[3:健康への影響は?――バランスが大事?]
健康についてです。
結構気になる人もいるのではないと思います。
「さてと、次の議題は健康だね。君は菜食主義は健康にいいと思う?」
「うーん、どうなんでしょう。よくベジタリアンダイエットだとか、ベジタリアンは美容にいいとか聞きますよね。でも、逆に悪いって意見も聞いたことがありますし。……僕的には、肉も野菜も満遍なくとることが一番いい気がするんですけど」
「うん、私もそう思うわ」
「え!? 意外と普通の考え方ですね! でも、先輩は菜食ですよね?」
「私の場合は健康に対してはあまり関心がないから。別に長生きしたいとも思わないし」
「そうなんですか!? というか、結論出ちゃいましたけど、どうするんですか?」
「いやいや、私と君の意見が一致しただけでしょう? 話はもちろん続けるわよ」
「なんだー、ビックリしました。それで、結局、健康的にはどうなんですかね?」
「菜食の利点としては次のことが挙げられるわ。一つは、肉と比較して消化がいいこと。そしてもう一つはカロリーが抑えられることね」
「えっと、ダイエットにいいってことですか?」
「まあ、痩せられるんじゃないかと思うわ、継続できればだけどね。それと、胃もたれもしないだろうし、胃腸には優しいんじゃないかと思うけど」
「なんだか、健康にいい気がしますけど。デメリットは何かあるんですか?」
「当然、肉を食べないと取りずらい栄養があるのよ。いくつかあるけど一番大きいのはアミノ酸かな。タンパク質といってもいいけど。これは肉、卵、牛乳に多く含まれているからね。普通の人はそこから摂取しているわね」
「タンパク質ですか? それなら、僕知ってますよ。大豆にいっぱい含まれてますよね。大豆を食べればいいじゃないですか」
「確かに、大豆は畑の肉と呼ばれるくらい豊富なタンパク質を含んでいるわね。でも、大豆だけでは健康にはなれないわよ」
「え? どういうことですか?」
「タンパク質というのは、色々な種類のアミノ酸が組み合わさってできているの。そして、そのタンパク質に含まれるアミノ酸の種類は食品によって違う。つまり、肉の代わりに大豆を食べても、摂取できないアミノ酸があるということよ」
「ええ!? そうだったんですか」
「そう。そこが一番の問題なの。必須アミノ酸という言葉は聞いたことがあると思うけど、肉や卵にはそれが豊富に含まれている。それに比べると、大豆はあまり良質なタンパク質を含んでいるとはいえないわ。だから、菜食で健康的な食事を摂るためには、相当な工夫を凝らさないといけないだろうね」
「大豆以外には何かないんですか」
「そうだね、キヌアやチアシードかしら」
「……いや、そんなもの食べたことないですけど」
「でしょうね、他にもそば粉とかも候補には上がるかもしれないわね」
「……普通の食事にそば粉なんて使いませんけど」
「食べ方にも気を付ける必要があるわね。大豆だったら、豆腐や納豆にすると吸収しやすくなるかな」
「めんどくさ、毎日は食べてられませんね……やっぱり菜食は駄目じゃないですか」
「ここまでは菜食の悪いところばかり挙げてきたから当たり前ね」
「逆に、肉を食べることで悪いことなんてあるんですか?」
「そうね、肉を食べること自体には特に悪いことはないと思うわ。ただし、肉食で陥りやすいのが食べ過ぎね。菜食では食べ過ぎるということは起きにくい」
「確かに、肉がメインの欧米食って健康にあんまりよくないイメージがありますね。向こうでベジタリアン食がブームになるのも、普段の食習慣が食べ過ぎだからなんですかね」
「まあ、そういうことよ。過食よりは菜食が健康的ってことね。ただし、菜食でも糖分を摂りすぎたりすれば健康的とは言えないわね」
「ああ、確かに、日本で売られているグラノーラってすごく甘いですもんね」
「肉を食べなくても、糖分を含む食品を食べ過ぎれば、肥満や糖尿病の原因にもなるし、健康的ではないでしょうね。砂糖の摂りすぎが体に良くないことは言うまでもないことでしょうから」
