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魔法少女キノコちゃん  作者: 姫井七海
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2,木乃子と玲衣

〜前回のあらすじ〜

動くテディベアに騙されて、何の得も無く、魔法少女にされてしまった木乃子。2体のスライム型の人の魂とやらを見事に倒し、自分の魔法少女の力に少しだけ自信を持ちました。


〜今回のあらすじ()〜

第一話から一週間後のお話。


一言で言うと…


仲間ができました。

 晴天の広がる空の下、エネルギーが尽きたような歩き方をする人がいる。

 木乃子だ。

 先日、化け熊に騙されて魔法少女となった木乃子は、今週のうちの5日間、10体余りのスライム型の人の魂とやらにおそわれ、1キロはある槍を振り回して、普段はしないくらいの有酸素運動を行っていた。お陰で運動というものを全くやっていなかった頃に比べて体力はだいぶついたが、手足は筋肉痛で悲鳴を上げていた。こんな毎日を続けられればもっと強くなれるのだが…

 木乃子には、限界がありますから。

 そんなくたくたな木乃子が向かうのは、学校の屋上。校庭にはまだスライム型のモンスターが湧いていたが、処理を諦めたらしい。手摺に掴まって、1段ずつ確実に階段を上る。


「…もう…だめだ…」


 最後の1段を上りきり、ドアを開け放って倒れ込む様に屋上へ転がり出た。空を見て、呼吸を整える。


 はぁ、私にはこんなに毎日、送れねーよ。


 そんな彼女の視界に、いつもの仲間なあの子が映った。


「ん、木乃子か」


「…玲衣ぃ」


 寝転んでいた木乃子の顔をのぞき込むようにしゃがみこんだのは玲衣だ。木乃子は玲衣に甘えるように手を上にあげた。


「玲衣ぃ、助けてぇ…」


「ん?ああ、校庭に湧いてるやつら?いいよ、ボクが片付けてくるよ」


「…ありがとう…」


 玲衣はそう言うと、校庭側を向いて屋上の格子にとびのった。

 …ん?待てよ?木乃子ちゃん、玲衣ちゃんて、え、あれ?


「武器召喚」


 小さく呟かれた言葉にしたがうように、玲衣が握った小さなバッチが紫に光りだした。眩しいわけではなく、いかにも怪しげな光を放つバッチは、その形を変形させ、柄、と呼べるほどの長さに至った。そして、先端から丸みを帯びた長い刃が伸びる。

 まさに、死神が持つ鎌そのものだった。


「…玲衣…え、ま、待てよ、え、どういうことだ?」


 驚いて、筋肉痛を忘れたかのように腰を上げた。


「どういうこと?あー、えっと、はあ、木乃子の先輩だよ、簡単に言うと。うん。先輩先輩。」


「いや全く意味わかんねーんだが。」


 玲衣は木乃子を向いて、ニヤリと笑うと屋上から身を投げた。


「はぁっ?!玲衣!?」


 木乃子が飛び起き、鉄格子に身を乗り出した。

 校庭のど真ん中に、玲衣は着地していた。悠々と周囲を見渡し、授業中にも関わらず、大きな鎌を何一つ気にせず、当然のように持つ。凛々しいような、違うような…。

 玲衣の周りには、やはり黒いスライム状型の生物が湧いていた。


「へぇ。ブラックスライムちゃんか。ボクに切られたいと?」


 玲衣は鎌を振りかぶり、力強く前へと弧を描く様に薙ぎ払った。

 鎌の刃が、近くにいたブラックスライム(玲衣命名)を真っ二つに斬り裂いた。


「うわぁ…あれってわたしよりやり込んでるやつですよな…」


「もちろん。だから彼女は強いん……」


 突然手摺に現れた先日のテディベアに、木乃子は掴みかかった。


「武器召喚、槍っ」


 木乃子ちゃんにも、召喚くらい出来たらしい。


「ちょ、待って、何をする?!」


「...墜ちろ、くそ熊。」


 木乃子はそのテディベアを5階の屋上から校庭へ投げた。…投げ落とした。

 テディベアはもこもこした体を巧みに操り、クルクルと回りながら校舎よりの砂地に落ちる。


 ー新たなモンスターが現れましたー


「ほう、次はくそ熊かぁ!!」


 玲衣は校庭に着地したばかりのテディベアに向かって両手で持った鎌の先を定めた。


「れ、玲衣、待ってくれ!僕だよ!」


 軽々しく飛んだり跳ねたり身を翻したりで玲衣の振り回される鎌の刃を避ける。すばしっこい。


「お前だから殺るんだよ!」


「僕はただのぬいぐる((ry」


「なにがぬいぐるみだぁ!?」


 玲衣は右手に鎌をホールドし直した。


「…僕に逃げる権利はある!」


「誰が逃がすかあああ!!!」


 頭上から声がした。

 地面に槍の矛先を向け、屋上からテディベア目掛けて頭から落ちてきたのは、木乃子だった。


「熊め、消えろ!」


「僕の名前は熊じゃない!敢えて略すならDMOと呼んでくれ」


「知らないけど消えろ!!」


 直後、地響きのような音を立てて、木乃子は槍と共に地面に着地した。その衝動で周囲が砂埃に巻かれる。


「まったく、DMOだよ。」


「知らないけど、どこへ行った。」


 砂埃の中、身を起こして足元を見たが、DMOの姿は無かった。けむを巻いてどこかに逃げたらしい。ただ残ったのは、頭の中でする、DMOと名乗るテディベアの声だった。


「さすがに攻撃を仕掛けられたら僕とて逃げるよ。君たちは僕に攻撃を仕掛けたし、もちろん僕も正当防衛が出来るってわけ。だから気が向いたら、僕も君たちに攻撃しようかな」


 警告らしい。校庭に立つ木乃子と玲衣の腹を立てるような、宣戦布告らしい。


「頑張ってる協力して、僕を殺しに来てね」


 それを最後に、2人の意識からDMOのアクセスは止まった。


「…まあともかく、ボクだけじゃないってことを知ってほっとしたよ、木乃子」


 玲衣は息をついて、木乃子を向いて微笑んだ。それに木乃子も微笑み返した。


「玲衣はやり込んでいるんだろ?」


「まぁ、暇だからなぁ」


 玲衣の手にあったあの鎌は、気がつけば無くなっていた。両手を後頭部で組み、玲衣は木乃子に言った。


「なぁ、木乃子。…ゲーセン、行こーぜ」


「あ、全身の筋肉が…拒絶している…」



 〈続く〉

誤字脱字、あったらすみません。

報告していただければ後に訂正いたします。

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