」
文句を言う二乃をあしらい、立ち上がった晴海は自分の布団をたたみ、タンスにしまう
これが6畳2間のボロアパートに2人で同居し始めてからの日課
2間あるので台所や玄関がある部屋を居間、その隣を寝室として2人で寝ている
居間に出ると、中古で買った小さな木製の円形座卓には今朝の朝食であるエッグトーストとお茶が置いてあった
といっても、フライパンで焼いた目玉焼きを、トースターで焼いたパンの上に乗せただけ
実のところ、晴海も二乃も料理が下手で、二乃に至っては目玉焼き以外まともに焼けない
なので昼食と夕食はレトルトやカップ麺が多いのだが、せめて朝は二乃が頑張ってエッグトーストを作ってくれている
「兄さん早く座って、もう我慢できない」
そういって先に座卓の前に座っていた二乃が手でお腹をさすりながら急かしてきた
「そうだな」
晴海は二乃の正面に座り、2人は手を合わせる
「「いただき・・・」」
ガタガタ
突然音がなった
窓ガラスが揺れるかのような・・・ボロアパートだから多少の風で鳴ることはあるが
「一応見てくるよ」
そういって晴海が立ち上がると、玄関に行き、扉を開く
「どこだー」
呟きながら玄関の周りを見渡すと、自分の左足に何か触れた感じがした
晴海は現在裸足なので、ダイレクトにその感触が伝わる
全体的にフニャッとして、その外側はなんだかふさふさしている
晴海は見下げると、犯人がいた
『にゃー』
自分を見上げてくる、猫がいた