11.小野雫
週末の金曜日夜、仕事が終わってクタクタに疲れているのにも関わらず眠れない。
ベッドの上で三角座りをして、一人悶々と悩む女が一人。
私はイライラしていた。
ゆうきくんともう2週間会っていない。
というのも、合わせる顔がなくて、会えないのだ。
同窓会でゆうきくんとサオリが並んでいるのを見て、ぶり返してしまった。
「小野雫なんかじゃ絶対ゆうきくんに釣り合わない。」
「ゆうきくんと付き合うなら、美人で社交的でサオリくらいのレベルのコじゃなきゃ。」
周りの目を気にして卑屈になってしまう私。
そんな自分が情けなくて、嫌いで、とてもじゃないけどゆうきくんにこんな自分見せられない。
これでも少しは変われたと思っていた。
高校生の頃って、良くも悪くも人間関係が密だと思う。元から人見知りで、人一倍臆病だった私は、「嫌われちゃいけない」気持ちが強すぎて、一部の気を許せる友人たち以外には、自分を出せなかった。表面上は当たり障りの無いように笑顔でふるまい、内面では人の顔色を伺ってびくびくする。それが高校生の私だった。
大学に上がると、人の数も増えて人間関係も広がった分、薄くなってホッとした。
気の合う友達と過ごして、合わない人間とは離れればいいのだ。
社会人になると、さすがにそうはいかないが、そのころには自身の内面もだいぶ強くなっていた。
そりの合わない人というのにも耐性が出来てきて、割り切って付き合えるようになってからは、やたらに傷つくことも無くなった。
そもそも、周囲の風評なんてものは、頼りなく、無責任なものなのだ。
去年から今の課に配属になってからは人間関係にも恵まれ、少しずつ自分を出せるようになってきた。
しかし、高校時代の象徴ともいうべき澤井祐樹、さらには岸沙織と再会して、臆病な自分が戻ってきてしまったのだろう。ヤツに嫌われるのが怖くて、釣り合わないと周囲に思われるのが怖くて、また逃げてしまった。
考えれば考えるほどに落ち込んでいく気持ちに耐えきれなくなり、ベッドに倒れこんで芋虫のようにゴロゴロと転げまわる。
その時、ふとゆうきくんの顔が頭に浮かんだ。
・・・遠くを見ながら痛みに耐える顔で「理由は結局分からなかったけど、俺が何かして嫌われたんだと思ったんだ。だから懇親会で6年ぶりに会った時は、正直怖かった。」
・・・安堵のため息を吐いて「また嫌われたかと思った。」
そして唐突に気が付いた。
私が逃げる度、ゆうきくんは傷ついているのだ。
自分が周りからどう思われるのか、傷つくのを怖がって逃げてしまうのは、自分勝手なだけで、全然ゆうきくんのことを大切にしていない。
私が一番大切にしたいのはゆうきくんなんじゃなかったの?
そんなことにも気が付かなかった自分のバカさ加減にまた自己嫌悪に陥りたくなるのをグッと堪える。
今も傷ついているかもしれない彼。
私にも出来ることがひとつだけある。
心を決め、スマホに手を伸ばした。