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あなたへ...2015年9月

秋が来た

作者: あずま

昨日眠れなくて

布団でじっとしていたら

虫の声がしているのに気がついた


今朝草刈りして

疲れてふと周りをみたら


いつもの朝は通勤の車の中で

あなたのことばかり考えて

外をじっくり見たりしていなかったから

分からなかった


ススキの穂が出ていて

ひまわりが枯れていて

気の早い落ち葉が一枚風に舞っていた


ああ

時間は流れている

秋が来たんだ


あなたが病院に運ばれたという

電話が職場にかかってきた

あの日はまだ

4月

山桜が咲いていた


あなたの呼吸は止まったままだったけれど

機械があなたを呼吸させ

薬があなたの心臓を動かして

それでも

あなたの身体は温かく

眠っているようだった

5月のはじめ

暑い暑い日が続いた


それから

あなたの心臓は鼓動することをやめ

たくさんの花と折り鶴に囲まれて

あなたは白い棺の中にいた


ああ

あの日から

時間は決して歩みを止めていなかった


もう

秋が来たんだ


でも

下駄箱にはあなたのローファーがずっとそこにある

あなたの夏のサンダルもそこにある

あなたの肌着はいまも脱衣所の棚に収まっている


お母さんの心は

まだ4月に止まったまま


春が過ぎて

夏が来て

秋が来ても


あなたがここにいないことが

あなたがここにいないわけが

理解できない


あの電話がかかってきたときからずっと

背中に重いものがあって

息が苦しくて


どうしていいか分からない


あなたのお通夜は終わったのに

あなたの荼毘は済んだのに

あなたのお葬式は終わったのに

あなたの四十九日は終わったのに

あなたの初盆は済んだのに

あなたの百日も終わったのに


何も変わらない

信じられない


お願い

帰ってきて

嘘だといって





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― 新着の感想 ―
[良い点]  情緒が伝わってきます。 [一言] 自分がそうなったらいやです。
2015/09/06 22:21 退会済み
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