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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゼルネア大陸伝説

焔の追憶~かつて復讐に囚われた男の記憶の欠片

作者: 佐伯梨奈

外伝ストーリーを執筆しましたー!結構時間が掛かりました。多分一週間ぐらいも時間かけたと思う。

本編ではまだ新しい作品とか投稿できていないと思いますけど先に外伝の一部を出そうかと。

若干、所々にネタバレや本編では触れていない要素がありますのでご注意ください(結構そのような要素は少な目にはしています)



今から随分前の話になる。何時の日だっただろうか?私の始まりはあの悲劇の幕開けから運命が定められていた。

苦しみ、悲しみ、卑劣さ、争い、裏切り、怒り、憎しみその全てが戦争によるもので生まれてきた。

復讐───それは己の未熟さを解放するため過去の自分を立ちきるもの。

それがどれだけいけない行為だとしても私は復讐すべく憎しみに囚われていた。

そんな私は所謂悪だと言える。別に悪だって構わない。何せこの世界に善良なんてこれ一つも無いのだから......


決して狂人等ではない......私は正義のため人々を救うために悪事を働いてきた。

だとしても結論は悪いことをしている正義の味方の敵、それは変わらない。


ここで一つ、焔の灯火って知ってる?焔とは己の魂に刻む炎の事。そんな私はある日、普通の何も力を持たない弱い村人から最強へと登りつめるある力を手にする。

───これは最弱が最強になり復讐に囚われた孤独の英雄の物語。





新堺暦2580年八月────季節は夏。現在地、砂漠。


俺はこの時、旅をしていた。勿論一人で旅をしているわけではなく隣にいるこの白髪でキリッとした格好いいおじさん事師匠と旅をしていた。

ギンギンに輝く太陽に浴びながら汗をだらだらと垂らし先の見えない前方を歩く。

正直、俺の方は大丈夫だが師匠の方が心配だ。師匠は何せ暑さ嫌いで今でも結構しんどそうにしている。

俺と師匠はコートをきてフードを被っているいかにも旅人らしい服装。そのためか暑い。


「ルドラさん大丈夫?」


じーさんの名前はルドラという。現役は帝都の武道の一角蒼龍教会の執行者だったらしく双覇波千流の使い手。

そして俺もその流派の皆伝持ち兼助手をしている。


「お前さんに心配されるとはわしも情けないなぁ。」


ルドラは笑って頭を掻いた。


「それは勿論心配ですよ。何せルドラさんの二番弟子何ですから。」


ちょっと照れくさそうに言ってしまう。因みに一番弟子は兄でその五番目に妹のリーシャだ。次いでに言うと妹の方がこの流派を極めている。

じゃあ俺は何?そんなの決まってる、皆伝持ちながらこう見えて最弱何ですよ。


「まあお前さんには色々と感謝と迷惑をかけてしまってるからな。」


「いえいえ、とんでもないですよ。俺は師匠と旅が出来るだけで嬉しいです!」


師匠と旅をしているのは勿論深い理由がある。師匠も俺に気にかけてこうして二人して旅を始めてからやや二年は経過した。その間、色んな街、村、国、大陸など足を運んだがどこも戦争できりがなかった。


「早く静かにゆったりな場所に住めれる所を探さないとなぁ。何処か良い場所は無いのだろうか?」


「ゆったり、か......」


旅を始めたのは住む場所を探すため。普通に住めば良いじゃんと思われるがそういう訳にもいかない。

これは師匠が俺のためにゆったりな暮らしができる場所を一緒に探してくれている。


やっぱりルドラさんもあの時の事を気にして.....


「何か見えてきたぞ。アルフ、彼処に何があると思う?」


「それ、俺に聞くものですか?はいはい、少々待ってくださいね。」


双眼鏡で向こうに見える何かを覗く。覗いた先には建物があった。

家?それも一軒だけじゃない!?

