プロローグ
てーへんだ!てーへんだ!と下町育ちの江戸っ子、それが日頃からの自慢の砂又吾郎が黄門様んところのうっかり八兵衛並な勢いで事務所に駆け込んで来た。
砂又は吾郎という名前からアダ名はゴロつきと陰では呼ばれていたが、本人前には誰も言わないでいた。余りにも彼の本質を貫き過ぎていて周囲が引いていた。そんな理由から本人はゴロちゃんと月並みな呼び名で呼ばれていて、彼も満更ではない様子だ。
事務所といっても築26年の雑居ビル2階の雑然としたオフィスとは到底呼べない空気感満載の空間だ。入口と1階の案内板には「在)帝都神霊研究ラボ」と書いてはあるものの、財団法人ではない…在は在京の在だから在るを意味している、帝都はそのままの東京を表し、神霊も神がかった事や霊的な事象を研究してると至ってワッカリ易いネーミングだと自負している。
そして、何を隠そう私の名前が盛り込んであるのだ。私は、都神 慎司という者だ、呉々も言っておくが、私の名前には一点の曇りはない。濁点は遠い昔、地獄の底に置いた来たから無いのである。嘘だと思うなら、地獄に行った時に閻魔様に俺の事を
聞くがいい、知り合いだと舌を優しく抜いてくれるはず。まぁ、痛いのはそんなに変わらないだろうがな。
それで、ゴロちゃんの話を聞いてあげなきゃな、
「どしたん?ゴロちゃん」
「今度こそ間違いない!出た…絶対出ましたけど!」
毎回、確実だからと持ってくる情報にはロクな事はない。話ぐらいは聞いてやろう、眠いけどな…
続く