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脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第1章ファーズランド攻略篇
8/250

“出発 the starting point„

2015/5/2(土)改稿。

2015/11/22(日)再改稿。

 暫くの間、錦織にしきおりさんと話し込んでいると店員が赤く輝くソースの掛かったオムライスと茶色く煌めくソースの掛かったオムライス、それぞれを持ってやってきた。


 「こちら、新鮮たまごのふわふわオムライス特製ケチャップかけと新鮮たまごのふわふわオムライス熟成デミグラスソース仕上げです。ごゆっくりとお召し上がりくださいませ。 」と丁寧にオムライスの乗った皿をテーブルの上へと添え、颯爽と去っていく。周りを改めて見渡してみるとテーブルは満席で忙しいのが伺えた。


 赤く輝くソース、もといケチャップのオムライスを目の前に添えられた錦織にしきおりさんは気づくときには既にそれを口に運んでいて、ニタァと頬を落とすように笑みを浮かべたことと思うと「これ……おいしいよぉ」と言っては更に口へと運び込んではおいしいなぁ、おいしいなぁと繰り返す。


 その様子を伺っていたら錦織にしきおりさんが「睦月くんは食べないの?」と聞いてきたので恐る恐る茶色く煌めくデミグラスソースの掛かったオムライスにスプーンを差し込んで口に運ぶ。


 するとどうだろう、今まで味わったことのないような味が、香りが鼻から胃まで通り抜けてくる。そして熟成デミグラスソースというだけあり、口からうま味が消えない。噛めば噛むほど味が染み出てきて、じわじわと溶ける。


「これ……うめぇなぁ……」   


 つい、言葉に出てしまった。それを聞いた錦織にしきおりさんが「良いなぁ、それわたしも食べてみたいかも」というのでオムライスを半分ずつ交換し、食べ比べをする。


「へぇ……中々このケチャップもいけるな……」などと独り言を述べつつ、二人してそれぞれのオムライスをほおばり、味わっていると錦織にしきおりさんがデミグラスソースを口につけたまま、


「あ、あのさ? いつも睦月くんはわたしのことを錦織にしきおりさんって呼ぶけどさ…? わたしが睦月くんのことを名前でこうやって呼んでるんだから……わたしも同じように名前で呼んで欲しいな………なんて」


 と言う様子はあまりにも初々しいというか、こっ恥ずかしいというか。あまりにも可愛げに告げたので俺は迷いもなくすぐさま頷いた。恐らくこんな風に物事を言われたら男ならば皆こうしたことだろう。


「分かったよ…錦織にしきおりさん、じゃなくて……水篶みすず


 いざ改めて言ってみると恥ずかしいのだが水篶みすずは嬉しそうに「………ありがと」と言ってきた。この調子ではまずい。完全に水篶みすずのペースに飲み込まれている。このままではノックアウトでK.Oになるのも時間の問題だ。


 だがその時間の終わりも意外に早かった。水篶みすずと俺の注文したオムライスの皿は気が付けば空になっていたのだ。これは助かったなと話題を次行くところをどうするかというものに変える。だがその行きたい場所は既に心に決めていた。


「俺、ここの目玉として出来たアトラクション、脱出ゲームのやつに挑戦してみたい」とそう告げた。その発言に水篶みすずはどこか察していたかの様な口ぶりで「良いよ……? でも終わったら観覧車に行こうね?」

と言う。俺は特に断る理由もないので黙って頷き、レストランを後にした。


 俺はリアル型脱出ゲーム「脱出不可能」をクリアしてやると心に決めた。

必ず俺が最初の脱出成功者になってやると。

 

 その後で水篶と二人で観覧車に乗れる様に神に祈った。

そうすれば俺も水篶も満足がいくと思ったからな。

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