もう一度確認し確証した。これは村だ。彼処に村がある。


「村みたいなのがあるけどどうする?」


「行ってみる価値はあるからな。行ってみようか。」


俺と師匠二人は村らしき場所へと歩いていった。


「結構酷い村だな!」


「ルドラさん、それは言ったら駄目ですよ。禁句ですって。」


ちらちらと見える村人の前に盛大に爆弾発言をかましてきた師匠。

その声により少数ではあるが現地の村人達が俺たちを見ていた。


「はぁ~取り敢えずここの村の人たちのお偉いさんに挨拶でもしよう。師匠行きますよー!」


呑気そうにしていた師匠を置いていくわけにもいかなかったため一応声をかけた。

これだからルドラ元特尉は自分勝手だなぁ~。でもそれが師匠らしくて良い。


「結局のところこの村のお偉お方はどちらに居るでしょうか?」


「わしに聞かれても知らん。住人に聞いてみな。」


嫌々、そこで俺に投げ出されてもなぁ。全て俺任せって訳か.....師匠がそういった判断をくれるのなら俺も相応の対応を取ろうではないか。


「わかりました。俺に任せるのは好き勝手にして良い合図だろう。」


「ふっ...わかってるではないか。流石は二番弟子。」


師匠に褒められたことは正直嬉しい。といってもこの爺働きたくないだけだろう。

何時ものことであるがこの人が本当に凄い人なのに呆れてしまう。


さて、まずは何から始めようか.....村人達から片っ端ら聞き込みでもするか?

だとしても村人達は突然の外からの来訪者の俺達に怯えているのか?それとも珍しいのか、隠れて此方を見ている。

俺と視線があうと咄嗟に隠れる。


「まあ、当然と言えば当然か。」


右手を首にあてる。取り敢えず危害を加えるつもりもないので体内の魔力を最大限に抑えよう。

村内を探索すべく歩いていく。そんな中、この村の風景はと言うと腐敗しているというか廃墟だな。

ここ何十年間の間に戦争によって襲撃でもされた場所だと痕跡が残っている。


それを見るだけでも卑劣だ。どうしてこのような小さな村が被害に遭わなければならなかったのか。戦争は醜い。


今から随分前、新堺暦2569年位に開戦した第三次クロスノーズ魔法大戦では六大陸嫌、この世界の世界大戦規模クラスの大戦が今も続いている。始まりはある大陸の記念パレードの際、六大陸のお偉いさんが集まった.NFRequiem(アビス・レクイエム)で大規模大陸のバルバトラ大陸の王が暗殺された。当時、その事件は大陸中嫌、世界中が混乱に満ち、長年平和に保たれていた運命の狭間は降りた。多くの人達を虐殺、捕虜、奴隷、そして狂い人が現れおよそ200年前に起こった第二次クロスノーズ魔法大戦の続編は幕を開けた。そして戦争開戦前に現れた自称預言者の書いた本によると予言はほぼ一致する形で当たっていた。お伽噺話の一種にもこの話は描かれていたのだ。そうした事で色々とあり噂ではそろそろ終わりを迎えようとしているがその中でアルカディアという大陸のある一つの技術に成功し例の大戦から離脱した。そのお陰であるか今や戦争は三つの大陸だけが行われている。


今いる場所は今だ大戦中ではあるがここにはもう用は無さそうだし住むならここかな。


「あの~すみません。」


「は、はい!何でしょうか?」


取り敢えず近くにいた彼女から声をかけた。急に声をかけられて驚いているのか戸惑いがみられる。

そんなに怯えなくても良いのにな。何も危害は加えるつもりもないので。


「この村のお偉方ってどちらに居ますでしょうか?」


「お、お偉方ですか?実に苦しいのですがこの村の村長さんはもう......」


うつむいて表情が暗くなってしまった村人。これは聞いたらいけなかったパターンか?


「そうですか.....それじゃ困るな~。悪かったね、自分はこれで。」


空気を悪くしてしまったのは仕方無いがこの場を去ることにした。

師匠のところへと戻って今の状態を話した。

そしてルドラさんは「この村には宿屋があるそうだ。だから部屋が空いているか聞いてくる」と聞きに行ってしまった。


一人になった俺はボロボロになった木の椅子に座ることにした。


村長が居ないこの村はこのままでは崩壊してしまう。この村には子どもの数をやや居て大人の大半は年寄りばかりだ。

先程の女性は若かったが.....