「って、菜食批判ばっかりしていますけど、先輩、本当にベジタリアンですよね?」
「だから言ったわよね? 私は健康に無頓着だって」
「……そうでしたね」
「ところで、ここまで話をしてきたのはヴィーガンに関してのことよ」
「ゔぃーがん、ですか?」
「君はベジタリアンにいくつかの種類があることを知っているかしら?」
「えっと、知りませんでした」
「なるほど。なら説明しておくわね。今までの話題ではそこまで大きな問題にならなかったけど、こと健康に関しては大きく関わってくるからね。まずさっき言ったヴィーガンだけど、この人たちは完全菜食主義者ともいわれているわ。彼らは、肉はもちろん、卵や乳、蜂蜜を含めて動物由来の食物を一切口にしない。それどころか、革製品やウール製品などの利用もしない人たちよ」
「ええ、食事だけじゃないんですか!?」
「うん、そうなるわね。ダイエット目的の人もいるけど、動物愛護の観点からヴィーガンになる人も多いわね」
「ストイックですねー。僕には真似できません」
「ちなみに、フルータリアンという人たちは果物などの採取しても植物自体が死なないものだけを食べる人もいるわ」
「いや、それ生きていけませんってば」
「でも、実際いるんのよ、そういう人たちが。あとは、オボ・ベジタリアンとかラクト・ベジタリアン、オボ・ラクト・ベジタリアンなんかもいるわね」
「オボ? ラクト? どういう意味ですか?」
「オボは卵、ラクトは乳という意味よ。それぞれ、卵、乳製品、そしてそのどちらも食べる人たちね。卵は無精卵だけとか、乳製品は生産過程で殺さないものだけに限る人もいるわね」
「奥が深いんですね」
「正式には認められていないけど、魚は食べるという人もいるでしょうね」
「正式?」
「『英国ベジタリアン・ソサエティー』とか『国際ベジタリアン連合』、『日本ベジタリアン協会』という組織があるんだけど、魚食菜食主義者はそれらの組織からベジタリアンだと認められていないのよ。そういった人たちはスード・ベジタリアンと呼ばれるらしいわ」
「いろいろあるんですね、覚えられないです」
「別に名前なんて覚える必要はないわよ。そういう人たちがいるってことを知っていればそれでいいの」
「わかりました!」
「ちなみに、これは前で話した動物愛護と動物福祉の話にもつながるわ。愛護の立場の人の中には、卵と乳製品は命を奪っていないから食べてよしとするひともいるけど、福祉の観点では飼育環境が悪ければそれもよくないと考えるわね」
「なるほど、そういった違いもあるんですか」
「よし、それじゃ、健康の話に戻るわね」
「あ、そういえばそんな話でしたね」
「ベジタリアンでもヴィーガンはさっき言った理由で健康的ではないと思うけど、卵や乳製品を許容するならばその限りではないと思う。バランス的なタンパク質の摂取もかなり現実的になるでしょうしね」
「なるほど、肉を食べ過ぎることもないですしね!」
「それでも、肉を含めたバランスのいい食事に勝るものはないとは思うけどね」
「ですよね!」
「さて、健康についてはこれくらいにしておこうかしらね」
「次は何の話ですか!?」
「そうね、次は宗教と菜食の関係について話そうかしら」
健康に関して言えば最近はいわゆる糖質制限食が注目されていますね。
血糖値の上昇を抑えられるので糖尿病の予防になるのはもちろんですが、がん予防や認知症予防にも効果があるようです。前者はがん細胞のエネルギー供給源として糖由来のグルコースが利用されること、後者については老化によって糖代謝が行えなくなった脳の神経細胞がケトン体を利用できるということに関係しているようです。
ヴィーガンと両立するなら、タンパク源は大豆、脂質源はココナッツオイルの中鎖脂肪酸やナッツ類から摂取することになりそうですね。いずれにしてもタンパク源の候補が少ないことがネックになりそうです。