[4:宗教的側面――インドの宗教]
宗教についてです。見た方に中立に受け取られるように書いたつもりですが、もし不快に感じる方がいらしたらすぐにお知らせください。
「ベジタリアンが多い場所はどこだと思う?」
「そりゃ、インドですよ」
「そうね、インドはベジタリアンが多い国として有名ね。住人の40%ほどがベジタリアンなのよ」
「やった、当たりましたよ、先輩。どうですか?」
「……じゃあ、どうしてベジタリアンが多いのかわかる?」
「えっと、宗教的な理由ですよね」
「インドの宗教は?」
「それくらいはさすがに知っていますよ! ヒンドゥー教ですよね!」
「よかった、わからなかったらどうしようかと思ったわ。その通り、インド人の約8割はヒンドゥー教徒よ。でも、それだけじゃないわよね?」
「え、そうなんですか」
「イスラム教を信仰している人も多いわ。それに、割合としては少ないけど、キリスト教やシク教、そしてジャイナ教の教徒もいる。割合でみると少なくても、人口の多いインドではそれなりに人数になるわ」
「なるほど、それで、宗教とベジタリアンの関係は?」
「まず、ヒンドゥー教だけど、彼らは牛を神聖なものとしているわね」
「牛を食べないんですよね」
「ええ、そして、イスラム教徒は豚を不浄として口にしない。人口の多いこの二宗教で口にしない牛肉と豚肉はあまり売られていないし、飲食店でも置いていないわね」
「でも、鶏肉とかは食べられるんですよね」
「そうね、インド人が肉を食べるとしたら鶏肉か羊の肉だろうけど、そういった肉もあまり食べられていないんじゃないかしら」
「え、どうしてですか。食べちゃいけないってわけじゃないんでしょう?」
「ヒンドゥー教やイスラム教では禁止はされていないわ。ジャイナ教では禁止されているけど、これについては後で説明するわね。さて、ヒンドゥー教では禁止されてはいないものの、ジャイナ教と共通でアヒンサーという概念があるの」
「アヒンサーですか?」
「そう、この言葉はサンスクリット語で非暴力を意味する。このアヒンサーの考え方があるから、インドにはベジタリアンが多いといわれているわね。ベジタリアンじゃなくても積極的に肉食を好む人は少ないの。祭りのときだけ肉を食べるという人も結構いるらしいわ」
「なるほど」
「さっきジャイナ教では肉食が禁止されているって言ったけど、ジャイナ教ではすべての生き物に対してアヒンサーの考えが適用されるわ。だから彼らは虫を吸い込んだり踏んだりしないように、白い布切れを身に着けたり箒を持ったりしているのよ」
「すごい徹底ぶりですね」
「ええ。有名な話では、カトリックの伝道師がジャイナ教徒に顕微鏡で水を見せたというものがあるわね。普段飲んでいる飲み水にも微生物が入っていることを知った彼らは、水を飲むよりも衰弱死を選んだらしいわ」
「いや、ストイック過ぎますって!」
「そこまでは中々できないわね」
「少し気になるんですけど、その人たちはその微生物に罪の意識を感じたんですかね、それとも、ただ単に規則があるからその選択をしたんですかね」
「それは本人たちにしかわからないことね。でも、ジャイナ教徒では実際に暴力を振るうことだけではなく、心の中で思うだけでもいけないことだとされているわ」
「世の中には色んな宗教がありますね……そういえば、仏教にも精進料理ってありますよね?」
「そうね、精進料理では動物性の食品はもちろんだけど、ネギやニンニクなども食べちゃいけないことになっているわね」
「仏教では肉食はオーケー何ですか?」
「禁止はされていなかったと思うわ。日本のお坊さんは食べている人が多いと思う。ただ、中華系の仏教徒は菜食主義の人が多いみたい」
「ほー、地域によっても差があるんですね」
「ヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教での菜食の背景には、基本的に殺生を禁じていることが背景にあるんでしょうね。イスラム教にしてもハラールと呼ばれる食事規定があるから、調理方法や屠殺方法にはすごく厳しいわね」
「インドで菜食が盛んな理由は大体わかりました!」
「ちなみに、キリスト教でも一部の宗派では菜食を奨励しているわ」
「そうなんですか。宗派によっても違うんですね」
「さてと、宗教についてはこれぐらいでいいかしら。インドが中心だったけど、宗教と食事の関係性は深いから他にも菜食主義の宗教もあるでしょうね」
「なるほど、また一つ賢くなりました!」