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脱出不可能  作者: 風雷寺悠真
第16章月夜見島騒乱篇
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“復讐者 Avenger„

 文月の言っていた場所まで辿りつくまで結構な時間を要した。もうこの月夜見島のあちこちが厳戒態勢で武装した研究開発局員とジャミングで停止した月壊が腐るほどいやがる。それはもう、迂回していくだけで島の端に行ってしまうくらいで。


「睦月、君……まだ着かない、の……? もうしんどいよ……」


 息を切らしながら山吹さんはそう告げる。その様子を見かねた俺も急ぎ足だった足を止めて振り返る。


「ったく、文月のヤローが指定した場所があまりにも警戒されてるもんでな。もう手配したそのバイク? 見つかっちまってんじゃねえかな……?」

「ううう……やだ、わたし、もう歩きたくない」

「……もう少しの辛抱だ、この地下道を進んだ先にある駐車場にあるはずだ」


 俺は山吹さんの肩をそっと叩き、歩く事を促して、歩く事数十分でようやく目的地である地下立体駐車場にたどり着くことができた。その駐車場は至る所に傷跡があり、朽ち果てていては電球も点滅している。それはまるで何か行われていたかのようだ……。そしてその光景とは裏腹にどこからか口笛の音色が聴こえてくる。その音色にどこか嫌な予感がした。


「……山吹さん、すまないがここで待っていてくれないか? とても嫌な予感がするんだ」


 俺のその余裕のない様子を見たのか、山吹さんは黙ってコクっと頷く。そして今度は山吹さんが俺の肩をそっと叩いてきた、それも無事に帰ってくるんだよ、良いね?と言いながら。


「すまない、この先の様子を……見てくるよ」


 そう言い、駐車場の最深部へと下ると奇怪な傷がコンクリートの地面や天井の鉄筋、あちらこちらに散見し口笛の音も近くなってくる。そして距離が近くなったからこそ、その口笛はどこか人間的じゃない、電子的な音であったことも分かってくる。そしてその嫌な予感はまさに的中した。

 

 駐車場の最深部、車も何も駐車していないフロアにあったのは真っ二つに切断された一つのバイクと、そのうえに座り込むどこか見覚えのある、白っぽい塗装のされた金属の人型兵器。


「なんで、こんなところに月壊壱式が……」


 俺の脳裏には大崩壊地区のダムでの記憶が脳裏によぎった。だがあの時の機体とは打って変わり、至る所がカスタムされており無駄がない。そしてこういった人型兵器の弱点にも成り得る関節部は全て俺の力も通じない強固な金属で覆われており、それはまさに対月の名の持ち主用……いや対神代睦月用といっても過言ではない代物だった。


「やぁ、また会えたね……睦月くんよ」

 

 その声、その声こそ……つい先ほどまで相手していたはずの人物の声。だがその声はもう機械的な声と変質している。


「……お前ェッ!」


 俺はその機体を睨み付ける。まただ、また怒りがこみ上げてくる。そして気づけば俺の手には紅き刀が。


「何故まだお前が居るんだ……ッ、九十九宵月……っ!」


 俺の前に居るそれは月壊壱式に己の意識をインストールさせた、九十九宵月本人だった。生身の時の武装である銃とは違い、その機械的な手には2メートルばかりの二本の長剣が握られている。


「言ってあっただろう……ただでは、死なんと。さぁ、第二ラウンドといこうか睦月くんよ」

「クソ……ッ」


 無意識に俺はそいつと距離を取り、身を構えた。

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