秋が来た
昨日眠れなくて
布団でじっとしていたら
虫の声がしているのに気がついた
今朝草刈りして
疲れてふと周りをみたら
いつもの朝は通勤の車の中で
あなたのことばかり考えて
外をじっくり見たりしていなかったから
分からなかった
ススキの穂が出ていて
ひまわりが枯れていて
気の早い落ち葉が一枚風に舞っていた
ああ
時間は流れている
秋が来たんだ
あなたが病院に運ばれたという
電話が職場にかかってきた
あの日はまだ
4月
山桜が咲いていた
あなたの呼吸は止まったままだったけれど
機械があなたを呼吸させ
薬があなたの心臓を動かして
それでも
あなたの身体は温かく
眠っているようだった
5月のはじめ
暑い暑い日が続いた
それから
あなたの心臓は鼓動することをやめ
たくさんの花と折り鶴に囲まれて
あなたは白い棺の中にいた
ああ
あの日から
時間は決して歩みを止めていなかった
もう
秋が来たんだ
でも
下駄箱にはあなたのローファーがずっとそこにある
あなたの夏のサンダルもそこにある
あなたの肌着はいまも脱衣所の棚に収まっている
お母さんの心は
まだ4月に止まったまま
春が過ぎて
夏が来て
秋が来ても
あなたがここにいないことが
あなたがここにいないわけが
理解できない
あの電話がかかってきたときからずっと
背中に重いものがあって
息が苦しくて
どうしていいか分からない
あなたのお通夜は終わったのに
あなたの荼毘は済んだのに
あなたのお葬式は終わったのに
あなたの四十九日は終わったのに
あなたの初盆は済んだのに
あなたの百日も終わったのに
何も変わらない
信じられない
お願い
帰ってきて
嘘だといって