「移動でもするか。」


椅子から立ち上がり見回りをもう一度確認を始める。

村の家の大破が五軒と後は砂漠に位置しているため水不足も激しい。

村人は皆痩せきっていて見るだけでも辛い。


これが戦争───争いの中で生まれた悲劇。

子ども達の場合、健康状態は良く多分大人達の食料を子どもに優先しているのだろう。


そう考えていた時、ある子どもが俺の足にぶつかる。子どもは衝撃により地面に倒れてしまったため俺は「大丈夫?」と手を差し延べた。


「こら!ミサ。はしゃいだら駄目と言ったでしょ!ごめんなさい。私たちはこれで失礼します。」


ミサという子と他二人の子どもを連れてこの場を立ち去ろうとした。

あの子達の親なのか?だとしても不自然すぎる。

あれから見回っても進展など無かった。それから師匠は無事部屋の確保が出来たとのことで俺も師匠がいる部屋に向かった。


「これからどうします?この村、明らかに酷い様ですよ。」


「そうだなぁ~酷すぎるにもこんな土地で人が住めていけてるこそ奇跡といっても過言ではない。」


師匠の言う事も何となくわかる。この地の土は触った感触だと死んではいない。畑もギリギリ使える程度には生きている。


戦争の痕跡か銃弾の残りなど数ところに落ちていた。


......

考え込む。


「俺らがこの村を再建しよう!どうせここに住むつもりだったしな。」


決意を表明し、宣言した。村を再建というのは中々難しいことである。ましてやその分野での知識のない俺と師匠には大変かつ厳しい日々などが続くだろう。

でも護れるなら......


この時、アルフの心奥底からの思いが脳裏に駆け巡った。

申し訳ない思いと後悔した思い、それ以外の多くのこと。全てが我ら人間が引き起こしたもの。

その一人であったアルフはこれがせめての罪滅ぼしだと悟った。


「始めるとしても時間は掛かってしまうけど師匠も手伝ってくれるか?」


正直、この先は俺一人で決めたこと。師匠だって自分のことでいっぱいであるだろうに付き添ってくれている。

せめて恩は返したいけど長くなりそう......


ルドラは途端、自慢の髭を触り始め考え込んだ。余り見たことのない師匠の険しい表情。

流石にこれ以上は無理か?

半分諦めていたがルドラは何か悟ったのか考え付いたのかにこやかな表情を見せ。


「良かろう!お前さんがアル坊がそんなキナ臭い事を言えるようになったとはなぁ~。嬉しいぞぉ!」


今までに見たことのない嬉しいという感じで肩を優しく叩いてくれた。

弟子であった俺も釣られて嬉しくなる。この感覚は懐かしい。まだずっと昔.....少年時代の己を思い出す。

力、復讐、争い、闘争心に関係なく純粋で何も知らなかったあの頃。

孤独の英雄が生まれる前の話。全てはそこから────







今から十六年前の春ぐらいになる。辺境に地に生まれた俺はすぐに生まれ故郷から離れ当時、まだアストレア家が貴族としてそれなりに成り上がっていなかった時、その村である一人の少女と出会った。




「今日からこの村に引っ越してきたライザートです。ほら、お前も挨拶しなさい。」


横にいる男性と目線の真正面にいる女性。男性の方はまだ

若く多分もうじき二十歳でも来そうな見た目の男。

そして女性の方はそれに劣らず若い見た目をしているが男性と違って随分と歳が離れていた。


その横にポツンといたのがアルフ・ライザート、当時十歳の子どもだった。

そしてその後ろで隠れている少女は四歳年の離れている妹であった。


「......初めまして。今日からお隣同士よろしく.....お願いします。」


元気のないというよりかひねくれているとも言ったら良いのか。小さな声で所々無造作に紹介を終わらした。

瞳には光すら輝きを失った俺。当時も最初こそはこのような様子だった。


「お兄ちゃん、もう家に帰りたいよぉ~。」


後ろで顔を覆い隠していた妹のリーシャが遂に我慢の限界か男の服の袖を引っ張ろうとしていた。


妹は極度の人見知りで今まで家族以外には心も開かず見るだけでも逃げたくなるほど。

これには男もやれやれとした感じになり


「本当にすみません。どうか今後とも宜しくお願いします。」


「いえいえ、大丈夫ですよ。それよりも可愛らしくて良い子達ではないですか!家の子達も兄妹なのですが余り仲良くないんですよ。」


その言葉を聞いてから女性とは別れて家に戻った。帰ってくると部屋の奥には椅子に座って穏やかそうな雰囲気を漂わせている正しく聖女と言える人がいた。


「あ!おかえりなさ~い♪ごめんなさいね、貴方にお隣さんを挨拶しに行かせたのは.....」


「いいや、それぐらいどうって来ない。母さんだって流石に外に出るのはまずいだろ?」


母さんと呼ばれた人物、フレア・ライザートは見た目は長く手入れしているであろう金髪に深紅に輝く緋眼の何処と無く二回目の現在の人生を歩んでいるソフィアと瓜二つ似であった。


