“再会祝い reunion celebration„
「何故お前が…?」
「チッ、…ガキが」
俺と五十嵐がモニターに現れたその人物に向けて呟く。
「どうやらその様子だと神代睦月くんは僕がここに存在していることに驚いていて、五十嵐喰月くんは僕のその存在自体が気に食わない様だねェ…? ハハハッ」
モニター越しからでも高らかな笑い声が聞こえる。まるで俺達を見下している様だ。
「貴様にくん付けされるほど私も落ちぶれていないぞ? いい加減その気色悪い笑い声を静めてくれないか? …耳に障るんだよ、諫早皆月」
そう、俺達の前にモニター越しで現れたのは俺が無人島で撃破した筈の諫早皆月本人だった。
「何故お前が生きているんだ…? お前は俺が…」
「倒した、だろう? ハハハッ、君は僕を誰だと思っているんだい?」
「うるさいと言っているだろう? …いい加減黙れ」
五十嵐はそう言うとどこから取り出したのか分からない凶器でモニターを粉々に粉砕する。
「ホラホラァ、そんな風に怒ったところで状況は覆せないよ? 五十嵐くん。この施設のカメラは僕の目の様に君たちを今見ている、そうしてモニターに八つ当たりしても無意味だよ?」
「さて、と再会祝いといこうか。君たちにはここからタダでは出させてあげないよ? ちょっとした試練がなきゃつまらないし、あっさり月天の塔に辿りつかれても困るのでね」
諫早皆月が生きていた、この事実は俺の心に鋭く突き刺さる。そして殺してはいなかったという安堵感と厄介な人物が存続し、これからの脅威になるという不安感が俺の中で交錯していた。
「さぁ、新たな力を手に入れたのはそこに居る神代睦月くんだけじゃないっていうこと、見せつけてあげな? …能登鎌月ちゃんと朽野望月くん」
皆月がそう告げると突如名を告げられた二人が俺達の前に立ちはだかる。その能登鎌月と朽野望月という人物らは大崩壊地区での時に仲間であったはずの人物らだ。なぜ彼らが…皆月が従えているのだ? 疑問しか俺の中に浮かばなかった。
「「………」」
彼らは無言で一歩ずつこちらに歩み寄ってきている。その彼らの眼には光は無く、真っ暗に染め上げられている。
「フン、これは神代睦月君何が彼らに起こったか私から言わなくても分かるね?」
「あぁ、全部皆月がやったんだろう? …俺の仲間は捕らえられていると聞いた時から覚悟はしてたさ」
「なら良い。ではこれからどうするんだ?」
彼らをただ倒してここを切り抜けるわけにはいかない。敵対されようが仲間は仲間だ。
「能登鎌月と朽野望月…仲間を…助ける」
「そう言わなくては神代睦月君ではないな。仕方がない、今回限り協力してやろう」
五十嵐はそう言うとすぐに体勢を整え、地面を蹴る。
「私があの大鎌女をどうにかするから、あとはやれ…ッ」
五十嵐がそう告げる。大鎌女とは能登鎌月の事だ。つまりは俺は斬月と同じ道場出身の朽野望月と戦わなければならないという事になる。これは一筋縄ではいかないと腹をくくる。
「………」
朽野望月は終始無言で歩み寄っていたが途中、腰に携えていた刀に手をかけ居合の構えを作る。
「なるほどな、…同じ道場とはいえ斬月と違う訳か」
俺も熱くなる気持ちを沈ませ、冷静に分析を行い義手の拳を天に仰ぐ。
「いつも済まない斬月……。お前の力を俺に貸してくれ…ッ」
そして俺も斬月の力をそのままに具現化した刀を錬成する。その刀は周辺の全ての月の石の中にある核を凝縮させた刀であり、その刀は月の石の白いものとは異なる真紅の長刀。
「さぁ、手合わせ願おうか」
そうして俺も刀に力を込め、対峙する。