Restart of youth
除夜の鐘が鳴り響く神社の境内。そこで出した有坂の答えは。。。
===6===
「僕は……」
「ごめんなさい。私、もう待てませんでした。」
どちらの名前を口に出す前に瀬名原にそう言われた。
「そう。結果は出たわね。有坂くんは瀬名原さんを選んだけども、時間をかけすぎたのでフられてしまったのね。有坂くん、残念だったわね」
「いや、僕は……」
その後は有無を言わさず解散を宣言されどちらになにを言えるわけでもなく、その場に立ち尽くすしかなかった。梶原からは自業自得だな、と肩を叩かれて一人残されてしまった。
家に帰った僕は、あの時、奈月を選ぶつもりだったのに、奈月は僕が瀬名原を選んだと思ったみたいだった。まだ間に合うのだろうか。今から奈月を選ぶつもりだったんだ、って言っても遅いのだろうか。あの口振りだと、最初から自分は引くつもりで瀬名原に花を持たせるつもりだったんじゃないか。そんなことを考えているうちに朝になってしまった。
1月からはセンター試験も始まることもあって高校三年生は自主登校となっている。僕は既に推薦を貰っているから受験はない。奈月はどうなんだろうか。メールを送っても返事はない。既読もつかない。瀬名原に奈月から何か言われていないか聞いてみたけども「よく連絡してこれますね」と怒られてしまった。
梶原は勉強の気晴らしに学校に行っていると言っていたので奈月が居るのか聞いてみたが登校していないとのことだ。奈月に何らかの弁明と言うかなんというか、自分の気持ちをきちんと伝えたいと思っているのだけれど……。
結局卒業式まで奈月の顔を見ることは出来なかった。でも目も合わせてくれなくて話す機会がとれなかった。梶原と永瀬はうまく行っているようだ。大学も同じところを決めたようだった。結局、こっちに引っ越してきてからは自分の優柔不断な行動のせいでむちゃくちゃにしてしまった。友達と呼べるのは梶原と永瀬、奈月くらいしかいない。誰と卒業を祝うわけでもなく帰宅した。
今日から大学生か。入学式を終えて学食でお昼でも食べて帰るか、と食券を買おうと並んでいたら前に見知った後ろ姿があった。
「お待たせしてしまってごめんなさい。初めてここに来たので。あら。有坂くん。どうぞ」
「あ、ああ」
ああ、じゃなくて!なんでここに奈月がいるんだよ!追いかけて話しかけたが「おうどんが延びるわ」と言われて一緒にお昼を食べた。なんだこの時間は。向こうからはなにも話しかけてこない。僕から話かける空気ではない気がする。
「さて。有坂くん。返事を聞かせてくれないかしら。お正月に私、返事を聞いてないわ」
「だって、おまえ、あの時……」
「なにを言ってるの。有坂くん、どっちにするか言ってなかったじゃない」
「返事もなにも……僕はあの時、奈月を選ぶつもりだったんだ」
「そう」
「それで……奈月は……いいのか?」
「なにが、かしら?私は有坂くんが好き。有坂くんは私が好き。こうなったんじゃないのかしら?だったらそれで良いじゃない。3年越しの恋が叶ったのよ?もっと喜んでくれるかと思ったのだけれど。私はうれしいわ。だって3年も待ったんですもの」
「え?だってそれ……ええ!?」
「私はあの時、ありがとう、って言ったのだけれど」
「だって、つきあうことは出来ないって!」
「今は、って言ったわよ。そんなことも分からなかったの?有坂くんからあのあとなにも言って貰えないから悲しかったのよ?」
「ええ……そんな。。。」
「で?どうなの?」
「……僕は……奈月茜さんが好きです」
「うん、よろしい」
奈月の笑顔だ。満足したときの笑顔だ。この笑顔がみたくて僕は奈月を好きになったんだ。僕はもっとこの笑顔が見たい。君の笑顔が見たい。笑顔にしてみせる。
僕と彼女の春は今、始まったのだ
end
===エピローグ===
彼女、瀬名原さんといったかしら。彼女を諦めさせるために色々やって成功したわ。秋葉原で有坂くんに話しかけられなかったらどうしようかと思ったけど。でも上手く行った。
その後も私の思う通りに事が運んで良かった。
クリスマスデート、彼女から最後に思い出を頂戴って言われたときに確信したの。かの賭けは私の勝ちだって。思った通り大晦日に彼女は諦めてくれた。あとは私が有坂くんと同じ大学に行くだけ。
なんでこんな回りくどいことをしたのかだって?恋愛はお付き合いするまでが一番楽しいのよ?手に入れた後は……どうしようかしら。
いかがだったでしょうか。二兎追う者はなんとやら、ですが、実際は自分が獲物だったと気がついた時に彼はどうするのでしょうかね。