母はこの村に来る前は良く人から聖女様と名が知れ渡っていた。そんな母には秘密が存在していた。


「ん?どうしたのそんな顔をして。貴方らしく無いわよアルちゃん。」


先程から元気のない俺を気にかけてくれたのか問いかけてきた。正直この時は何故、元気が無かったのか今でも覚えていない。唯一思っていたのは.....


「何でも.....ない。」


「あら、やっぱり何かあるんじゃないの?多分私の勘だけど~お父さんの事でしょ?」


突然、父のワードを出してきたことによって少し挙動をしてしまう。つまり図星をつかれた。

母は良く勘が鋭く嘘や悩み事などはことごとくバレてしまう。


「なあアルフ。親父の事はもう忘れろ.....お前の責任でもない。あれは俺の!」


「嫌、兄さんの責任じゃない。あれは!」


「はいはい!落ち着くの♪アルちゃんの責任でも貴方の責任でも無いわ。それは私の責任よ。だから言い争いはやめましょう。ね?」


母から少し厳しい説教を食らって兄は納得の行かない様子に椅子に座り、俺はしゅんとして落ち着いた。


「ふえぇーーん!!」


言い争いの結果、見ていたリーシャは頬を赤く染め目元から涙が溢れだし泣き出してしまった。

それを見た二人はやり過ぎた感に気付きもう一度落ち込んだ。


「あらあら、リーちゃんが泣いちゃったわぁ~。お母さんちょっとリーちゃんを部屋に連れていくね。」


母は「良し良し、ちょっとビックリしちゃったよね。」と言いながら抱っこして頭を撫でながら部屋から出ていった。


「「.......」」


沈黙が続く。二人とも暗い表情である種のことを抱え込んでいた。それはお父さんという存在。父は今、現在はいない───正確には消息不明とでも言った方が良い。


「ごめん兄さん......」


「嫌、お前が謝る必要はないさ。俺もちょっとむきにとなってた。」


実にこの状況はもう何度目だろうか?そのせいかアルフとその兄である彼の仲は非常に最悪のものとなった。

それを何時もリーちゃんと母が悲しい眼差しで見ていて情けない気持ちとなっていた。



そのまま何事もなく翌日を迎えた。兄は今日から仕事の開始だと言うことで仕事の正装に着替えていた。

兄は今日からこの村の自兵団として働く。結構今でも土地を巡っては隣町や国などが領土を広げようと攻めてくる事が多いらしい。

以前住んでいた故郷も狙われて今ではどのようになってしまったのかは知らない。


「そろそろ行ってくるからアルフ、リーシャと母さんをこれから護るのはお前だ。良いな?」


兄が何故、このような発言をしたのか、それはこれから一週間に一日帰ってくるか来ないかそういった事が毎日の如く起こる。今まで家族を護ってきた兄。それが出来なくなると次に家族を護るのは誰か?

勿論次男のアルフである。


(アルフは意地張りで気の強い奴だけどやはり心配だ。だけど俺も仕事が忙しくなるし......)


悩み考え込む兄。それをじーと見ていた母。母は彼に近づいて耳元でこう囁いく。


「貴方が心配する気持ちはわかるわよ。でも心配しなくて大丈夫よ。貴方が思っているよりアルフは強い子、それは貴方も知っているでしょ?」


フレアは後押しするようににこやかで彼の悩みを解消した。この時、俺は二人が何を話していたのか?何について悩んでいたことなど知るよしもなかった。

首を傾けて何話しているんだろう?って思ってたぐらい。子どもとは理解するのが結構難しいのである。


兄が仕事に行ってから少々時間がたった。特にすることの無かった俺は外の空気を吸うためこの村に来てからいち早く見つけた大きな樹までやって来た。

自然が豊かで落ち着く場所、そこは楽園のような風景だった。

蝶や花、もしかしたら妖精がいそうな綺麗で美しい。


(綺麗───!)


虜になってしまいそうになる。初めて見た自然の美しさ。見るだけで心が浄化されそうな......


