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9.同窓会

 「久しぶり!元気だった~?」

 「うん元気元気!佐奈も変わりない?」

 「相変わらずだよ、仕事ばっかり!」


 佐奈は、高校生の時からの一番親しい友達だ。大学に入り、社会人になって、段々と疎遠になる友達が多い中、佐奈との付き合いは途切れず続いている。

 といっても、大学卒業後に「美容師になりたい!」と一念発起して専門学校に入り、今は東京のヘアサロンで働いているので、遠距離+休みが合わず、なかなか会えない。


 今回は、明日ある高校の同窓会に合わせて帰省したのだ。

 「学年全体では、卒業以来初めての同窓会だよね。」

 「うん、なんか緊張する。」


 「お待たせしました~。」

 ここは、高校生の時から来ていた地元のカフェ。私たちの憩いの場なのだ。

 カランカランと氷を鳴らしてアイスティーをかき混ぜながら、経過した6年という時間に、しばし互いに思いを馳せる。


 高校生の時、ゆうきくんに関して佐奈に話したことは一度もない。

 

 でも、私がヤツのことを気にしていたことには、薄々気づいていたと思う。特に、ヤツを避けるようになってからは、時々もの言いたげに見られることがあった。私が話したくないのを察して、触れないでいてくれたけれども。


 しかし、付き合うこととなった今、知っておいてもらった方がいいかもしれない。

 地元では、どこに目があるか分からない。二人でいることころを目撃されて、誰か他の人から佐奈の耳に入れば、友情関係にヒビが入る。


 「あのさ、知っておいてほしいことがあるんだけど・・・」

 「なに?」

 「澤井祐樹くんっていたじゃん?」

 「ああ、高校の時しずくが好きだった人ね。」

 「!!!」

 あっさりと言われて固まる私に、


 「しずくは言わなかったけど、こちとら毎日一緒にいたんだから。さすがに気付くよ。」

 佐奈は人の悪い笑みを浮かべて言うのだった。そして、


 「もう時効だよね?」

 と同じ口で今度は気遣うような表情で言う・・・恐るべし友人である。


 「それが・・・・付き合うことになった。」


 「えっ!ええええ~~~~~~~~!!!!!」


 「しずくサン・・・覚悟なさい。」

 その後、落ち着いた佐奈から、微に入り細に入り問い詰められたのだった。




 翌日


 同窓会は、地元のこじゃれたイタリアンレストランを貸し切って行われた。

 私たちの同級生が主催し、同じ学年のみ招待されている。よって、皆知っている仲だ。


 佐保と会場に足を踏み入れると、早速懐かしい顔が駆け寄ってくる。


 「しずく、サホ久しぶり!!来てくれてありがとね~。」

 細身のスタイルにつやつやした栗色のミディアムロングヘア、流行のミニ丈シフォンワンピースに美しく手入れされたネイル、と一分の隙もない綺麗な大人の女性になった岸沙織が現れた。


 「二人ともオネーサンになっちゃって!また後でゆっくり話しようね。

 今回の同窓会、私が企画したんだ。あっちで受付おねがいしまーす。」


 佐保が何か言いたそうにこちらを見たが、私の意識はすでに会場の一角に向かっていた。


 ゆうきくんがサッカー部の友達数人といる。

 どんなに懐かしい顔ぶれが揃っていようと、一番に私の目を惹きつけるのは澤井祐樹・・・それは、6年経っても変わらないのだった。


 ふと、こっちを見たゆうきくんと目が合い、ニヤッと笑ったヤツから全力で目を逸らす。


 「ナニ?しずく挙動不審なんだけど。」

 佐保に言われて、小声で返す。

 「いらん騒ぎは嫌だから、付き合ってることはオープンにしないってことでお願いした。」


 それを聞いた佐保は、思いっきり呆れた顔をして、

 「まあー相手が相手だからしずくの気持ちも分からんではないけど・・・もっと心配するべきところがあるような・・・」

 と言葉尻を濁した。




 2時間が経過し、皆いい具合にアルコールが入って・・・入りすぎた人も一部いて、場はかなりほぐれていた。私もバドミントン部の仲間と旧友を温めつつ、休みなくワインを飲み続けていた。会費分は呑まなくちゃ。


 「それではこれより、さきほど記入してもらったアンケートをもとに、我ら15期生の一番○○を発表したいと思いまーす!それでは、『一番イメージが変わった人』は・・・」

 元バスケ部宍戸クンが、相変わらずの軽いノリで進行を始めた。

 これは、同級生同士で題目に合った人を投票するもので、高校卒業の時にもやった。選ばれた人は、自分がどういう風に見られているかレッテルが張られ、選ばれない人は選ばれない人で、自分が選ばれないような存在であることがわかる、見方によったら趣味の悪い遊びだなと思う。


 大半を聞き流していたが、次の発表にはワインを吹きだしそうになった。

 「それでは、続いては『一番お似合いのカップル』です。男性は・・・澤井祐樹!」


 周りに押し出されるようにして即席のステージに上げられたゆうきくんは、戸惑いの表情を浮かべてこちらを見ていた。私は、あっけにとられてただただ見返すしかない。


 「女子は・・・岸沙織!

 美男美女カップルですね~二人はサッカー部の部員とマネ―ジャーという関係から友人関係を経て、社会人になってから男女交際へと発展したそうです。15期生の仲間からこんな素敵な・・・」

 残りの言葉は耳に入ってこなかった。


 アンケートの集計を元にこんな場所でアナウンスされるということは、今現在は別として、交際していたのは事実なのだろう。頬を赤らめながらステージに上がるサオリの横で、困惑しながらサオリを見るゆうきくん。


 ゆうきくんがサオリと付き合っていたことと、今ステージに並んでいる二人がこれ以上ないってくらいお似合いであることと、どちらにショックを受けているのか分からないまま、私はそっと席をはずした。


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