月の名を抹消する者篇part10 “予兆„
部活が終わり土曜、日曜と休みを挟んだ秋葉の転校当日。
担任が秋葉を連れて教室に入ってきた。
秋葉は赤雪高校の全体的に黒く赤いラインの入った
特徴的な制服を着こなしていた。
赤みの入っている髪の毛と合っていてよく似合っている。
周りを見渡すと男子諸君は目が輝き、
女子の皆さんの一部はどうやら敵対するような厳しい視線を
送っている。そんな風に見られている本人は文月の席を確認
した後、俺の席の方を見る。そして目が合うが、
「転校生を紹介する。...というかこのクラス、転校生多すぎ」
先生、心の声が口に出てますよ......。そんなことはさておき、
秋葉が自己紹介を始める。
「え、えーと女子校から転校して来ました紅 秋葉と言います。
えーと、共学?は久し振りなのでちょっと緊張してますが、
実はそこに居る神代 睦月くんと幼なじみなので。ついでに
霜凪 文月も。緊張せずに生活出来ると思います。
これから宜しくお願い致します。」
な、なんか秋葉が少し余計な事を言ったせいで、
男子の皆さんがこちらを睨んできた。
そして恒例の質問コーナーが始まる。
「好きな事はなんですかー ?」
「えーと本を読んだり......色々.......」
「特技はー ?」
「家事全般です !!」
「か、彼氏とか居ますか ?」
「い、居ません」
おいおいもういいだろ。
確か、水篶の時もこんな感じだったよな。
それでも質問は続く。
「好きな人とかは居ますか ?」
「え !?それは、.........その」
『そのって何ですかァァァァァァァ !!!』
男子の全員が口を揃え、言った。
文月は俺の方を見て、駄目だこりゃと合図してくる。
「えーと、」
秋葉がこちらを見る。そして視線を元に戻す。
「居ません」
うつむき、もう一言。
「もう、いいですよね ?先生 ?」
そうして秋葉は空いている席に座った。
相変わらず男子の皆さんの厳しい視線は俺に向いていた。
まぁ、秋葉は幼なじみだし俺は気にしない。
そして昼休み。俺は珍しく食堂へ行くことにした。
秋葉はクラスの奴らに群がられてたのでそっとしといて
俺は文月と山吹さんの推理小説部のメンバーで行くことに。
水篶は先生に呼び出しされた様で居なかった。
そして食堂に到着。
「うーむ。久々に来たから何食おうか迷うな」
「おいおい、睦月」
「どうした」
「ちょっとあそこ、」
そう。飯が配膳される所にはいつもおばちゃんが居るのだが
今日は若く顔の整った長身の男が居たのだ。
「何だ、あの男」
俺が言葉を漏らすと山吹さんが言う。
「噂だといつものおばちゃんが病気でみたいな、らしい」
「そうか」
「うん」
「まぁ、睦月に令月っちゃん飯取りに行こうぜ」
「あぁ」
「うん」
文月はそう言い、飯を取りに長身の男の所へ。
「カツカレー3人分」
俺も文月も山吹さんもカツカレーにするとのこと。
「はいはい、カツカレーね。お茶はいるかい ?」
「はいお願いします」
長身の男は準備をしながら話しかけてくる。
「そういえば君、神代君かい」
「何で俺を ?」
「いやあ、おばちゃんから聞いたよ」
おかしい、俺はおばちゃんとはあまり話さない。
「そうですか」
「ハイよ、カツカレー」
カツカレーを受け取り、席に着いた俺達は部活の話を
しつつ、カツカレーを食した。
そして午後の授業も終了。
今日も転校生の秋葉が来た以外、至って普通の1日
だった。カツカレーを食した3人で部室に向かう途中、
俺の意識は闇へと落ち、現実からシャットアウトされた。
俺が倒れた時、うっすらと2人も倒れる事が確認出来た。
あの長身の男..........。まさかな。