「~~~~~~♪」


見とれていた自然からメロディが流れてきた。音はバイオリン?のような音が綺麗な音色で流れていた。


音のする方に進もうとする俺。音はあの樹から聴こえてくるようだ。

速足で向かうとそこには肩まで伸ばした綺麗な銀色の髪をしていた。そして俺と同じぐらいの年の子ども。肌は雪のように白く透き通り右手にはバイオリンを抱えていた。


その少女がバイオリンを弾く姿は何とも美しかった。弾く際に瞼を閉じ寝ているかのように見えるが表情が笑顔。時より少女の周りには妖精や蝶、可愛らしい動物などが周囲に集まりギャラリーを作っていく。


やがて曲は終わった。先程まで少女の音色聴いていた筈が気づけば終わっていた。

頭の中の脳裏からは色々と感じさせられた様子になった。


「す、凄いっ!」


「!?」


思わず口に出して思っていたことを言ってしまった。俺の声を聞き少女はビクッとした表情で目を開いた。


まずい!思わず口が......


「俺は怪しい者ではない。ただ突然この場を見つけてその音色に引かれただけで......」


戸惑いながら言い訳を言っていた。パニクっているのか良い言葉が見つからない。


少女はそんな俺を見て────


(まさかここに私以外が入ってこれるなんてビックリしちゃったわ。それに何この子。テンパっていてどこか可愛い。)


ニコニコの笑顔で今度は私が彼に話をかける。


「面白い子だね。」


アルフは少女に面白い子だと言われ思わず頬を真っ赤に染まった。彼自信、家族以外の女の子にそのような言葉を言われたのは初めての事で恥ずかしくなったそう。

少女はまだ言葉を続ける。


「貴方は何処から来たの?名前は?」


少女に名前を問いられた。


「えーと俺はアルフ。二日前にこの村に引っ越してきた。」


隠す必要も無かったため正直に答えたアルフ。それを聞いて少女も


「へぇ~つい最近、この村に来たんだぁー!私はティアよ。そしてこっちがローちゃんだよ。」


少女の名はティアと言い横にいた犬っぽいのがウーちゃん?と言う。

そのローちゃん?の見た目はどう見てもロウウルフという魔物だった。

何度か見たことがあったのでその姿が完全に一致していた。


「そのローちゃん?ってのはもしかして魔物だよな?」


「そうだよ♪ローちゃんは確かぁーA級魔獣だったような?」


「はあ!?ま、魔獣!!それって危険なんじゃ......」


魔獣は確かに魔物であるが魔物の一つ上の存在、ましてや彼女のいうA級。そのランクは非常に高い位置にいる。どうして魔獣を使役しているのかそれだけでもビックリであった。


「ああ....そういうことね。良く驚かれるけど大丈夫よ。言っとくけど私は魔族じゃないよ。貴方も同じ人間。ローちゃんを使役しているのは別に私がしたくてしているわけじゃなくてね、ローちゃんが勝手に私になついてきたの。」


魔獣と人間が仲良くなるのは流石にビックリした。予想外を遥かに越えていた少女ティアを興味ある形で見ていた。


「それより貴方元気がないね.....何かこう瞳からは輝きが無いというか。」


俺の眼も流石にバレてしまった。そう、俺の瞳には輝きが無い。これを所謂死んだ目と言うけど自分でも本当に目が死んでいるかなんて知らない。

でも彼女からはそう言われるのだから多分そうなのだろう。


「良くわからないんだけど気付いたらこうなっていたんだ。もう五年ぐらいも涙を流したこともない。」


「それってどういうこと?どうして涙が流れないの?」


ぐいぐいと近づきティアの青色に輝く碧眼に心を奪われた。綺麗な瞳───俺とは違った輝き。


「何で片方だけ......」


片方?ティアから言われた言葉は意味深だった。片方だけって?

咄嗟に左眼を抑えた。

あれ?何でさっき俺は左眼を抑えたんだ?

この行動が本人も驚くほど気味が悪かった。


「この話は終わりにしましょう!良かったらお近づきの印にこれからお話でもしませんか?」


それから長いこと楽しい話、彼女の話、この村についての話等々楽しい一時を過ごせた。


時が進むのは速くもう日が暮れそうな時間となっていた。長いこと話していたとしてもそれはとても短かった。


俺は帰らなければならない。何せ家にはリーシャと母さんが待っている。遅くなりすぎるとリーシャが心配しそうだしここらで帰ろうと芝生から立ち上がった。


「もう帰るの?」


彼女はまだ帰らないでともいうのかそのような眼差しでサインしてくる。

でも駄目だと首を横にふった。

それを見て悲しくなる彼女を見て俺もちょっぴり切なくなった。本当はまだ話したい気持ちはあった。

だけども時間だ。これは守らなければならない。それが兄、兄さんの約束だから。


「また.....また遊びに来るから大丈夫。今日は本当に楽しかったよ。久しぶりにこんな気持ちになれた。」


こんなに人生が世界が楽しいと思ったのはこれが初めての事だった。

これからのティアとの楽しい日々が、そして俺の事を唯一わかりあってくれるティアに出会えて嬉しかった。


そう───今まで止まっていた時間は再び動きだしティアとの出会いにより全ての運命の歯車は回り始めるのである。

再び希望を得た俺に来る最悪の絶望────これは始まりに過ぎない。




「戦争か......」


一人、奈落の地に居座る青年がいた。今日は珍しく綺麗な夜空が見え満月であった。


「おーい!こっちの殲滅は終わったぞ。」


遠くからここまで届くような大声でいう鎧と血の付いた剣を持っていたした人物がいた。


「俺の方もターゲットは始末した。他はどうだー?」


そして青年の持っている武器にも血が付着していた。そして顔と鎧にも少々。

先程まで戦闘があったこの奈落の地。そして地面には大量の......


「こっちも終わったよー!」


「此方も目標を殲滅。」


「よーし!俺の方も終わったぜ!」


「目標ロストしました。指示をお願いします!隊長、《軍神》殿」


隊長と呼ばれた男はこれからの指示を伝えるため口を開く。


「これから我らは戦勢を撤退する!お前たちは撤退の準備を今すぐしろ!」


「「「「「Yes Commander!!」」」」」


撤退の準備に取りかかる一団。そして青年も部下同様撤退の準備をする。


「結構派手に攻撃してくれたな。奴等は!」


隊長は近付き青年に向かって一言言う。青年もこの奈落の地を見て


「敵はクソばかりの考え無しのクズだ。こんな光景を見たとしても何も感じないさ。」


「それはわかるけどお前は悔しくないのか?自分の───」


「それ以上はやめろ。流石のあんたでもそれは許さない。」


隊長が言いそうになった言葉を途中で遮った。その後、何を言おうとしていたのか、どうして青年は仲間に怒っているのかその意味は不明であった。


「それにしても今回の戦闘も《軍神》殿のお陰で何とかなったね!」


横から話に混ざってきた部下の女性。大人ではあるがまだ若い。それに身体中には隊長と同じく傷だらけでもあった。


「嫌々、別に俺が何かした訳じゃない。君たちが頑張ってくれたから俺の戦略が上手く行った.....何時も助かってる。」


青年は遠慮する形で自分の取り柄ではないと語り少し笑った。この一団は全六人構成の団である。

その中で一番最弱な俺が出来ることは戦略を考える事、そして戦況を変えるポテンシャルと技能、そして頭脳を持ち合わせており何時しか仲間からそれ以外からも《雷焔(らいえん)の軍神》と呼ばれるようになった。


誰が名付けたのか何時から広まったのか知らない。ただ周りからはそう呼ばれる。

逆に格好いい二つ名みたいではあるが実際には違う。本来は世界最弱の人間としての意味でも有名であって世界中から知らない人は居ないんだと。


本当にクソったれな世界だな!何が嬉しくて最弱をなんて呼ばれなければならないんだ。

弱くて何が悪い。最弱だから何が悪い。努力もしたことのない奴に言われたくない。

これがつい一年前の自分であった。今はほんの少し落ち着いていると言えば良い。


(何故、俺はこんな場所で武器や防具を持って敵と戦っているんだろう......)


「良し!撤退するぞ!」


皆、馬に乗りこの奈落の地から去っていく。そして俺もちょっぴり切なくこの地を見届け発進した。



外伝 第一章 運命、そして始まりは..... END




読んで頂きありがとうございます♪

どうでしたか?と言っても内容について行けないと思いますよね!

でもそれで良いのです。今は理解できなくとも後々わかりますよ(笑)

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